(ノーネームに会えたオルカリウムの隅っこで、冒険者は足を止める。)
【プレイヤー】
ノーネームに会ったのはこの間なのに、どうしてこんなに昔に感じるんだ。
【プレイヤー】
アーロンがオルカリウムに来るのは不思議だけど、陛下の予知通りならもうすぐ…
(冒険者が閑寂な場所に咲いている林の間に入って身を隠す。)
(冒険者が退屈に耐えられず立ち上がろうとした瞬間、遠くから誰かの声が聞こえてくる。)
【プレイヤー】
(おっと、バレるところだった。ちゃんと隠れないと。あの人はアーロン?)
(【プレイヤー】の視界にこちらに歩いて来る2人が見える。一人はアーロン、もう一人は女性で、プレイオス大陸とは似つかわしくない衣服を着ている。)
アーロン
ジエンディア大陸のジエンディア帝国から来ていただいたジエンディア様…まず僕に付いてここまで来ていただいたことにお礼申し上げます。
【プレイヤー】
(あの人は?えっ…ジエンディアさん?)
ジエン
好きに呼んでいただいて結構です。どうせアーロンさんと長く付き合うつもりはありませんので。
ジエン
プレイオス大陸の太陽、シルバリア帝国がジエンディア大陸のエリアス王国との交流に、尽力されているのは存じております。
ジエン
ですが、辺境である私達とも交流を希望することには少し驚きました。ただでさえ申し訳ないと思っていることもありましたし…
アーロン
偽物アガシュラ兄妹の件でしたら、帝国も関わっていることでした。あまりお気になさらずに。
ジエン
あの人達がイーストランドまで行くとは思いもよりませんでした。
(ジエンがため息を吐きながらアーロンを見つめる。)
ジエン
さて、アーロンさん。私を帝国に招いた人がシルバリアの皇帝陛下ではないことは存じております。私を招いたのは議会の中心にいるあなた…
【プレイヤー】
(アーロンは何を企んでいるんだ?)
ジエン
あなたと似ている卑劣な笑顔をどこかで見た気がします。思い出せませんが。
ジエン
覚えるほどでもなかったようです。とにかく、行方不明になった私の臣下がどこにいるのか教えてください。
ジエン
それが私がここまで付いて来た目的なのですから。
【プレイヤー】
(…アーロンは全部知っているんだ。ところで私はいつまで聞いていればいいんだ?変な雰囲気が流れているけど…)
ジエン
そんなことを言うために私をここまで連れて来たのですか?それは私も知っている事…
ジエン
あなたが魔女と手を組んでいることくらいは…
アーロン
他国の君主がそういう情報を知っているなんて流石ですね。
ジエン
有能な監察者が臣下にいますからね。しっかり話していただかないとアーロンさんの身上も…ま、まって…
(ジエンがアーロンを見て何かを感じたのか後ずさる。)
(アーロンがポケットから醜い短剣を一つ取り出す。)
アーロン
知っているのですね。これは彼があなたの時間を持って行くために使った…
(アーロンが短剣を握って指先を切る。そうすると傷の間から血がゆっくり地面に落ちる。)
(ジエンの足元に赤色に光る魔法陣が作られて、落ちたアーロンの血がその中で沸き始める。)
アーロン
確かジェンさんはデミゴッドと似ている存在…それで僕を相手することができると思ったのでしょう。ですが、見落としていることが…
【プレイヤー】
(いくら予知通りにならないといけないとはゆえ、このままじゃジエンディアさんが死んでしまう。助けないと!)
【プレイヤー】
ジエンディアさん!とりあえずここから逃げてください!話はまた後で!
(耐え切れずに冒険者が動いたその瞬間、目に見える全てが止まってしまう。)
(ジエンが恐怖におびえていて、アーロンが剣を持ったまま止まっている。言葉通り、全てが止まってしまった世界。)
(冒険者が腕を伸ばしてジエンディアを掴もうとするも、冒険者の手が、止まっているジエンディアの身体を通過してしまう。)
(それだけでなく、ジエンディアに触れた【プレイヤー】の腕さえもまるで固まったように動かなくなる。)
【プレイヤー】
な、なんだ?あ…まさか、他のことが起きるって…
(そうやって困っていた【プレイヤー】の前に、誰かがゆっくり近づく。)
アルケー
【プレイヤー】さん、動かないでください。
(アルケーが手を伸ばして【プレイヤー】の左腕を掴む。)
【プレイヤー】
アルケー、ここにはどうやって?プネウマから出られないんじゃないんですか?
アルケー
プネウマと似ている形の場所なら行けるみたいです。
【プレイヤー】
…ここはプネウマではない…だから…
アルケー
冒険者さん。気をしっかりして、よく聞いてください。
アルケー
カイロスが眠りから目を覚ますことなく、クロノスの時針と分針が止まりました。そして冒険者さんを基準に、時間と空間が二つに分かれました。
アルケー
とりあえず目を閉じてください。私がプネウマに連れていきますので、私が目を開けてもいいと言うまで、決して目を開けないでください。
アルケー
もし目を開けてしまったら、手が離れてしまいます。手が離れると、全てを巻き返すチャンスさえも消えてしまいます。
【プレイヤー】
(アルケーに言われた通り目を閉じただけなのに、右腕が動き始めた…)
アルケー
行きましょう、【プレイヤー】さん。しばらくは冒険者さんの正面の時間には…
(アルケーの声が少しずつ薄れて聞こえなくなってくる。まるで時間が止まり、音さえも消えてしまったかのように…)