(大きな衝撃と共にキシャラの体から破片が跳ね上がって床に刺さる。)
(石像の頭の部分が少しずつ割れてそのままバランスを崩して床に倒れる。)
(バランスを崩した石像が全体的に割れ始めると、静かだったキシャラが口を開けてしゃべり始める。)
キシャラ
「また生きられるチャンスをもらったのに…」
キシャラ
「最初からこの体では生きられなかった。」
キシャラ
「ヘカテーがキシャラを利用したんだよ。」
【プレイヤー】
あなた達に文句はない。でも私は試練を終わらせる必要があるんだ。
キシャラ
「既にわかっていた。逃げた神の最後を…」
キシャラ
『ヘカテーの手を握るんじゃなかった。ヘカテーを閉じ込めたのは…、ヘカテーが閉じ込めたのは…』
(謎の言葉をしゃべっていたキシャラが奇怪な鳴き声を発しながらまた起き上がる。)
キシャラ
『私達は、キシャラはこのまま倒れられないわ。死ね!!』
(キシャラの攻撃が届く前に【プレイヤー】の攻撃が先に壊れた隙に入ってしまう。)
キシャラ
『ヘカテー、お前の言う通り永劫の時間の中に閉じ込められた魂を取ればいけると思っていたのに…』
(奇怪な悲鳴と共にキシャラの口が止まって、破壊された場所にひびが入る。)
(そして大きな轟音と共にさっきまでキシャラだった石像は粉になって試練だった空間から飛び散る。)
【プレイヤー】
暗くなっていくってことはそろそろ登場するのか…まあ…
【プレイヤー】
ヘカテー、試練は終わった。今すぐ出て約束を守れ!
(試練の中から沸き上がった影が全てを染めている頃、どこかからヘカテーがゆっくり歩いて来る。)
ヘカテー
今回もよくやった。キシャラの力もエリシアのための養分になったのだろう。
ヘカテー
入れる場所がなくて私に似てる石像に入れたのだが、それがキシャラの足を止めたみたいだ。
ヘカテー
試練を乗り越えたことについては誉めてやろう。よくやった、必滅者よ。
【プレイヤー】
褒められたくないから早くアルケーとヒルダ、プネウマから手を放せ。
ヘカテー
あの子達に大切にしてもらってる君という人間は本当に気に障るな。
ヘカテー
神の声が決して軽くないことはわかっているはずなのだが。ああ、返してやろう。
(ヘカテーの言葉と共に周りにあった影が少しずつ引いて、その下に倒れているヒルダが見える。)
(急いでヒルダを支える【プレイヤー】の姿を見ていたヘカテーが嘲笑を見せる。)
ヘカテー
おかげさまで楽しかったよ、必滅者よ。ヒルダを連れて帰れ。
ヘカテー
ヒルダが目を覚ました瞬間から君は選ばなければならないのだろう。
ヒルダを魂を破壊してそのまま取るのか。それとも君の魂が崩れてヒルダに殺されるのか。
ヘカテー
君も、ヒルダも求めていなかっただろうが、既に魂がそういう運命で生まれたのだ。
老人が触れた君の魂を死へ導くこと以外、私にできることはない。
【プレイヤー】
そんな。そんなはずがない。私は私…
ヘカテー
そんな起きるはずのないことが神である私にも起きているというのに、
君だけが例外でいられるとでも?既に君の魂は君一人のものではないのだ。
ヘカテー
いくつかの時間の中で君は他の姿で現れたこともあって、死んだこともあった。
ヘカテー
イリス、あの子が君の呪いを解けるのも限界があるのだろう。
そのまま呪いを受けて罪人になるのも悪くはない。
ヘカテー
死なないように足掻いても結果は同じだ。必滅者よ。
若干の差があるのなら、誰に殺されるのかぐらいだろう。
ヘカテー
エトワールと関わった神さえも死んでいる…
ヘカテー
ふふ、恐れる必要はない。未だ、愉しみは数多く残ってるのだ。
ヘカテー
私の力で夜を追う魔女になった子達、彼らがやることを見守ってやれ、必滅者よ。ここまで話してしまうなんて、眠っているガイアに悪いね。
(自分の名前が呼ばれたのが気に入らないのかヘカテーがおでこにしわを寄せる。)
ヘカテー
君の無礼を許すのも今日が最後だ。では、必滅者よ。
また逢う日までせいぜい生きていてくれ。
(挨拶を最後にヘカテーが濃い影の中に身体を隠す。そして、漂っていた影も物凄いスピードで消えて行く。)
(目を開けられていないヒルダが【プレイヤー】の名前を呼んでそのまま再び気を失う。)
【プレイヤー】
ヒルダ?しっかりしてください、ヒルダ…
カズノ
ジェリルの心配はしなくていい。お前はすぐ精霊世界を確認してみろ。この魔女は俺が…
【プレイヤー】
まって。ヒルダがウロボロスを呼ぶ餌というのはわかってるんだ。それで連れて行くつもりだろ?
カズノ
今はそういうつもりがない。とりあえず、イリスに行くとこの魔女は生きられる。
【プレイヤー】
それならなおさら私が連れて行くべきだ。
カズノ
【プレイヤー】!しっかりしろ!今は俺の話を聞け!
カズノ
お前のためにも、イリスのためにも、俺の話を聞け!
カズノ
ここを離れてヒルダが目を開けてお前を見詰めた瞬間、一人は死ぬんだ。だから…
カズノ
お前の手で最悪の瞬間を迎えたいわけじゃないなら、今は俺に任せろ。
(カズノが諦めたように答える【プレイヤー】の顔を見詰めながら、ヒルダを支える。)
カズノ
またイリスに相談してくれ。この魔女の居場所をどうするのか。そして、しばらくはヒルダに手を付けないようにしよう…