シナリオクエスト

休めない魂

イルファン
もう君はエリシアに自由に行き来できるようになった。
【プレイヤー】
はい?
イルファン
ヘカテー様が君の出入りを許可したんだ。今度からはプネウマの道に沿ってここに来ると良い。
【プレイヤー】
イルファン
そして試練の場所をそのままにして置くとのことだ。強くなりたいなら同じ試練を繰り返して経験するのも悪くないという考えだそうだ。
【プレイヤー】
【プレイヤー】
辛うじて終わらせた試練をまた…
イルファン
神の意志をちゃんと受け止めない君だからこそ自由にできるように配慮してくだったのだ。
【プレイヤー】
はい、配慮…
イルファン
さあ、もう帰ってくれ。プネウマを確認したら、イリス様にもよろしく伝えてくれ。
イルファン
急げ。
【プレイヤー】
(帰るけど…急かされてる気持ちはなんだ…)
イルファン
あ、今度来る時は砂漠の砂を持ってきてくれ。
【プレイヤー】
私がまた来ると確信していますね。
イルファン
いつか俺の過去の話が必要になるのだろう。じゃなくても、ヘカテー様は君とまた会うことを期待しているのだ。
【プレイヤー】
イルファン
あそこに見える円型の光について行けばプネウマに行けるはずだ。
【プレイヤー】
では行ってみます。イルファンさん、またお会いしましょう。
イルファン
(【プレイヤー】の姿が消えて席を守っていたイルファンの隣にヘカテーが近づく。)
イルファン
大丈夫でしょうか、ヘカテー様?
ヘカテー
必滅者だった君が神の安危を聞くか?
ふっ…問題ない。
イルファン
恐れ入ります…
ヘカテー
今の私の状況ではこの程度しか話せないのだろう。
イルファン
かしこまりました。なぜここにお姿を?
ヘカテー
アガシュラも離れ、今は君と私しかいないエリシアに…どうやらまた客が訪れたらしい…
ああ、呼んでもいないのに元気なことだ。
イルファン
黒い蝶々…
ヘカテー
着いたか。
(どこかから飛んできた黒い蝶々がそのまま光を失って地面に落ちる。一人の男性がゆっくり歩いて来て黒い蝶々を踏みつぶす。)
バルバトス
お久しぶりですね。
バルバトス
まさかお迎えまでしていただけるとは思っていませんでしたが。
ヘカテー
ここまで来る道を見つけるとはな。ある程度力が戻ったのか?
バルバトス
ハハ、まだまだです。
ヘカテー
魔族の皮を被って生き残った死にぞこないめ…
パンデモニウムの汚い悪魔や魔族と戯れていればいいものを、エリシアに何をしに来た?
バルバトス
フフ、他の神と共に消滅することを拒否し、永遠の牢獄を生きる月の神ともあろう方が、私の心を読めませんか?
ヘカテー
汚らわしい魔族が…少々おしゃべりが過ぎるぞ。
バルバトス
汚らわしいのはお互い様でしょう?
(バルバトスが手に握った武器を持ち上げてヘカテーを狙う。バルバトスの後ろから付いて来た一人の少年が驚いてイルファンの後ろに隠れる。)
ノーネーム
な、なんだ?あの人を見た瞬間から仲の悪いオーラが半端ないじゃないか。
ノーネーム
あの人が“あの方”か…
イルファン
大公にヘカテー様を紹介してもらう予定だったのか?
ノーネーム
いや、死にたくなければ付いて来いと言われたんだ。
で、あの女は一体誰だ?
イルファン
イルファン
礼儀を知らない子だな。
イルファン
見てればいいんだ。我々のような人間が入る隙はないんだから…
ノーネーム
そう?
ノーネーム
(ヘカテーが静かに指先でバルバトスの大剣を押す。)
ヘカテー
大公、私には君と戦う理由がないが。
バルバトス
目を覚まして世界に関与した以上、死を覚悟したのではありませんか?
ヘカテー
大公はそう理解したのか?どうせ私には意味のないことだ。
ヘカテー
それで大公…
ヘカテー
今までどれだけの神を斬ってきた?
バルバトス
ふふ、さあ。どうでしょうか。
(バルバトスが大剣を仕舞って眼鏡をかけ直す。)
ヘカテー
ふん…
ヘカテー
君は聖域でガイアを斬る十分な時間があった。だが、そうしなかった。
(ヘカテーの話を聞いていたバルバトスの顔に暗い影が広がる。)
バルバトス
バルバトス
ここであなたを斬って、その疑問への回答にしてあげましょうか?
ヘカテー
ふふ。できるものならな。
まぁ回答に意味はない。君の反応を確認したかっただけだから。
ヘカテー
さあ、私から君に一つ提案をしようと思うのだが…
バルバトス
聞いてから決めさせていただきます。
ヘカテー
絶望の奈落から這い上がった君の口に合うだろう。では話を始めよう。

アルケー
【プレイヤー】さん…
(不安そうなアルケーが【プレイヤー】の姿を見て急いで走って来る。)
アルケー
大丈夫ですか?
【プレイヤー】
アルケー、大丈夫ですか?
アルケー
だ、大丈夫だと思います。プネウマも精霊達も元の通りに戻りましたから…大丈ぶ…
アルケー
(アルケーが足の力が抜けたようにそのまま座り込む。驚いた冒険者が急いで支えるも、アルケーの震えは止まらない。)
【プレイヤー】
アルケー…全然大丈夫じゃないじゃないですか…
アルケー
怖いです。
アルケー
プネウマに来てからまたこういう気持ちになるとは思っていなかったのですが…
アルケー
アルケー
あの時のようです。
【プレイヤー】
あの時なら…
アルケー
魂が融合されず離れてしまった時、私は恐怖を覚えました。また生まれた時もそういう恐怖はなかったのに…
アルケー
確かに何も起きなかったようにプネウマは元の姿を取り戻しましたが…エリシアと繋がった扉ができたということだけで…
アルケー
私は、私は…考えたくなかったことを思い出してしまって辛いです…
アルケー
アルケー
ガイア様のためにでも落ち着かないといけないのに…
(不安そうなアルケーを慰めようと、アトモスが集まって来る。)
アルケー
ありがとうね、皆…
【プレイヤー】
少し落ち着きましたか?
アルケー
はい…少しですが。ごめんなさい。
プネウマのために頑張ってくれた【プレイヤー】さんにこんな姿を見せるなんて…
【プレイヤー】
大丈夫ですよ。アルケー、少し休んでください。
アルケー
はい…
【プレイヤー】
では私はイリスに行ってみます。あれ、アルケー?
(アルケーが【プレイヤー】の手を握る。)
アルケー
今は行っちゃだめですよ。
【プレイヤー】
どうしてですか?
アルケー
【プレイヤー】さんが戻る前にイリス様から精霊を通して残した言葉がありました。
【プレイヤー】
あ…
【プレイヤー】
なんて言ってましたか?
アルケー
【プレイヤー】さんが助けたヒルダという方は大丈夫とおっしゃっていました。
そして時が訪れるまで来ないでほしいとのことでした。
アルケー
恐らく…
アルケー
それがお互い似ている色の魂を持つ存在だからだと思います…
【プレイヤー】
【プレイヤー】
あ…
【プレイヤー】
それなら仕方ありませんね…
【プレイヤー】
(ではどうしたらいいんだ…?とりあえず待つしかないのか…)
アルケー
【プレイヤー】さん、あまり心配しないでください。
【プレイヤー】
そうですね。ところで、アルケー…
アルケー
はい?
【プレイヤー】
ヘカテーは私にお互いの魂を傷つける運命と言っていました。
似ている魂とは、どういうことですか?
【プレイヤー】
アルケーも似ている魂が出会ってしまうとどうなるのか知ってましたか?
アルケー
それは…
【プレイヤー】
まさか、内緒ですか?
アルケー
内緒ではありません。ただ、私から何かを言ったとして、【プレイヤー】さんに聞こえるかわからなくて。
【プレイヤー】
あ…
【プレイヤー】
(そうだ。いくら他の人に聞いたって神様が許さない限り聞けなかったんだ…)
アルケー
イリス様も黒い月の神が話して気付いたところですので…ごめんなさい、役に立てなくて…
【プレイヤー】
大丈夫ですよ。ではイリスに呼ばれるまで待たないといけないですね。
【プレイヤー】
【プレイヤー】
ふぅ…
【プレイヤー】
あの、アルケー…プネウマで少し休んでもいいですか?
アルケー
はい、もちろんです。いつまでも大丈夫ですよ。
【プレイヤー】
魔女が現れてから頭の中が複雑で…
アルケー
アエルラをお貸ししますよ。
【プレイヤー】
ありがとうございます…
【プレイヤー】
(プネウマの空に浮かんでいたアエルラが羽と花びらを舞いながら【プレイヤー】に近づく。)
【プレイヤー】
(イリスに会って、イリスを助けるのが私の使命だと思っていたのに…それだけじゃないなんて…)
(複雑な心を慰めるように近づいたアエルラに身体を寄せた瞬間、今まで感じていた不安が消える。)
……………
………………………
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(そうやって深い眠りに入る。二度と起きたくないくらい。)