(エル・ラルサが疲弊した冒険者と、その冒険者によって傷つけられた翼を見つめる。)
エル・ラルサ
お前が十分強いということは認めよう。
エル・ラルサ
愚かな人間よ…まだ抗うというのか。たかが神の道具に過ぎぬ存在だというのに…
【プレイヤー】
…?まさか…あなたは神を憎んでいるのですか?
エル・ラルサ
…神を憎んでいるわけではない。私は神の意志に従って行動しているだけだ。
だが…ああ、実はそれはどうでも良いのかもしれんな…
エル・ラルサ
私がここにいる理由はそれだけなのだから。
【プレイヤー】
(時空間ネットワークで確認したデータの内容が…)
エル・ラルサ
未来を見てきたかのような言い方をするじゃないか…だが、もう終わりにしよう。
(エル・ラルサの言葉と共に、空間に散らばった全ての光が【プレイヤー】に収束する。)
(慈愛に満ちたその名を呼ぶと、光は巨大な槍へと変わり【プレイヤー】に飛んでいく。)
(その瞬間、閉じた目からでもその力が感じられるほどの大きな光が近づく。
そして、何かが爆発したような音が聞こえる。)
(ゆっくり目を開けた【プレイヤー】の視界が眩しい光で溢れる。そして空の上では、何かに防がれて弾けた光の槍が見える。)
エル・ラルサ
光を包む…闇夜の…月?なぜここに月が…
(エル・ラルサが空に弾けた光の槍を握り、【プレイヤー】の下へと疾走する。)
(全ての力を込めたエル・ラルサの攻撃が【プレイヤー】に向かった瞬間、先ほどとは比べられないほどの強い光が爆発しながらオルカリウムの全てを揺らす。)
(エル・ラルサが諦めたようにその場に座り込む。そして精霊の切り株一帯を包み込むように溢れていた光が消えた。)
(そこには血を流して立ち尽くすひとりの女性がいた。)
【プレイヤー】
イ…リス?イリスがどうしてここに…?
(無理やり笑っているが、肩を貫く光の槍のせいで痛みを隠せていない。)
【プレイヤー】
イリスはいつもそうやって…本当は大丈夫じゃないくせに!
イリス
何とか間に合いました…もし間に合わなかったらどうなっていたことか…
(エル・ラルサの光の槍が消失し、イリスの肩から流れていた血が止まる。)
イリス
後悔したくなくてここまで来てしまいました。
イリス
私が助けた【プレイヤー】の未来はこれからも続きます。そして…
(イリスが力なく座り込むエル・ラルサの名を呼びながら手を差し出す。)
エル・ラルサ
私があなたを傷つければどうなるのかを知っていて、なおここに来たのですね。
エル・ラルサ
でなければあの人間を助けられないから…
エル・ラルサ
私にあなたを憎む資格などありません。
エル・ラルサ
私はオルカ様の意志に従い、この場所と精霊達を守りたかっただけ…
エル・ラルサ
ですが、それが女神様の意志とは相反することとなったようです。
エル・ラルサ
私の選択に後悔はありません。ですがこのまま消えるのは残念です…
(エル・ラルサが寂しい顔を見せると、彼の身体が少しずつ霞み始める。)
エル・ラルサ
神の意志に背いた精霊、エル・ラルサ。
摂理に反することを犯してしまった対価、喜んで受け入れます。
エル・ラルサ
…ガイア様にもよろしくお伝えください。
(精霊から光がゆっくりと消えてゆく…まるで最初からこの世界に存在しかなったように…)
(さっきまで何かがいたような場所は、何だか周囲よりも暗く感じる。)
イリス
セレス様…セレス様もこのような選択をされたのでしょう?
(寂しく笑っていたイリスの顔が突然真っ青になる。)
(足の力が抜けたのか、イリスがそのまま座り込む。そして意識を失って倒れた。)
(冒険者がイリスに近づこうとした瞬間、地面が揺れて割れ始める。)
【プレイヤー】
生命のエンテレケが消えた時と同じだ…早くイリスを助けないと!
(虚空から物凄いスピードで飛んで来た2人の精霊が【プレイヤー】を制止する。)
ハルモニア
イリス様は私達がお連れします。もう時間がありません。
ガイス
急いであの子がいる場所に行け。じゃないと間に合わないぞ。
ハルモニア
あそこから外に出ることができます。急いでください!
(ハルモニアとガイスが倒れたイリスに近づくと、謎の力が冒険者の背中を押した。そしてイリスの姿が徐々に遠くなり消えてゆく。)
【プレイヤー】
心配しないでって言われたから、きっと大丈夫さ…
【プレイヤー】
イリスは私の未来は続くと言っていた…でも、もしイリスが倒れてしまったら…
【プレイヤー】
本当にあの選択への対価だけだったのだろうか…