(闇の沼に落ちて何もできなかった【プレイヤー】に誰かが叫ぶ。)
(濃い闇が少し散らかるとヒルダがヘカテーの手首を掴んでいるのが見える。)
ヘカテー
君がここまで来るなんて、意外だな、ヒルダ。
(ヘカテーが自分の手を掴んでいるヒルダを見て顔をしかめる。)
ヘカテー
誰の許可を得てここに来た?まして、主の名を呼ぶとは…
【プレイヤー】
(ヒルダは普通に動いてる?私はいまだに足が動かないのに…)
ヘカテー
君も気づいているはずだ。今の君の行動が高慢な判断だったということを。
ヘカテー
ここまで来るのに覚悟が必要だっただろうに。たかがそういう理由で…
ヘカテー
ヒルダ、ここは私の世界、エリシアだ。ここで君に何ができると思ってるんだ?
ヘカテー
ガイアとセレスに愛されたあの子、あの子が大事にしている必滅者がここで死ぬのは私の意思だ。
ヘカテー
魔女になった君もここで死ねると知っていながら…
ヒルダ
神様が知ってるのは一つのみで、二つは知らないのね…
夜を追う者達のように私の運命を作ったのはあなた。けれど…
ヒルダ
ウロボロスが現れたらあなたが求める世界は…
ヘカテー
取引をする気か?取引とは何か知らないようだな。だが、それを教える前に…
(ヘカテーが静かに一点を見つめると、闇の中で隠れて見えなかった道が現れる。そしてその隙間から一人の少年の姿が見える。)
ジェリル
これは困ったな…黒い月の神と対面するなんて。
(ジェリルが頬っぺたを掻きながらゆっくり歩いて来る。)
ジェリル
【プレイヤー】、さっきの話は忘れたのか?こっちはこっちでやることがある。
(ジェリルが平然とヘカテーを通り過ぎて【プレイヤー】に近づいて状態を確認する。)
ジェリル
恐怖に怯えて動くことさえできない冒険者は久しぶりだな。
ハハ。助けてやってもいいが難しそうだな。
ジェリル
ヒルダ、久しぶり。怯える必要はないんだよ。すぐ連れて行くから待ってろよな。
(その時、ヘカテーの足元から黒い蔓が浮き上がって猛スピードでジェリルに向かって飛んでいく。)
(だが、その場で獣の咆哮が鳴り響いて近づいていた黒い蔓が止まる。そして干乾びて影の中に姿を消す。)
ジェリル
黒い月の神様。俺を舐めすぎてるんじゃないの?
ジェリル
世界が危険に陥った時、無力に閉じ込められたくせに…
黒い月の神様もレーテのように高慢で情けないのか。いつまでそうしてるつもりだ?
(状況を見ていたヒルダの足の力が抜けてそのまま座り込む。)
(ヘカテーが苦しむヒルダの姿から何かに気づいたように微笑む。)
ヘカテー
なるほど。どうして君が行きたいと言ったのかやっとわかった。
ヘカテー
【プレイヤー】、君に真実を教えてあげよう。君とヒルダは…
(ヒルダが大きな声で叫ぶとみんながいる場所が少しずつ揺れ始める。)
(先ほどまでなかった緑色の槍がヒルダの手から離れてヘカテーの首に向かう。)
ヘカテー
黒い月の力で動く存在がどこまで逆らうつもりだ?!
(ヘカテーの怒りで溢れる声と共に再び世界が影で包まれる。先ほどまで目の前にあったすべてを消したかのように。)