シナリオクエスト

エリシアの主

イルファン
(目を閉じていたイルファンが何かに気づいたのか前を直視する。月の形の碑石の後ろから冒険者がゆっくり歩いて来るのを見つけて微笑む。)
イルファン
大変そうだな。無事に帰って来られたみたいだな。
【プレイヤー】
解決はしましたが…
イルファン
怒ってるのも理解してるんだ。
俺の言葉が君を余計にイライラさせていることも知っている。それでも大人しく次の試練へ…
イルファン
イルファン
あの中で待っていた獣達には会ったのか?
【プレイヤー】
獣達?誰のことなのかわかりません。神を名乗ったうさぎになら会いましたが…
【プレイヤー】
(【プレイヤー】の足元にいつの間にかイルファンのギガントポールから流れて来た火花が回り始める。)
イルファン
しっかり答えてくれ。
【プレイヤー】
【プレイヤー】
アガシュラ二人です。
イルファン
君とはどういう縁だ?どんな話をしたのか?
【プレイヤー】
行き来してるとたまにすれ違っていた仲で、何かを探しているみたいでした。
イルファン
なるほど。
(イルファンが頷くと【プレイヤー】の足元にあった火花が痕跡もなく消える。)
イルファン
招待されなかった獣達が何かを探しているってことなら大事なことなのだろう。彼らも知っているはずだ。
イルファン
世界の矛盾から生まれた者達が行うことならば…
(イルファンが髭を撫でていると、いきなりエリシアが揺れ始める。)
【プレイヤー】
な、なんだ?
イルファン
獣達の他にも招かれざる客が現れたみたいだな。
【プレイヤー】
そういう存在はエリシアには来れないんじゃないんですか?
イルファン
そうか。
ハハ。君、今ここに何が起きているか気にならないか?
【プレイヤー】
はい?
イルファン
それならエリシアの奥の空いている場所に行ってみてくれ。
君の縁がどう絡んでいるのかわかるようになるのだろう。
【プレイヤー】
どういう…
イルファン
大人しく行ってきてくれ。
【プレイヤー】
(イルファンが不満の顔で足を運ぶ【プレイヤー】の後ろ姿を静かに見つめる。)
イルファン
???様…
イルファン
考えが変わったのですね…次はどうするおつもりでしょうか?

(エリシアを探索しながら現れた道に入った瞬間、濃い闇が【プレイヤー】の周りに広がる。)
【プレイヤー】
(まるで待っていたような…どうしたらいいんだ?きっとこれは…)
【プレイヤー】
…?
(しばらく状況を確認していた【プレイヤー】の周りにあった闇が少し引くと、誰かの足が見える。)
【プレイヤー】
あなたは誰ですか?
【プレイヤー】
???
(闇が散らかって隠れていた存在の姿が少しずつ現れる。)
(光を失った世界の中心で闇を抱いた月のように輝く女性が無表情で【プレイヤー】の顔を見つめる。)
???
私の名前が気になるのか?
???
必滅者よ…
【プレイヤー】
……!
???
そんなに知りたいなら教えてあげよう。
(女性が手を伸ばして固まっている【プレイヤー】の顔を撫でる。)
【プレイヤー】
な、なんだ?
【プレイヤー】
…?
【プレイヤー】
(う、動けない…こういう威圧感は…あれ?)
(その瞬間、【プレイヤー】の頭の中に誰かの名前が流れてくる。)
【プレイヤー】
???
必滅者よ、君の頭の中に浮かんだ私の名前を言え。
【プレイヤー】
???
黒い月と死、そして夜を待つ者達の主である私は誰だ。
【プレイヤー】
ヘ…
???
早く…!
【プレイヤー】
ヘ…カテ…
(【プレイヤー】の口からヘカテーの名前が出ると、女性は満足の笑顔になる。そしてたかが必滅者であるしかない人間の首を掴んでそのまま投げてしまう。)
ドン。
ヘカテー
アンシャラが君の態度で怒ってるのは当然だ。
ヘカテー
さあ、起き上がれ。
【プレイヤー】
うっ、う…
(ヘカテーが辛そうな【プレイヤー】に近づいて手を伸ばす。だが、愚かだと思っていた必滅者がその手を払う。)
【プレイヤー】
その手、要り…ません…
ヘカテー
ヘカテー
君の意思を理解した。では私も判断を変えよう。
ヘカテー
私の世界よ…
【プレイヤー】
(これは…)
ヘカテー
大地を包む黒い月に湧き上がる死の霧よ。
(ヘカテーの周りから消えていた黒い影が再び湧き上がる。)
ヘカテー
太初の闇が飲み込む魂がここにいるのだ。連れて行け…私、ヘカテーの名の下に…
【プレイヤー】
(に、逃げなきゃ。私はここで…)
(影が蛇のように変わって【プレイヤー】に近づいて首を絞め始める。)
【プレイヤー】
(ここで死ぬことはできな…)
【プレイヤー】
(死ぬことは…)
【プレイヤー】
(光を失った世界すらもなかった太初の宇宙のように【プレイヤー】の小さな世界さえも深い闇に沈んでしまう。)

???
しっかりして!!
(闇の沼に落ちて何もできなかった【プレイヤー】に誰かが叫ぶ。)
【プレイヤー】
…誰?
【プレイヤー】
【プレイヤー】
ここにはどうやって…
(濃い闇が少し散らかるとヒルダがヘカテーの手首を掴んでいるのが見える。)
【プレイヤー】
ヒルダ…
ヒルダ
気を取り戻したのね。急いで、早く逃げて!
【プレイヤー】
うっ…
【プレイヤー】
足が動かない…
ヒルダ
ヘカテー
君がここまで来るなんて、意外だな、ヒルダ。
(ヘカテーが自分の手を掴んでいるヒルダを見て顔をしかめる。)
ヒルダ
意地悪もそこまでにして、ヘカテー。
ヘカテー
ヘカテー
誰の許可を得てここに来た?まして、主の名を呼ぶとは…
【プレイヤー】
(ヒルダは普通に動いてる?私はいまだに足が動かないのに…)
ヘカテー
ヒルダ。
ヘカテー
この手を放せ。二度は言わない。
ヒルダ
ヘカテー
君も気づいているはずだ。今の君の行動が高慢な判断だったということを。
ヒルダ
ヒルダ
私は死にたくないわ。この人を放して。
ヘカテー
ここまで来るのに覚悟が必要だっただろうに。たかがそういう理由で…
(ヘカテーがヒルダの手を払って後ろに下がる。)
【プレイヤー】
ヘカテー
ヒルダ、ここは私の世界、エリシアだ。ここで君に何ができると思ってるんだ?
ヘカテー
ガイアとセレスに愛されたあの子、あの子が大事にしている必滅者がここで死ぬのは私の意思だ。
ヘカテー
魔女になった君もここで死ねると知っていながら…
【プレイヤー】
(生きなきゃ、ここから出て…)
ヒルダ
神様が知ってるのは一つのみで、二つは知らないのね…
夜を追う者達のように私の運命を作ったのはあなた。けれど…
ヘカテー
本当に知らないと思ってるのか?
ヒルダ
ウロボロスが現れたらあなたが求める世界は…
【プレイヤー】
ウロボロス…?
ヒルダ
とにかくこの人を放して。あとは私が…
ヘカテー
取引をする気か?取引とは何か知らないようだな。だが、それを教える前に…
ヘカテー
(ヘカテーが静かに一点を見つめると、闇の中で隠れて見えなかった道が現れる。そしてその隙間から一人の少年の姿が見える。)
ジェリル
これは困ったな…黒い月の神と対面するなんて。
(ジェリルが頬っぺたを掻きながらゆっくり歩いて来る。)
【プレイヤー】
どうしてジェリルがそこに…
ジェリル
【プレイヤー】、さっきの話は忘れたのか?こっちはこっちでやることがある。
【プレイヤー】
やること?一体何を…
(ジェリルが平然とヘカテーを通り過ぎて【プレイヤー】に近づいて状態を確認する。)
ジェリル
恐怖に怯えて動くことさえできない冒険者は久しぶりだな。
ハハ。助けてやってもいいが難しそうだな。
ヒルダ
ジェリル
ヒルダ、久しぶり。怯える必要はないんだよ。すぐ連れて行くから待ってろよな。
(その時、ヘカテーの足元から黒い蔓が浮き上がって猛スピードでジェリルに向かって飛んでいく。)
(だが、その場で獣の咆哮が鳴り響いて近づいていた黒い蔓が止まる。そして干乾びて影の中に姿を消す。)
ジェリル
黒い月の神様。俺を舐めすぎてるんじゃないの?
ヘカテー
獣に語る言葉はない。
ジェリル
世界が危険に陥った時、無力に閉じ込められたくせに…
黒い月の神様もレーテのように高慢で情けないのか。いつまでそうしてるつもりだ?
ジェリル
邪魔をするな。
ヒルダ
あ、目眩がする…
(状況を見ていたヒルダの足の力が抜けてそのまま座り込む。)
【プレイヤー】
ヒルダ?ヒルダ、大丈夫ですか?
ヒルダ
す、少し離れて。め、目眩がするから…
ヘカテー
そういうことか…
(ヘカテーが苦しむヒルダの姿から何かに気づいたように微笑む。)
ヘカテー
なるほど。どうして君が行きたいと言ったのかやっとわかった。
ヘカテー
【プレイヤー】、君に真実を教えてあげよう。君とヒルダは…
ヒルダ
やめて!!
(ヒルダが大きな声で叫ぶとみんながいる場所が少しずつ揺れ始める。)
ヒルダ
ヘカテー、やめて!!
ジェリル
まって、ヒルダ。今は…
(先ほどまでなかった緑色の槍がヒルダの手から離れてヘカテーの首に向かう。)
ヘカテー
黒い月の力で動く存在がどこまで逆らうつもりだ?!
ヘカテー
全て飲み込め。
(ヘカテーの怒りで溢れる声と共に再び世界が影で包まれる。先ほどまで目の前にあったすべてを消したかのように。)
……………
………………………
…………………………………

………………………
……………
……
(影が少しずつ下がってエリシアの姿が最初足を踏み出した時に戻る。)
【プレイヤー】
な、なんだ…
【プレイヤー】
……
【プレイヤー】
誰もいない…
(さっきまでヘカテーと舌戦を繰り広げていたヒルダとジェリルの姿がどこにもいない。)
【プレイヤー】
どこに行ったんだ?ヘカテーは何をしたんだ…あ、体もまた動いてるようだ…
【プレイヤー】
あれ?
(いつ来たのか試練の扉の近くにいたイルファンが姿を現せる。)
【プレイヤー】
イルファンさん。
イルファン
イルファン
ヘカテー様は「一旦」下がった。
【プレイヤー】
(一旦?)
イルファン
驚くんだな。ああ。一旦だ。
【プレイヤー】
イルファン
俺にヘカテー様の意思はわからないのだが、君にもう一度チャンスを与えるようだ…
【プレイヤー】
チャンス?
イルファン
残りの試練に挑戦してみてくれ。大地の試練はまだ残ってるから。
【プレイヤー】
急に現れて殺そうとして…、チャンスですか?
イルファン
こういうチャンスはなかなか訪れないだ。感謝するがよい。
【プレイヤー】
【プレイヤー】
(これをチャンスだと思うべきなのかな…バルバトスやレーテ、ヘカテーのような存在はそもそもの思考が違うから。)
イルファン
ここで少し休んで準備が終わったら試練の扉があるあの場所に戻ってきてくれ。
イルファン
神の力に押し潰れた後は動くまで少し時間が必要だから。
(話を終えたイルファンは試練の入り口があった場所へ戻る。)
【プレイヤー】
【プレイヤー】
まるで経験したかのような言い方だな。
【プレイヤー】
仕方ない。ここは居慣れた場所でもないからやるしかない…