シナリオクエスト

熱気に耐える方法

(ヴィーグリーズを訪ねた外部の存在を相手して少し休んでいたエリの足元がいきなり揺れ始める。)
エリ
この揺れは…
オーディン
油断するな、エリ。
(オーディンが現れてエリの後ろを攻撃しようとするゾンビの首を掴む。)
オーディン
この者達はニブルヘイムからこちらを偵察するために出て来たゾンビだ。ガングラティだったかな。
オーディン
彼らはヴィーグリーズに出て来た瞬間、理性を失った。そして外部の力によって精神さえも浸食された…
オーディン
もう死から命を渇望して、生命力を吸収しようとする怪物にすぎない…
(オーディンの手から流れて来た青い炎が掴んだゾンビの体を包む。そして、炎はそのままゾンビの体をさかのぼって灰を作り出す。)
オーディン
ヘルには悪いけど、こうするしかない…
エリ
オーディン、ありがとうございます。ところで、中に入ったわけではありませんか?
オーディン
他の世界だからかもしれないが俺の思う通りできるものはなかった。それでもイリスの冒険者がヘルを説得して解決したようだ。
オーディン
今の揺れがニブルヘイムとこちらを繋げていた通路が消えているという証拠だ。
オーディン
ヘルが気持ちを変えてくれたのか…
エリ
そうなんですね、オーディン。では残りは一つ。
オーディン
ちょうどあそこにいるな。
(ニブルヘイムステーションの入り口があった場所から冒険者が出て来てオーディンとエリに近づく。)
【プレイヤー】
エリ、オーディン。ただいま。
エリ
大丈夫、【プレイヤー】?
【プレイヤー】
はい、なんともありません。
(安心するエリの隣にいたオーディンが近づいて【プレイヤー】の状態を確認する。)
オーディン
ニブルヘイムのオーラが濃く残っている。持ってきたものがあるならば俺に見せてくれ。
【プレイヤー】
ヘルからオーディンに渡してほしいって言われたものがあります。これ…
(ヘルの証をオーディンに渡す。)
オーディン
俺に自分の生命力の一部を任せるなんて…
オーディン
【プレイヤー】
こちらの運命と共にするということですか?
(オーディンが答えの代わりに静かに頷く。)
オーディン
現在の状況ではそれが最善だから…
【プレイヤー】
そうなんですね。ところで、オーディン…この状況をみんなが求めている方向で終わらせるためにはどうしたらいいですか?
オーディン
破滅を望んでいる者がエトワールに触れないことだけ。
【プレイヤー】
オーディン
彼の意思を止められない今の状況で我々にできるのはより強くなることしかない。
【プレイヤー】
結局彼の意思を揺らすくらいにはならないといけないということですね…過酷だ。
【プレイヤー】
心配だけしていると終わりがありませんね。さあ、オーディン、次の場所へ行きましょう。ムスペルヘイムの扉へ…
オーディン
まて。
【プレイヤー】
はい?
オーディン
ムスペルヘイムへの扉から流れている溶岩は普通の溶岩ではない。
オーディン
今は少し漏れただけだが、塞いでいる障壁が壊れたら氾濫するのだろう。ヴィーグリーズに迫って来るほどの量だ…
オーディン
ラグナロクはスルトの炎がヴィーグリーズを燃やすことから始まる。
オーディン
スルトはムスペルヘイムと炎の主…生まれた時からすべてを燃やす運命を抱いたまま生きてきた存在。
オーディン
スルトも自分の炎が他の領域を燃やすことは望んでいないゆえに悩んでいるのだろう。だが、ここからはあの中に入る方法がない。
【プレイヤー】
ふむ…
???
方法はあるよ。
(悩んでいたオーディンと【プレイヤー】の前にいきなり他の世界の存在が近づく。)
エリ
消滅したくなければそこで止まれ。
???
どうせこれは幻影よ。あなたが消滅させたとしても他の幻影があなた達に来るだけ。だからあたしの話を聞いて。
オーディン
エリ、すまない。やめてくれ。
エリ
わかりました。
オーディン
そこのお前、ムスペルヘイムの炎を感じる。もしかしてお前は…
シンモラの幻影
あたしはシンモラ、スルトの家族って言ったらわかるかな?
(シンモラの幻影が名前を明かしてオーディンとエリ、そして【プレイヤー】の周りをぐるぐる回る。)
シンモラの幻影
オーディン、あなたはムスペルヘイムには入れないわ。
オーディン
わかっている、シンモラ…
オーディン
溶岩がヴィーグリーズを覆う前にオオカミの影が偉大な壁を突き抜いて俺を飲み込んでしまうのだろう。
エリ
オーディン、それなんの話?
オーディン
空の花嫁が世界を浄化してすべての罪が消えるのだ…
【プレイヤー】
(その言葉、どこから聞いたことあるけど、どこだ?あ…)
オーディン
我々は求めていないが、世界樹と関連している世界の未来が啓示録[エッダ]に記録されている。世界の主と世界が燃えて消える惨い話だ。
【プレイヤー】
エッダ?
オーディン
どこかで似た名前の少女を知ったか?それは気にしなくていい。
シンモラの幻影
だからこの地の主神はむやみに動いちゃだめなのよ。代わりの人を送ってね。スルトの炎に耐えられる人で…
エリ
私が行く。
シンモラの幻影
オーディン、あの女はだめよ。普通の人間はムスペルヘイムに足を入れた瞬間灰になってしまうわ。
オーディン
エリ、君の気持ちはわかるが君にはできないものだ。
エリ
わかりました。残念ですが仕方ありませんね…
(シンモラの幻影が【プレイヤー】の前に近づいて目を合わせる。)
シンモラの幻影
あなたよね?ニブルヘイムの主と話を終えて戻ってきたのは。
さてさて。あなた、やっぱり普通の人間じゃないわね。
シンモラの幻影
捻じれて歪んだ時間の中で神の加護を受けた人間ね…
シンモラの幻影
シンモラの幻影
あたしがあなたをムスペルトンネルの中に押し込んでも、生きられるでしょうけど。それでも火傷は避けられないわ。
【プレイヤー】
やってみるよ。私はやるしかない…
シンモラの幻影
シンモラの幻影
あなた、思ったより甘いのね。これはそう簡単なものじゃないわ?皆を殺すつもりなの?
【プレイヤー】
ん…
オーディン
シンモラ、ムスペルヘイムに流れる炎に耐えられる方法さえ見つければいいのか?
シンモラの幻影
そうよ、オーディン。
オーディン
そうか、ふぅ…
オーディン
オーディン
エリはここでそれぞれの扉から外に出て浸食された者達を処理してくれ。
エリ
わかりました。
オーディン
シンモラ、【プレイヤー】。俺についてこい。

(オーディンがシンモラの幻影と冒険者を連れてニイがいるレーラズへ向かう。)
オーディン
ニイ、ただいま。
ニイ
あら、オーディン。
オーディン
ニイも知っている通りニブルヘイムとムスペルヘイムの扉が…
(ニイがオーディンの話は聞かずに両手を伸ばして彼の両手を握る。)
ニイ
私は頑張ってレーラズを守ってるのに、こんなに長い時間来なくてもいいの?ずっと待ってたんだよ。
オーディン
思ったより時間がかかりすぎたんだ。ごめんね。
ニイ
私は心が広いから許してあげるよ。
【プレイヤー】
【プレイヤー】
(いつかこんな光景を見た気がするけど…あ、なんか気に入らないな。)
シンモラシャドウ
楽しそうですね、二人。いや、神と龍。
ニイ
ここの可愛い子はどこから来ましたか?まさか、オーディンに惚れてしまって…
シンモラシャドウ
違います。あたしはおじさんが好みじゃないので大丈夫ですよ。ずっとあなたのもので大丈夫ですからね。
ニイ
ありがとうございます、お嬢さん。
オーディン
ニイ、話しがあるんだ。
ニイ
何か頼みたいことがあるのね?
ニイ
あなたはなかなかそういう顔はしないから。話してみて、オーディン。
オーディン
ああ…
(オーディンとシンモラの幻影がニイに現在の状況と炎に耐える力が必要と伝える。)
ニイ
うん、わかった。
(ニイがにっこり笑いながら髪をかき上げる。そしてオーディンの手を首に置く。)
オーディン
大丈夫?いくら俺の頼みとは言え…
ニイ
オーディン、私はいつも大丈夫よ。あなたが傍にいてくれるなら。私達に大事なことが何なのか考えてみて。
(ニイがにっこり笑う。)
オーディン
ニイ…
(オーディンがニイを見詰めて頭を下げる。そしてニイの意思を受け入れて首に置いた手を持ち上げる。)
ニイ
(ニイが苦しそうに目を閉じる。そして、ニイの首が割れた隙間から冷たい金属のように見える黒い破片が一つ浮き上がる。)
【プレイヤー】
あれは…
シンモラシャドウ
漆黒より濃くて暗い龍の鱗…あれを手に握って入ればムスペルヘイムの溶岩も涼しく感じちゃうよ。
(オーディンが鱗を手にすると、頑張って耐えていたニイがそのまま座り込む。驚いたオーディンが急いでニイを支えてレーラズの前に座らせる。)
オーディン
ニイ、ごめんね…
ニイ
そういう顔しないで。ほら、傷はもう治ったから。
(ニイが平然とする顔で自分の首を指さす。)
オーディン
こういう苦しみを与えたかったわけじゃなかった。
ニイ
世界樹の飽食者になった私を傍においてくれただけで、既にあなたは私の世界になったのよ。私の全部で…
ニイ
少しだけ眠るから、傍にいてね。
(オーディンが頷くとニイが目を閉じたまま眠りにつく。眠っても相変わらずニイの手はオーディンの手を握っている。)
オーディン
オーディン
【プレイヤー】。こちらへ。
(オーディンが【プレイヤー】を呼ぶ。)
オーディン
これを受け取ってくれ。シンモラの幻影に言われた通り手に握ってムスペルヘイムに入ればいいんだ。
【プレイヤー】
(黒い龍の鱗から神秘な力を感じる…)
【プレイヤー】
あの、オーディン。ニイは大丈夫ですか?
オーディン
何時間か眠って起きれば大丈夫。
シンモラシャドウ
オーディン、あの龍はあなたを結構信頼しているみたいだね?
オーディン
スルトが君にやっていることもたいして変わらないと思うのだが。
シンモラシャドウ
そうなのかな…?
シンモラシャドウ
シンモラシャドウ
とにかくオーディン…この子が成功して戻って来ることを祈っててね。行こう、【プレイヤー】。
【プレイヤー】
そうだね、行こう。
オーディン
よろしく、【プレイヤー】…戻って来たらここじゃなくてエリがいた場所に来てくれ。
【プレイヤー】
わかりました、オーディン。ではニイをよろしくお願いします。
オーディン
ああ…
オーディン
オーディン
ヘルが信じているのならスルトとの話となんとかなるだろう…

シンモラシャドウ
ムスペルトンネルへの扉はあっちよ。見えるよね?
【プレイヤー】
あそこね。
シンモラシャドウ
ところで、どうしてさっきからタメ語なの?
【プレイヤー】
私が?あ、そうだったか。君もそうだったからなんだかそれでいい気がしたんだよ。
シンモラシャドウ
【プレイヤー】
そういうのは気にしないでよ。とりあえず行こう。今は私がムスペルヘイムに入るのが大事なんでしょ?
シンモラシャドウ
それはそう。
シンモラシャドウ
シンモラシャドウ
なんだかやられた気がするけど…【プレイヤー】、一緒に行こう。あたしの手を握って入った方が熱気が冷めるわ。ねえ!一緒に行こうってば!