シナリオクエスト

呪われた傷跡

(潜水艇で到着した水中都市アトランティス。地上とは違った不思議な雰囲気が感じられる。)
【プレイヤー】
ここがアトランティス…アナスタシア市長がここの近くにいるという話だったが…。
???
そこのあなた。初めて見る顔ですね。
(建物の前にいた黒いコート姿の女性が近づいてくる。)
【プレイヤー】
私はカティア・スーさんの紹介でアトランティスに来た冒険者【プレイヤー】です。
???
カティアの…
アナスタシア
よく訪ねて来ました。
私がアトランティスの市長、アナスタシアです。
アナスタシア
…………
アナスタシア
それで、あなたの望むものは何ですか?
【プレイヤー】
…………
【プレイヤー】
(あまりよく思われていないようだ。)
【プレイヤー】
はい…私はイリスを…
【プレイヤー】
(アナスタシアにラジャータ国王の依頼について、そしてイリスを探していることを話す。)
アナスタシア
イリス・リヴィエールか…。
アナスタシア
デル族最後の末裔…彼女は魔王を倒すべく旅立ち、現在は行方不明となっています。
【プレイヤー】
イリスをご存じなのですか?
アナスタシア
もちろん、知っています。
直接会って話をしたこともあります。
アナスタシア
あなたはイリスについてあまりご存じないようですね。
アナスタシア
…………
アナスタシア
まだ理解できないこともありますが、いいでしょう。
【プレイヤー】
(今…何か妙な間があった気がするが…。)
アナスタシア
イリスの旅は長らく平和が続いた世界に、多くの変化をもたらしました。
アナスタシア
言葉に表すことは難しいですが、確かなことは多くの人々が混沌を感じていることでしょう。
アナスタシア
……………
【プレイヤー】
おっしゃっていることが理解できません。
アナスタシア
少し…あなたの手助けをしてあげましょう。
どこにいるかはわかりませんが、イリスがどこに行ったのかはわかっています。
アナスタシア
少し古い情報ですが、よろしいでしょうか?
【プレイヤー】
はい、お願いします。
アナスタシア
イリスは私の故郷ミッドガルドに向かいました。
確か、軌道エレベーター[ビフレスト]を利用してアスガルドに行くと言っていました。
【プレイヤー】
ミッドガルド…
アナスタシア
ミッドガルドに行くことは非常に困難です。
そこでこの地図を利用すると良いでしょう。
【プレイヤー】
地図をいただけるのですが?
アナスタシア
はい。ですが、そのために私の依頼をひとつ引き受けていただきたいのです。
【プレイヤー】
依頼ですか…。
【プレイヤー】
私は何をすればよいのですか?
アナスタシア
アトランティスの先にキメラ研究所という場所があります。
過去のアトランティスの罪を象徴する場所です…。
アナスタシア
…………
アナスタシア
その中心部にある遺物をひとつ持ってきてほしいのです。
【プレイヤー】
遺物とはどのようなものでしょうか?
アナスタシア
…それは行けばわかることでしょう。
【プレイヤー】
わかりました。
アナスタシア
…………
【プレイヤー】
(まだ何か隠しているようだけど…とりあえず行ってみよう。)

(異常な雰囲気に周囲を警戒すると、誰かがモンスターに取り囲まれているのを見つけた。)
???
ちょっと、そこのあなた。
そこにいるのはわかってるんだ。早く助けなさいよ!
(謎の女が手を振って助けを求めている。助けてほしいという割には随分と横柄な態度だ。)
【プレイヤー】
(…大丈夫かな?)
???
何してるの?早く手伝ってよ!
【プレイヤー】
ちょっと待ってください。
(モンスターを倒して助けようとした瞬間、女の目つきが変わった。持っていた石弓から大きな矢が放たれる。)
【プレイヤー】
すごい…。
石弓を持った女性
しっかりしてよね…助けに来たのに、そうやってじっとしているつもり?
【プレイヤー】
あ…すいません。
(しばらくすると、周囲のモンスターはすべて倒れていた。)
石弓を持った女性
ふう、やれやれ…おかげで助かったよ。
(石弓を持った女が明るく笑いながら握手を求めてくる。)
【プレイヤー】
いえ、ところでどうしてこんなところに?
石弓を持った女性
あなた、アトランティスに雇われた冒険者でしょ?
【プレイヤー】
はい、依頼を受けて来ました。
石弓を持った女性
私も似たようなものよ。
このキメラ研究所の状況を調べてほしいと頼まれたんだ。
石弓を持った女性
でも、こんな危険な場所だとは思わなかったよ。
石弓を持った女性
アナスタシア市長は何も言ってなかったんだ。
はぁ…この私も安く見られたもんだね。
(石弓を持った女はぶつぶつと不満を言った。)
【プレイヤー】
…………
石弓を持った女性
ああ、ごめんね。私ばかりしゃべってたよね。
よく見るとあなたもなかなかの実力者のようだね。どう?私と一緒に行かない?
石弓を持った女性
足を引っ張ったりはしないからさ。
こう見えても結構役に立つんだから。ね?
【プレイヤー】
確かに…思ったよりも敵が多いようですね。
石弓を持った女性
遠慮はいらないよ。ね?一緒に行きましょう。
【プレイヤー】
はい、わかりました。
目的は同じようですので、一緒に行きましょう。
石弓を持った女性
オッケー!それじゃよろしくね。
石弓を持った女性
…………

(研究所の中心部に向かう間、石弓を持った女は絶え間なく喋っている。)
【プレイヤー】
えっと…それで…
石弓を持った女性
ああ、ごめんごめん。ちょっと喋り過ぎちゃったようね。
石弓を持った女性
とにかく…ここは古代アトランティスの科学技術の粋が集まった場所なの。
石弓を持った女性
ジメジメして変な匂いがして、変なものがいっぱいだけどね。
石弓を持った女性
もっと貴重なものがあると思っていたんだけど、期待して損しちゃったな…。
【プレイヤー】
ここでいったい何があったのでしょうか?
石弓を持った女性
…そうね。何があったんだろうね。
石弓を持った女性
…アオイチの桜が懐かしいな。
湖畔の前に座って、風と花を感じている時間がとても心地よかったわ。
【プレイヤー】
桜木の湖ですね。
石弓を持った女性
そう!私そこに住んでいたんだ。
楽しかったなぁ…そういえばあの子は元気かな…。
(石弓を持った女がそう言って微笑む。大切な人を思い浮かべた時のような笑顔だ。)
【プレイヤー】
きっと元気ですよ。
石弓を持った女性
そうよね。ひとりで騒いじゃってごめんね。
じゃ、もう少し進んでみようか。
【プレイヤー】
はい、わかりました。
石弓を持った女性
(…これ以上遅くなったら困るものね。)

(それきり、石弓を持った女は長い沈黙を守った。そのうち、何か話があるかのように手を上げた。)
石弓を持った女性
あなたはとても落ち着いているのね。何か話をしてもいいかな?
沈黙って苦手なんだよね…あなたもこのままじゃつまらないでしょ?
【プレイヤー】
では調査する場所についての情報を教えてください。
石弓を持った女性
ふふ…いいわよ。ここはね、本当に不快極まりない場所なの。
アトランティスの原罪に満ちていると言ってもいいわ。
【プレイヤー】
原罪…ですか?
石弓を持った女性
科学に取り憑かれたアトランティスの人々は、手を出してはいけないものに手を出してしまった。
ここに住む巨人族に残酷な仕打ちをしたの。
【プレイヤー】
石弓を持った女性
ここに未だ残り続ける巨人族は、今のような姿ではなかったの。
体は大きくても、他は人間と変わらない…そんな存在だった。
石弓を持った女性
深い山奥や荒野で、同族と共に静かに暮らしていただけなのに…アトランティスの人々が彼らを捕らえ…
(石弓を持った女が手振りで何かを見せようとしたがやめる。)
石弓を持った女性
無惨にも今の姿を作ってしまったの。
石弓を持った女性
そして、その実験を基にして、自分たちの力としようとした。
本当に…あの人たちは神にでもなろうとしたのかしらね。
【プレイヤー】
そんなことが本当にあったんですか?
石弓を持った女性
信じられないでしょ?
私だってそうだった…とにかく!その代償は破滅だったの。
石弓を持った女性
天上都市に住むアス神族のようになりたいと願った彼らを、アス神族が断罪したの。
石弓を持った女性
自分たちがここでやっていたことが、こんな無残なことになるとは思わなかったんでしょうね。
石弓を持った女性
人間の欲というものは、所詮回りまわって自分に戻ってくるものなのよ。
石弓を持った女性
神の審判によって都市は海に沈んだわ。
あなたの目にもアトランティスは美しく見えたでしょう?
石弓を持った女性
でも、その実情は…
【プレイヤー】
…………
石弓を持った女性
ああ…ごめん。そんな過去の罪を忘れないという意味でこの研究所をそのまま保存しているみたい。
石弓を持った女性
でも…本当に罪を悔いているなら、ここに巨人たちを放置していいわけがないわ。
石弓を持った女性
偽善者…もしかしたら私も同じなのかもしれないけどね。
石弓を持った女性
…………
石弓を持った女性
あはは…ちょっと話過ぎたかな。
【プレイヤー】
…………
石弓を持った女性
あんまり深刻に考えなくてもいいわ。
さて、もう少しだから出発しましょうか。
(石弓を持った女が先に前に出る。すれ違った顔には悲しい表情が浮かんでいた。先ほどまで楽しく話していた姿とは対照的だ。)
【プレイヤー】
(もっと聞いておきたかった気もするが…まずはここの依頼を先に解決しよう。)
【プレイヤー】
待ってください、私も行きます!

(その空間に入るや否や、石弓を持った女の足が止まった。)
【プレイヤー】
ここが…
石弓を持った女性
そう。ここが研究所の中心部よ。
他の場所とは異質の空気を感じるでしょ?
【プレイヤー】
機械の種類も多いようですね。
石弓を持った女性
ここで探すものがあるんだったわよね?
じゃあその間、私も自分の依頼を片付けてくるわ。
【プレイヤー】
はい、わかりました。
石弓を持った女性
ふふ…
(石弓を持った女は鼻歌を歌いながら中を探っている。そして奥にあった機械を触り始める。)
【プレイヤー】
探してみよう…
【プレイヤー】
ん?これは…
【プレイヤー】
(目の前に怪しい箱が並んでいる。)
【プレイヤー】
もしかしてこれかな?キ…メラ…素体箱?
【プレイヤー】
これだと思うんだけど、箱が空けられている。
石弓を持った女性
探し物は見つかったの?
【プレイヤー】
はい…ですが中身がなくて…
石弓を持った女性
もしかしてこれのこと?
(石弓を持った女が懐から何かを取り出して【プレイヤー】に見せる。)
【プレイヤー】
それは…この箱の中にあったものですか?
私に渡してもらってもいいでしょうか?
石弓を持った女性
…嫌だと言ったら?
【プレイヤー】
え?
石弓を持った女性
これが何かわかる?
人間の姿に似た人形を創り出すキメラ素体よ。
石弓を持った女性
アトランティスはなぜこんなものを創ったのか…なんであんなところにしまっておいたのかしら。
まだ神になりたいという欲を捨てることができないのかな。
石弓を持った女性
堕落した人間が創った存在がどれほど悲しい結末を迎えるのか…その証拠がここにある。
石弓を持った女性
過去の過ちを悔いているということか…あなたにこれを捜せと依頼したのだから…
【プレイヤー】
あなたはいったい…
(石弓を持った女の雰囲気が変わる。妙な違和感をも感じる。)
石弓を持った女性
…いいわ、あげる。
さぁ、受け取って。
(石弓を持った女が【プレイヤー】に持っていた素体を投げる。)
【プレイヤー】
これ… 壊れてるじゃないですか。
石弓を持った女性
ごめんね…これは私が使わせてもらったわ。
アナスタシア…あの女にそう伝えなさい。
石弓を持った女性
ジョアン・ファームがキメラソケットを使ったと。
アナスタシアがこれを知ったら、どんな表情を見せるかしら。ふふ…。
【プレイヤー】
ジョアン…ファーム?
【プレイヤー】
……
【プレイヤー】
(精神を圧迫してくるようなこの恐怖感は…)
ジョアン・ファーム
そう…私がジョアン・ファームよ。
ジョアン・ファーム
…………
ジョアン・ファーム
あなたの頑張っている姿を見るとちょっとからかってあげたくなっちゃってね。
ジョアン・ファーム
すぐに終わらせてあげるわ。
ここで私に会ったのが運の尽きよ。

ジョアン・ファーム
へぇ…なかなかやるじゃない。
ジョアン・ファーム
遊び相手としては申し分ないけど、どうやってこれほどの力を…
【プレイヤー】
なんで戦わなければならないのですか?
ジョアン・ファーム
まだわからないの?
じゃあ教えてあげるわ…ん?
(ジョアン・ファームが攻撃を止め、遠くを見つめる。誰かの気配を感じたようだ。)
ジョアン・ファーム
ちっ…招かれざる客だ。
【プレイヤー】
……?
アナスタシア
ここでいったい何が…あ!あなたは…ジョアン・ファーム?!
ジョアン・ファーム
相変わらず妙な勘が働く女だ。
アナスタシア
あなたはここで何をしているの?!
(アナスタシアが剣を持ち、ジョアン・ファームに襲いかかる。)
【プレイヤー】
……!?
【プレイヤー】
(アナスタシアさんはどこから剣を出した?ジョアン・ファームもあの奇襲を難なく避けるとは…。)
ジョアン・ファーム
この剣を見るのは初めてだけど、私にはきかないわ。
知ってるでしょ?アナスタシア。
アナスタシア
答えなさい!あなたはここで何をしていたのですか?!
ジョアン・ファーム
あなたが見たそのままよ。
アトランティスの醜く腐った過去の行いに興味があっただけよ。
ジョアン・ファーム
…。
ジョアン・ファーム
いい加減うっとうしいわね。
今日のところは退かせてもらうわ。
【プレイヤー】
ジョアン・ファーム…
ジョアン・ファーム
よく聞きなさい。どこから来たのか知らない冒険者さん。
私の攻撃に耐えたのは褒めてあげる。
でも、あなたが相手にしようとしている相手を甘く見ないことね。
ジョアン・ファーム
そして…イリスを探すのなんてやめておきなさい。
あなたには絶対探せないんだから。
【プレイヤー】
私がどうしてイリスを探せないと…
ジョアン・ファーム
…………
(ジョアン・ファームの表情が少し歪んだように見えたが、すぐに元の表情に戻った。)
ジョアン・ファーム
…好きになさい。
ジョアン・ファーム
じゃあ、私は行くわね。
(突然、周囲が闇に包まれた。ジョアン・ファームが飲み込まれるように闇に消える。)
アナスタシア
行ったようだな…
【プレイヤー】
…………
アナスタシア
相変わらず油断ならない女ですね。
あなたは大丈夫でしたか?
【プレイヤー】
私は大丈夫です。
アナスタシア
…そうですか。すみませんが、ここで起きたことを説明していただけますか?
【プレイヤー】
(アナスタシアにあったことを簡単に説明する。)
アナスタシア
……!?
(アナスタシアが何か気づいたようにそこにあった装置を触り始める。)
アナスタシア
これは…
アナスタシア
…………
【プレイヤー】
どうしましたか?
アナスタシア
ジョアン・ファームが狙ったのは[ホムンクルスプロジェクト]についての情報です。
【プレイヤー】
[ホムンクルスプロジェクト]?
アナスタシア
それは…いえ、ご説明しましょう。
あなたも知っておくべきです。
アナスタシア
[ホムンクルスプロジェクト]とは…あなたに回収を依頼していたキメラ素体を利用した疑似人間を創り出すプロジェクトの名称です。
【プレイヤー】
それをどうして手に入れて来いとおっしゃったのですか?
アナスタシア
適切に保管しておきたかったからです。
過去の過ちを忘れないように…しかし、ジョアン・ファームはそれを利用しようとしたようです。
アナスタシア
まさかそんなことをするとは…
アナスタシア
この状態を見るに、すでにずいぶん前に奪われてしまっていたようですね。
アナスタシア
…今ここでできることはありませんね。とりあえずアトランティスに帰りましょう。
【プレイヤー】
はい…。
【プレイヤー】
(とりあえずアトランティスに戻ろう。ジョアン・ファームのあの言葉が気になるが…。)