シナリオクエスト

死の終着地点

エリ
ヴィーグリーズに侵入した敵は全部倒したと思ったんだけど…
(エリが遠くでヴィーグリーズを彷徨う外部の存在を見つめて悲しんでいる。)
エリ
【プレイヤー】、あそこを見て。
(エリが指差した方向には、異質な雰囲気の構造物が建てられている。)
【プレイヤー】
あれが異世界への扉…
エリ
あっちには濃霧が、もう一方には溶岩が流れているわ…
今までm二つの扉が同時に現れたことなんてなかったのに…
エリ
これまでは一つの扉が消えた時にもう一つの扉が出てきていたんだけど…
エリ
あの扉達は、君が来る前まで現れなかった。
いや、もしかしたら君が来たから一気に現れたのかも…
【プレイヤー】
……私が来るのを、待っていた…?
【プレイヤー】
エリ
異常事態なのは間違いないわね。
エリ
今まで現れた敵はみんな、衝動のままにレーラズやヴィーグリーズのすべてを破壊しようとしていた。
エリ
なのに、あそこの敵にはそういう動きがまったく見られない…
まるで情報を集めているみたい…
エリ
扉を確認しないいけないわね…
【プレイヤー】
なら、ここでレーラズを狙う敵の足止めをお願いします。私が確認してきます。
エリ
大丈夫?
【プレイヤー】
はい…
エリ
そう。君がいてくれて安心したわ。
【プレイヤー】
…あれ、あそこに誰かがいるみたいですが…あれは…
エリ
霧が流れている扉の前?あぁ、オーディンのことね。
【プレイヤー】
オーディン…
(そこには、オオカミのように孤独な雰囲気を持つ男性が扉を見つめながら立っていた。)
エリ
ここは私に任せて。少しでもおかしなことが起きたらここに戻ってきて。
エリ
わかった?絶対よ。
【プレイヤー】
はい、わかっていますよ。では行ってきます。

(列車が通る駅の入り口のような大きい構造物がポツンとヴィーグリーズの奥川におかれている。)
(その前で神秘な雰囲気を持つオッドアイズの男性が頭を上げて構造物に付いている看板を見つめている。)
オーディン
ニブルヘイム…
オーディン
【プレイヤー】
あの…
(オーディンが近づく【プレイヤー】の声を聞いて目を移す。)
オーディン
君か。
【プレイヤー】
あ…
(オーディンと目を合わせた瞬間、【プレイヤー】の頭の中に様々な彼の姿が浮かぶ。)
(自信あふれる白い世界の主神としての姿や、冷静な姿で学園を見つめる姿…)
オーディン
すまない、【プレイヤー】…君がヴィーグリーズに来ずにすむようにしたかったのに…
オーディン
どうやって君がここまで来たのか知っている。
時間のゆがみが君をここまで導いたのだろう…
オーディン
この世界の主神である俺がもう少し強かったら運命を乗り越えて君を守れた…
【プレイヤー】
大丈夫ですよ、オーディン。あなたは今も十分にヴィーグリーズを守っていますから。
あまり自分を責めないでください。
【プレイヤー】
今の私も私にできることをやるために来たのですから…
オーディン
オーディン
イリスが君を信じていた理由を疑っていたわけではないが、今しっかりと理解した。強くなったのだな、【プレイヤー】…
オーディン
この方法が君の時間とヴィーグリーズを救う方法なのかはわからない。だけどやってみるべきだろう。
【プレイヤー】
どういう方法ですか?
オーディン
この扉の向こうの世界は今まで私が相手した世界とは違う。だからこれまでとは違う方法を考えなければならない。
オーディン
扉の向こうで俺らを待っている者がいる。あの世界の主である者、彼もヴィーグリーズと自分の世界が繋がるのは求めていない。
【プレイヤー】
それをなんで知ってるんですか?
オーディン
ユグドラシルとレーラズの存在を知っている世界の主なら自然とわかるものだ。
オーディン
「…ユグドラシルの力に導いて繋がった世界がすべて集まると彼らだけの戦争が起きる、それがラグナロクになるのだろう。」
オーディン
【プレイヤー】
ラグナロク…?
オーディン
行こう、【プレイヤー】。先に死の世界[ニブルヘイム]へ…
(オーディンがゆっくりニブルヘイムと呼ばれる世界の中に行くために足を運ぶ。)
(中から流れていた死の霧はより濃くなって少しずつヴィーグリーズにいたオーディンの姿を決していく。)
【プレイヤー】
ニブルヘイム…なんだか見慣れた気がするけど。どういう場所だ?
【プレイヤー】
とりあえずオーディンに言われた通り入ってみるか…
(冒険者もオーディンについて霧をかき分けて中に入る。そうすると遠くからこちらを見つめていた小さな存在が扉の前に近づく。)
???
まさかニブルヘイムの扉もこちらに届いたの?
???
だめだ…スルトに知らせないと…

(霧が溢れている世界に足を運んだ瞬間、恐ろしい寒気が近づいて二人を包む。)
【プレイヤー】
うわ、寒いな…
オーディン
ニブルヘイムの寒さはすぐ慣れる。それより…
【プレイヤー】
オーディン、どうしました?
オーディン
ここは俺の知るニブルヘイムじゃないな。
【プレイヤー】
ニブルヘイムはいくつかあるんですか?
オーディン
世界樹は一つだが、世界樹を知る世界は数えきれないほどある…
オーディン
そういう世界はお互い触れてはいけない。触れた瞬間、力を持った世界だけが生き残って、残りは消えてしまうからだ。
オーディン
それがラグナロク…世界樹を中心に生き残るための彼らだけの戦争…そしてその戦争が起きる場所がヴィーグリーズ…
オーディン
こういう世界はお互い自分の世界を保つためにたくさんの力を使ってしまった。私の世界がエトワールとぶつからないように頑張っていたのと同じようにな。
オーディン
やはり…
(オーディンが周りを見渡しながら確認していると、奥の濃霧の間から女性と思われるシルエットが動く。)
???
残念ですね。
【プレイヤー】
あの人は…
(冒険者が武器を持ち上げて警戒すると、オーディンが腕を伸ばして止める。しばらくすると、シルエットの主が霧の中から現れる。)
オーディン
ニブルヘイムの主、ヘルだ。
(黒い世界の唯一な光のような紫色に包まれた女性がヒールの音を鳴らしながら近づく。)
(余裕のある姿で腕を組んだヘルがオーディンと冒険者を見つめる。)
ヘル
私も、ニブルヘイムも、あなた達が知っている存在ではないようですね。
…あなたも私をここに送ってくれたオーディンじゃない…
ヘル
そこの冒険者。私が直接会ったことはありませんが、ニブルヘイムに落ちた時空間の虫を倒す時に見た幻想の中にいました。
ヘル
他の私が虫に囚われた時…
ヘル
ヘル
いえ、ここまでにしましょう。ここに来た目的は何ですか?
オーディン
この場所を破壊しないといけない。正確には…
ヘル
……今何と?
オーディン
言葉通りだ。ニブルヘイムの主よ、お前もラグナロクが起きるのは求めてないのだろう。
ヘル
ヘル
喜びの日を待ちながら!お客さんを迎えようとこれまで懸命に作ってきた場所です。それを破壊しろと?それをあなた達が…?
ヘル
ここを壊すとするのは許せません。ここは…、ここは!
オーディン
ヴィーグリーズに他の扉が一つ二つ増えてしまうとニブルヘイムが崩れるのは一瞬だ、ヘル。
【プレイヤー】
他に方法はありませんか?
オーディン
ニブルヘイムの主も他に方法がないことはわかっている。
ヘル
ヘル
ここは私の世界、ニブルヘイム。
(ヘルが閉じた目を開けた瞬間、赤い瞳が光り始める。)
オーディン
待て、ヘル!
(ヘルが片手をあげて眼帯を外した瞬間、後ろにあった黒い霧が飛び上がってオーディンと冒険者に物凄いスピードで近づく。)
(黒い霧は二人を束縛するように縛ったまま入ってきた通路に飛ばしてしまう。)
ヘル
この世界にあふれる私の力を止めることさえできないあなた達の要求を受け入れることはできません…
(散らばった黒い霧が再び集まって、その間に飛んで行ってしまったと思われた存在一人がゆっくり歩いてくる。)
ヘル
ヘル
どうして外に飛ばされてないのですか?
(ヘルが驚いた顔で近づこうとしている者の姿を見つめる。)
【プレイヤー】
耐えないといけないと思ったら霧が散らばりました。あ、オーディン…
ヘル
オーディンだけが飛ばされて、あなたがここに残っているなんて信じられませんね。
ヘル
ここにいるあなたを幻想の中のあなただと勘違いしていました。謝りましょう。あの時のあなたと今のあなたはとても違う…
ヘル
(ヘルが何かを考え込んで静かに背を向ける。)
ヘル
ではあなたの話を聞いてあげましょう。あなたがここに来た理由を知りたいです。それで私も納得できるのなら…
ですが、場所を変えましょう。
ヘル
ニブルヘイムシティーに向かう道の前でお待ちしています。
ヘル
あなたの意志が強ければ、再びそこで会えることでしょう。
【プレイヤー】
お、お待ちください、ヘル!
(手を伸ばしてヘルを掴もうとするが、ヘルは自分が言いたいことだけを言ってその場から蒸発する。)
【プレイヤー】
(それに遠くからニブルヘイムの住民だと思われる存在達が、侵入した外部者を捕まえるために物凄いスピードで近づいている。)
【プレイヤー】
ふぅ、私の意志をこんな形で確認しようとしてるなんて…仕方ない。
【プレイヤー】
お待ちください、ヘル。ちゃんと話を聞かせますから。

(ニブルヘイムステーションの他の区域に移動する度に、身をえぐるような冷たい風が近づく。)
(そうやってしばらく進んで到着したニブルヘイムステーションの果て、外に繋がる通路がゆっくり見え始める。)
【プレイヤー】
ここがヘルが言っていた道だよね?
【プレイヤー】
あれ?上の空気は冷たいのに、地面が暖かい…
ヘル
あなたも感じているようですね。
(腰を下ろして地面に手をつけていた【プレイヤー】の視野にヒールの音を鳴らしながら近づくヘルのブーツが見える。)
【プレイヤー】
(ヘル…)
【プレイヤー】
どういうことですか?
ヘル
言葉通りですよ。この場所はどんどん熱くなっています。ムスペルヘイムへの扉が近くにあるからなのでしょう。
ヘル
さあ、ここまで会いに来たのですからあなたの話をしてみてください。聞いてあげますから。
【プレイヤー】
ヘル
どうして遠慮しているんですか?
【プレイヤー】
いや、では…
【プレイヤー】
(ヘルにヴィーグリーズに来た理由を簡単に説明する。)
ヘル
…なるほど。あなたにもそういう理由があったなんて…
(ヘルが【プレイヤー】の話を聞いてニブルヘイムステーションの外に見える川をゆっくり眺めている。)
ヘル
ふぅ…
ヘル
傷ついた神が追放されて落ちた場所は、氷と氷から流れる冷気しかない…生も感じられない場所でした。
ヘル
神がやることは特にありません。どんな場所でも生命を守らないといけない。
ヘル
他の世界からこの場所を死と呼ばれようとも、地獄の始まりと言われていてもかまいませんでした。
ヘル
ここを訪ねる者達は絶望の末から離れたくて来ただけだから。
ヘル
神は冷気を乗り越えた彼らを一緒に慰めて、一緒にニブルヘイムを起こしました…ふふ…
ヘル
ですが、このまま熱くなり続けたら…この世界は消えてしまうのでしょう。
【プレイヤー】
その話の中の神はヘル、あなたですよね?
ヘル
ええ。ここの主である私の話。私はもう決めなければなりません。私を起こした意志さえも溶けてしまう前に…
ヘル
ここは近づく喜びの日のために作った場所。
ヘル
【プレイヤー】、私が私を諦めてニブルヘイムを守れるように助けてください。それがあなたとヴィーグリーズを守る方法ならば…
【プレイヤー】
どうすればいいですか?
ヘル
(ヘルが自分を見つめる冒険者を見て軽く微笑む。)
ヘル
私を殺してください。
(ヘルの笑みが消える頃、ニブルヘイムステーションが揺れ始める。そして冷たい世界はヘルの周りから噴き出す死の霧に溢れる。)
ヘル
私があなたを殺す前に。早く…

(渾身の力を尽くした冒険者の一撃が死の霧を追い払ってヘルに飛ぶ。)
ドン。
(遠くに飛ばされたヘルが再度起き上がるも、力が入らないのかそのまま地面に倒れる。)
ヘル
ヘル
あなたはどうして私に手を差し出すのですか?
(ヘルが倒れたまま自分に伸ばされた【プレイヤー】の手を見つめる。)
【プレイヤー】
…こうやって戦うのはあまり意味がないと思います。
ヘル
私を殺してください、【プレイヤー】。
【プレイヤー】
できません。そんな理由であなたを…
ヘル
私が見た幻想の中でのあなたも私を殺しませんでした。私を殺せるチャンスがあったのに…
ヘル
(ヘルが【プレイヤー】の手を掴んで立ち上がる。そして後ろに下がって背を向ける。)
ヘル
それなら仕方ありません。あなたが私を殺さないのなら、私が私を殺すしか…
(ヘルの言葉と共にニブルヘイムステーションの外に流れていた川がそのまま動きを止める。そして、川から突きあがった水柱がヘルを包んでそのまま凍らせてしまう。)
【プレイヤー】
ヘル?ヘル!!
(ヘルの周りに沸きあがって死の霧が近づこうとする冒険者を追い出す。そのまま霧が割れて、その中の一部が鋭い棘に変わる。)
【プレイヤー】
ま、まさか…
(錐に変わった霧は海の激しい波のように湧き上がってそのままヘルに刺さる。)
【プレイヤー】
【プレイヤー】
ヘル!ヘル!!
(驚いた冒険者が急いで倒れたヘルに近づく。そうするとヘルを包んでいたすべての死の霧と冷気がすべて地面に流れ落ちる。)
【プレイヤー】
な、なんだこれ…
(先ほどまで地面で感じていた暖気がいつの間にか消えて、再び冷気が出始める。)
ヘル
もう大丈夫です。
(気を失っていたヘルがいつ目を覚ましたのか微笑んでいる。)
【プレイヤー】
一体何をしたんですか?
【プレイヤー】
…!
【プレイヤー】
うわああ、び、びっくりした。いきなり…
(ヘルが【プレイヤー】に近づいてほっぺたにキスをして反応を見る。)
ヘル
なんでそんなに驚くんですか?こういうのに慣れてないみたいですね。
【プレイヤー】
死んだと思った人が普通に生きてるのに慣れるわけないじゃないですか。
(冒険者が驚いて後ずさると、ヘルが晴れやかに笑う。)
ヘル
ありがとうございます、【プレイヤー】…私が抱いていた虚しい意思を倒してくれて…
ヘル
ニブルヘイムに長くいながら私はその日だけを待っていました。絶対に来ないと知っておきながら…
【プレイヤー】
それはどういう日なんですか?
ヘル
大切な存在にまた会える日、私一人で勝手に喜びの日に決めて待っていました。
ヘル
愚かなのは知っていました。時間がたくさん流れてしまって頭の中も凍ってしまったのかもしれません…だからきっかけが必要だったのかも。
ヘル
こうして振り切ることができてよかったと言えばいいのか…
【プレイヤー】
でも大丈夫ですか?本当に…死んだ…
ヘル
ふふ、それを心配していたのですね。
ヘル
ニブルヘイムにいる私にとって死は無限のもの…新たな悟りを得るための手段にすぎません。
【プレイヤー】
なんだか騙された気がします。
ヘル
失望しないでください、【プレイヤー】。あなたは私の信頼を得たのだから。
(ヘルが【プレイヤー】の手に何かを握らせる。)
ヘル
…このまま戻ってオーディンにこれを渡してください。そして教えてあげてください。世界樹を中心に虚しい黄昏、ラグナロクを起こさせることはないと。
【プレイヤー】
ありがとうございます、ヘル。
ヘル
死の世界に入って私にお礼を言うのはあなたが初めてですよ。ふふ。
ヘル
気を付けてくださいね、【プレイヤー】。
(顔から笑顔が消えたヘルが挨拶をすると同時に、冷気あふれる死の霧がわき始める。)
ヘル
さあ、戻ってヴィーグリーズと繋がろうとしているムスペルヘイムの扉を探してください。そしてまた会いましょう。
(死の霧が晴れると中にいたヘルの姿が消えている。)
【プレイヤー】
ムスペルヘイム?あ、遅れたのか…もう帰ってもいいよね?
【プレイヤー】
この感じはなんだ…
(さっきまで冷たく感じていたニブルヘイムステーションから違うオーラを感じる。)
【プレイヤー】
…ヘルの影響ではあるけど…
【プレイヤー】
とりあえず外に出てエリとオーディンに話そう。そしてムスペルヘイムの扉に行こう…