シナリオクエスト

近づく運命の流れ

(文句を言うシンモラの幻影の機嫌を合わせながら着いた扉の前に立った瞬間、閉じていた扉が開く。開いた扉の間に熱い熱気が流れ込んで彼らを掴んで中に引っ張る。)
【プレイヤー】
うっ、熱い。
シンモラシャドウ
甘えないでよ…黒い龍の鱗があるから耐えられるわよ。
(熱い熱気が消えて前を向くと、どこかへ向かう道が終わりなく広がっている。その下に熱い溶岩がどこかに流れている姿も見える。)
【プレイヤー】
溶岩が川のように流れてる…
シンモラシャドウ
あたし達は見えるそのまま炎の川って呼んでるよ。この川はあたし達の世界を成す力だけど、他の世界にとっては死の脅しそのもの。
シンモラシャドウ
だからあたし達はこの川を管理するためにトンネルを作って覆った。そして川を覚まして完全な水に浄化した後、外に排出している。
【プレイヤー】
そうしている理由はあるの?
シンモラシャドウ
ムスペルヘイムに流れる溶岩は世界樹がある土に流れるようになっている。だから普通の川になって流れれば何の問題もないのよ。
【プレイヤー】
川の熱気を冷ませるのなら、止めることはできないの?そしたらこれがヴィーグリーズに流れることもないじゃん。
シンモラシャドウ
…あんた今なんて言った?川を止めたいって?
シンモラシャドウ
あ、スルト…スルト!だめよ!
(シンモラの幻影が慌ててあちこち歩き回る。)
【プレイヤー】
どうしたの?
(その時遠くから大きな剣を引きずって近づく女性の姿が【プレイヤー】の視野に入って来る。)
【プレイヤー】
あの人がスルト?
シンモラシャドウ
やめて、スルト!
(シンモラの幻影が止めようとして前に出るも、燃える剣の先から爆発した炎は既に冒険者に向かって飛んでしまった後だった。)
ドドドドドン!
(攻撃を避けられなかった冒険者がそのまま壁まで飛ばされてしまう。)
ドン。
【プレイヤー】
う、うう…
【プレイヤー】
(冒険者の首に寒気と熱気が混ざった鋭い剣の先が当たる。)
スルト
頭をあげろ。異界の旅人よ。
【プレイヤー】
あなたは…ニイ?
(赤黒い色の短い衣装から頭に付いた赤黒い角まで、燃え上がる炎そのものに見える女性が真顔で立っている。)
スルト
私はムスペルヘイムの主、スルトだ。君の名を話せ。
【プレイヤー】
【プレイヤー】…
スルト
(スルトが【プレイヤー】の名前を聞いて目を閉じる。)
シンモラシャドウ
スルト、剣をさげて。この人が炎の川を止めるって言ったのは何もわからないからなのよ。
スルト
シンモラ、静かに。
(スルトがシンモラの幻影を黙らせる。)
スルト
【プレイヤー】、嘘で名前を言っているわけではないな?
シンモラシャドウ
(スルト?)
【プレイヤー】
私の名前で間違いありません。
スルト
そうか、【プレイヤー】。もう一度、ムスペルヘイムの主として聞こう。この下に流れている炎の川が止まるのが何を意味しているのか本当にわかってないのか?
【プレイヤー】
本当にわからないので教えてほしいです。どうしてあなたがそう反応しているのか…
スルト
嘘ではないな。
スルト
スルト
教えてやろう。炎の川を止めるということはこの世界の主である私を殺すということ…
(【プレイヤー】の首からスルト剣が離れたと思った瞬間、他の手から大きな炎が浮き上がって踊り始める。)
スルト
だとして無知が許されるわけではない、【プレイヤー】…
【プレイヤー】
…!
(スルトの手から踊っていた炎がそのまま【プレイヤー】の胸に入り込む。)
【プレイヤー】
う、あ、熱い!うああああ!
シンモラシャドウ
スルト…や、やめて。だ、だめだよ…
スルト
シンモラ、私は私にできることをするだけだ。ムスペルヘイムの未来のために…
【プレイヤー】
ス、スルト…わ、私に何をしたんですか?
(スルトが倒れないようにやっと耐えている冒険者の姿を見つめる。)
スルト
黒い龍の鱗があったおかげで灰にはなってないな。よく耐えている。
スルト
【プレイヤー】…
スルト
君には時間がない。時が来ると君の中に入り込んだ炎が花火のように爆発するのだろう。
【プレイヤー】
どうして私にこんなことを。
(スルトが答えの代わりに背を向けるとシンモラの幻影が困った顔で後ろを付いて行く。)
シンモラシャドウ
スルト
このトンネルの先にムスペルヘイムの市街地に繋がる通路がある。その前で待っていよう。
スルト
来る際には、君を敵とみなす他の存在から、シンモラが作った全ての幻影まで相手しなければならない。
スルト
そして私にたどり着いた時…君の意思で、私を倒せ。
(スルトが自分の話を最後に下に流れていた炎の川に飛び込んで行方を消す。)
【プレイヤー】
消えた…
【プレイヤー】
【プレイヤー】
ふぅ、覚悟したことではあったけど、こうなるとは…
【プレイヤー】
(なんか変な気分だ…寒気と熱気が一緒に入った気がするけど…)
【プレイヤー】
余計なことは考えずに行ってみよう…まずは話すしかない。

(終わりが見えないムスペルトンネルで暴れる存在を、冒険者がひたすら倒して進む。)
【プレイヤー】
シンモラの幻影はともかく、残りはムスペルヘイムにいる存在じゃない気がするな。
(それに一歩一歩踏み出す度にムスペルトンネルの熱気が少しずつ強くなるのを感じる。)
【プレイヤー】
(どんどん熱くなってる気がするな…)
【プレイヤー】
シンモラの話通りだと川の熱気を抑えるべきなんだけど…
(周りを見渡しながら前に進んでいた【プレイヤー】の前にトンネルの終わりのような大きな扉が見える。)
(近づくと扉が開いてその中からスルトの姿が現れる。スルトが【プレイヤー】と目が合った瞬間、剣を大きく振り回す。)
スルト
【プレイヤー】
スルト、話があります。
スルト
時間がない。先に私を倒せ。
【プレイヤー】
ムスペルトンネルがどんどん熱くなっているんですよ!
スルト
…!
(【プレイヤー】の言葉に次の攻撃を続けようとしていたスルトの動きが止まる。)
【プレイヤー】
トンネルの機能が止まったんですか?
スルト
……それは違う。
【プレイヤー】
違うなら一体なんですか?ムスペルヘイムを成している炎の川がスルト、あなたそのものだとしたら…
【プレイヤー】
あ…、まさか…
スルト
スルト
私の中にある炎がどんどん熱くなっている。
スルト
私が暗闇の中から目を覚まして目を開けた瞬間、使命を一つ付与された。
スルト
世界樹と繋がった世界の主は使命を果たさなければならない…
スルト
私は他の世界の主のように光と希望の使命を果たすことができない。
スルト
私の使命は…
スルト
私が愛するムスペルヘイムの炎で全ての世界を燃え尽くすこと。
【プレイヤー】
スルト
だからこの使命から目を背けようと…運命に従わないように足掻いてたのだが…
スルト
スルト
今日がその日のようだ。
【プレイヤー】
スルト、まってください…
(スルトが剣を下に振り回した瞬間、スルトの赤い瞳を始めとしてすべてが燃え始める。)
【プレイヤー】
(物凄い熱気だ。このままだと話はできない…)
スルト
異界から来た旅人よ。
スルト
運命を確認したいなら、まずムスペルヘイムの炎の下で足掻いてみろ…
(スルトの話が終わって、トンネルの下で暴れていた溶岩がわき上がって荒い波のように押しかかる。)

(強い波のような溶岩が吹き終わってから2人の動きも止まる。)
スルト
【プレイヤー】
はあ、はあ…
【プレイヤー】
(今回はし、しっかり止めないと…)
(もう一度2人の攻撃がぶつかり合い大きな爆発を起こす。その衝撃で冒険者が遠くに飛ばされて地面に落ちる。)
――ドン!
【プレイヤー】
はあ、はあ…
スルト
【プレイヤー】、君が君の世界のために動いているように私も私の世界のために…
(スルトがゆっくり【プレイヤー】に近づこうとした瞬間、ムスペルトンネルが揺れ始める。)
【プレイヤー】
め、目眩がする…
(ひどい目眩を起こして、何も見えない状況。何かを掴もうとするも何もないようだ。)
【プレイヤー】
頭がくらくらする…つ、冷たくて…熱い…うう、うう…
【プレイヤー】
どぶん…
……………
【プレイヤー】
(…あ、もう大丈夫だ…目眩もしない…)
【プレイヤー】
(寒いのも、熱いのも消えた…暖かい…)
???
【プレイヤー】、しっかりして。起きて、起きてよ!
【プレイヤー】
(シンモラ?これはシンモラの声…)
シンモラの声
いつまでスルトの膝枕で寝てるつもりなのよ!
【プレイヤー】
(…?)
【プレイヤー】
(……?)
【プレイヤー】
…!!!
 
(【プレイヤー】の周りを遮っていた暗闇が散らかって少しずつ素朴なトンネルの姿が視野に入る。そして下に流れる炎の川まで…)
 
(そして自分を見ているスルトとシンモラの幻影と目が合う。)
スルト
気が付いたようだな。
【プレイヤー】
スルト?う、うああああ。ご、ごめんなさい。
 
(冒険者が驚いて後ずさりすると、スルトが平然と服に付いた溶岩を払って立ち上がる。)
スルト
謝ることはない。
【プレイヤー】
いいえ、ご、ごめんなさい。ところでスルト…今私達がいる場所って…
スルト
炎の川が流れる道のど真ん中だ。
【プレイヤー】
スルト
数時間前、新しい世界がヴィーグリーズと繋がろうとしてたのが遮られて、ムスペルヘイムまで大きく揺れた。
スルト
それで疲れて君が気を失って倒れて炎の川が流れる道に落ちた。
シンモラの幻影
スルトがびっくりして炎の川に落ちたあんたを救い出したのよ。
スルト
黒い龍の鱗があったとしてもこの熱気に耐えられる生命はいない。普通は溶けて流れてしまうはずが…君は…
スルト
そこに落ちたのにも関わらず、こうして生きている。
 
(冒険者が周りを見渡す。炎の川の浅い場所にスルトと一緒に立っている。)
【プレイヤー】
も、もしかしてスルトが私の胸に入れた炎、それのおかげですか?
スルト
その炎は君が私を倒したら自然と消えるものだった。そしてシンモラが私の代わりにムスペルヘイムの主に…
シンモラの幻影
スルト、そんなこと言わないで!それはあたしが望んでることじゃないでしょ?
スルト
すまない、シンモラ…
シンモラの幻影
もういいわ。とにかく、そうはならなかった…
スルト
私達に幸運が訪れた…
 
(スルトが座り込んで炎の川に静かに手を入れる。)
スルト
異界の旅人が炎の川に落ちた瞬間、川の熱気が下がった。私の中にあった熱気も消えている…
スルト
このままなら浄化された水を他の世界にも送れるだろう。
シンモラの幻影
本当に?
スルト
うん。
【プレイヤー】
どういうことですか?川の熱気が下がるなんて…
スルト
時間と空間を超えて、君にたくさんの祝福が降り注いだ。
スルト
世界樹の守護者、飽食する黒い龍の鱗、死のオーラを押し出す紫の霧、花を咲かせる土のオーラ、幸せを夢見る少女の意志まで…
スルト
【プレイヤー】、君は何者だ?どうしてここまで愛されているんだ?
【プレイヤー】
私は普通の冒険者です。他の何者でもありません。やるべきことをやっていたらそうなっただけです。
スルト
……そうか、わかった。
 
(ぼうっと炎の川が流れているのを見ていたスルトが立ち上がって手を伸ばす。そうすると、周りをぐるぐる回っていたシンモラの幻影が近づいて座る。)
シンモラの幻影
スルト、もう終わったよね?
スルト
一旦はな。私の運命の流れも止まってきている。そして【プレイヤー】…
スルト
君が炎の川に落ちる時、頭の中にとある記憶が流れてきた…
スルト
【プレイヤー】
教えてください、スルト。
スルト
君が来た世界の名前はエトワールなのか?
【プレイヤー】
はい…
スルト
その星の主の思いとは異なり、そこは他の世界を呼んでいる…
【プレイヤー】
【プレイヤー】
(きっと良くない内容の記憶なのに、なんだか安心してしまう…それはイリスのせいじゃないことを知っているからだろうか…)
スルト
…悪い。一瞬の記憶だから読み間違えていることもある…
【プレイヤー】
いいえ。
スルト
それと、戻ったらオーディンにこれを渡してくれ。
 
(スルトがポケットから何かを出して【プレイヤー】に渡す。真顔なスルトの顔が適当に描かれている小さなバッジだ。)
【プレイヤー】
【プレイヤー】
ありがとうございます、スルト。ではまた会いましょう。
スルト
もう会わないことを祈るよ。その時には良くないことが起きた時だろうからな。
スルト
シンモラの幻影
【プレイヤー】、気を付けてね。あっちが出口よ。
【プレイヤー】
あ、あっちね。ありがとう。
 
(シンモラの幻影が離れる【プレイヤー】の後ろ姿に手を振って、その姿をスルトがじっと見つめる。)
シンモラの幻影
スルト、もう戻って休もうよ。今まで1日も休めてないじゃん…
スルト
そうだな…
スルト
シンモラの幻影
どうしたの?スルト?気分が悪い?
スルト
いや、不思議な気分だ…
スルト
シンモラも知ってるだろう。きっとイミルの世界ははるか昔…