クロリス
ゼフィ、今まで大変だったのね。そんなことも知らずに私は、私は…
(クロリスが頭を上げて黄昏の聖堂の天上にある尖塔を見つめる。)
クロリス
あの上に誰かいた。魔女は消えたのに、一体誰が…
まって、どこかで感じたことのある魔力だ。まさか、魔法庁?
(ゼフィロスが警戒するように周りを見渡すとクロリスが静かに頷く。)
クロリス
学園に帰る前に寄りたい場所を思い出したんだけど、一緒に行く?
いや、一人で行ってくる。あれ…
(ゼフィロスとクロリスが話を終えて水晶月の森の方向に足を運ぶ。)
(しばらくして、聖堂の尖塔の裏に身を隠していた少年が耳を動かしながら歩いて来る。)
ノーネーム
あの魔法使い、久しぶりだな。それより魔女は終わったのか?
ノーネーム
ここまで来たのに、魔女に会えないなんて。
イライラするな…なんだか他の魔女が邪魔しそうな気がしてたんだよ。
(ノーネームがマッドゴーレムリカリアの名前を呼ぶも、何の反応もない。)
ノーネーム
こんなに近くにいたのに、気づかないなんて。誰だ?俺のリカリアを…
(ノーネームがリカリアを捕まえたまま眼鏡をかけ直す一人の男に気付く。)
バルバトス
久しぶりです。名のない少年。このゴーレムも久しぶりに会うと嬉しいものですね。
ノーネーム
意外だね、大公。ここにまで来るなんて。
ノーネーム
分かってて聞いてるよね?大公は俺がどんな目に遭ったのか全部知ってるじゃん。
ノーネーム
は、挨拶ね。知っての通り俺は元気じゃないさ。
ノーネーム
オルカリウムでダサい冒険者とちびっ子に会わなかったら…
あの力を手に逃げることができたのに。そして死んで生き返ることもなかっただろうに。
バルバトス
名のない少年よ。今なんと言いましたか?もう一度話してもらえますか?
(バルバトスが驚くと、制御が解けたリカリアがノーネームの近くに移動する。)
ノーネーム
聞こえなかったのか?死んで生き返ったんだよ。
それで魔女を殺しに来たんだが、無駄足だったな。
バルバトス
なるほど、そういうことだったのですね。
バルバトス
僕がこの世界にかかっている影に気付かないくらいゆっくりと浸透してきたのですね。
バルバトス
それにこの少年まで生き返してくださった。
バルバトス
やはり黒い月でここを見ていたのでしょうか…
ノーネーム
大公、なにを一人でしゃべってんだ?誰に話してんだ?
バルバトス
少年を必要として生と死の間から取り出した方です。僕と似ているようで違う…
バルバトス
いつかは訪ねるべき場所ですが、少し早いですね。
魔族という殻を脱ぎ捨てて行けばよかったのですが。
バルバトス
あなたの計画はもうずれてしまいましたね。僕に付いて来るのはどうでしょうか?
ノーネーム
あの、あの方さ。あの方に会ったら何が変わるの?
バルバトス
もしかしたらあそこにあなたの役目もあるかもしれませんね。行きましょう。
(ノーネームの質問にバルバトスが興味深げな顔をする。)
バルバトス
銀貨を投げて決めましょうか?さあ、見てください。
悪魔の角が描いてある方が表です。
バルバトス
表が出たら付いてきていただきましょう…
(バルバトスが嘲笑を浮かべたまま空に銀貨を投げる。)
バルバトス
光が消えた■■■にはいかないということで…
(バルバトスの手の中にキラキラ光る銀貨が流れ込む。)
バルバトス
あなたへの借りは、ここで死をもって返しましょう。