シナリオクエスト

オルカリウムの影

(外へと流れる風を追いかけて光が見える場所に走り続けた結果、二人はなんとか外に出ることができた。)
【プレイヤー】
ふぅ…
ナーシャ
ハア…ハア…
【プレイヤー】
…外に出たのはいいけど、未だに生命のエンテレケの扉は残ってるのですね。ナーシャ、大丈夫ですか?
ナーシャ
ハア、ハア…私は大丈夫です。
(ナーシャは必死に息を整えながら大丈夫という顔をするが、さすがに少し苦しそうだ。)
ナーシャ
マッドリン、私は大丈夫よ。ほら、ね。大丈夫でしょ?
ナーシャ
【プレイヤー】
ナーシャ…この中で起きたことは…
ナーシャ
冒険者さんはこういうことをたくさん経験してきたんですよね?
【プレイヤー】
何回か経験しました。ですが、たくさんの人たちに助けてもらって乗り越えられました。
ナーシャ
…私にもできますかね?
【プレイヤー】
きっとできますよ。
ナーシャ
冒険者さん…私は…いったい何者なのでしょうか。
【プレイヤー】
…ミノス様もナーシャを一族の子と呼んでいましたし、メディア様もあなたのことを知っているようです。
【プレイヤー】
カーリー族も精霊と関連があるみたいですが…
ナーシャ
精霊達の話では…エル・ラルサは私のことを何か誤解しているみたいです。
ナーシャ
それと私は愛されて産まれたのだと言ってくれました。
ナーシャ
ですが、ノーネームは私とは違う…
【プレイヤー】
ノーネームについては私の方で調べてみます。ナーシャは自分のことだけを考えてください。
ナーシャ
はい…
【プレイヤー】
ところで精霊達はどんな話をしてくれたのですか?
ナーシャ
エンテレケの破片を握った瞬間から声が鮮明に聞こえるようになったのですが…
ナーシャ
え?
【プレイヤー】
ナーシャ、どうしました?
ナーシャ
エル・ラルサは生命のエンテレケを開けたのはノーネームだと誤解しているようです。
ナーシャ
なんで管理者と言われている精霊がこの事実を知らないのでしょうか。
ナーシャ
エンテレケの破片を私に任せた理由は、
この場所のためなのだと精霊達は言っていました。
【プレイヤー】
ふむ…
ナーシャ
冒険者さん?
【プレイヤー】
もしかしたら…ですけど…
【プレイヤー】
(ナーシャに人間に害を与えようとした精霊の話を聞かせる。)
ナーシャ
エル・ラルサが汚染されているかもしれないということですか?
【プレイヤー】
確かではありません…とりあえずエル・ラルサにもう一度会ってみます。
ナーシャ
危険なのではないですか?
【プレイヤー】
エル・ラルサのように強い精霊が汚染されているのなら放っておくことはできません。イリスにも悪い影響があるかもしれませんし…
ナーシャ
それでも…あ…
【プレイヤー】
ナーシャ、どうしました?
ナーシャ
また精霊の声が聞こえます。これは…う、ううう…うっ…
(ナージャが耳を動かしながら精霊の声を聞いている。そして突然苦しみ始める。)
【プレイヤー】
ナーシャ、しっかりしてください!
ナーシャ
エル・ラルサの声が…う…
(マッドリンが飛び上がって両腕でナーシャの耳を塞ぐ。)
ナーシャ
マッドリン、ありがとう…
【プレイヤー】
大丈夫ですか?
ナーシャ
冒険者さん…エル・ラルサからの伝言です。
ナーシャ
ひとりで[精霊の切り株]まで来いと…
【プレイヤー】
これはもしかしたらチャンスかもしれませんね。
エル・ラルサがそこで待っているのなら好都合です。
ナーシャ
冒険者さん、私も一緒に行きます。
【プレイヤー】
危険ですよ!エル・ラルサが何を考えているのかもわからないですし。
【プレイヤー】
ここは私に任せてください。
ナーシャ
はい…
【プレイヤー】
…今も精霊の声が聞こえるのですか?
ナーシャ
今は静かですが、私が声をかければ答えてくれるかもしれません。
【プレイヤー】
では、フェタがまだオルカリウムにいるのか聞いてもらえませんか?
ナーシャ
…まだキャンプにいるみたいです。
【プレイヤー】
そうですか。ではナーシャ、もし私が戻って来なかったらキャンプに行ってください。
【プレイヤー】
魔法庁の人達も何か考えがあったからあの場所にキャンプを設置したんだと思います。
それにフェタは実力のある魔法使いですから…
ナーシャ
冒険者さん…
【プレイヤー】
私のことは心配しないでください。
今までうまく乗り越えて来たのですから、今回もきっとなんとかなると思います。
ナーシャ
ナーシャ
わかりました。気をつけて行ってきてくださいね。
【プレイヤー】
ええ。マッドリン、ナーシャをよろしく頼むよ。
(マッドリンがわかったと言ったかのように動くと、冒険者が急いで精霊の切り株がある方向へと走って行く。)
ナーシャ
冒険者さん…
ナーシャ
ナーシャ
マッドリン…もしかしてあなたも精霊なの?

(緑の精霊の翼が付いている扉を開くと、視界に映り込む風景が変わっていく。)
(暗い空へと向かって育つ木々と、その下に綺麗な水が流れる見慣れない場所。だが、オルカリウムとは違って生気が一切感じられない。)
【プレイヤー】
ここが精霊の切り株…木は切られて残ってるものはなさそうだな…
【プレイヤー】
どうして植物が全部死んでいるように見えるのだろう…オルカリウムはあんなにも美しいのに。
【プレイヤー】
イリスはどう思う?
【プレイヤー】
【プレイヤー】
(こうやって独り言を言ってると一回くらいは答えてくれそうなのにな。)
【プレイヤー】
(ここにはイリスの力が届かないってことなのかな…?)
エル・ラルサ
女神からの答えはないみたいだな。
(葉がひとつも残ってない古木の間からエル・ラルサがゆっくりと歩いて来る。)
【プレイヤー】
エル・ラルサ…
エル・ラルサ
つまり、女神にはまだ見えていない場所ということだな。
【プレイヤー】
エル・ラルサ
女神を責めるつもりはない。
エル・ラルサ
古代神が少なかったこの星のために神となったのだから。
【プレイヤー】
ならば、あなたが計画していることをやめてもらえませんか?
エル・ラルサ
まるで私が何をしようとしてるのかわかってるような言い方じゃないか。
【プレイヤー】
本当に汚染されてしまったのですか?
エル・ラルサ
汚染された、か…そのような脆弱な者たちと一緒にされては困る。
【プレイヤー】
では、一体どうして…
エル・ラルサ
私は精霊だ。目覚めた瞬間から神と生命のために生きる存在…
私は私の使命をやり遂げなければならない。
この場所を守り、生き返らせなければならない。それが私の使命…
エル・ラルサ
たとえ神の恩寵を受けた存在だとしても…たとえ神の意志でここにいるのだとしても…
エル・ラルサ
この場所で起きたお前たちの罪を問わねばならない。これは女神さえも手を出せない私だけの使命…
エル・ラルサ
光の審判だ。
【プレイヤー】
エル・ラルサ…
(冒険者が武器を構えた瞬間、エル・ラルサが光球を爆発させてその動きを止める。)
【プレイヤー】
うっ…
エル・ラルサ
今お前が私を攻撃すれば…精霊の木は皆死んでしまうだろう。
エル・ラルサ
そうなれば、これ以上ここから精霊が生まれることはない…
エル・ラルサ
エル・ラルサ
精霊の切り株の奥で待つ…そこまで来るがいい。
エル・ラルサ
もしお前が時間内に私のところまでたどり着かなければ、
この場所を中心とした一帯にいる全ての人間が死ぬことになる。
【プレイヤー】
な…なんですって?
エル・ラルサ
お前の覚悟を見せてみろ。
エル・ラルサ
もちろん、そこまでの道のりは決して簡単なものではない。この場所に残る者たちが私の使命に力を貸してくれるだろうからな。
(エル・ラルサはその言葉だけを残して姿を消した。)
【プレイヤー】
【プレイヤー】
エル・ラルサはどうしてこんなことを…
【プレイヤー】
…とにかく止めなければ。急ごう…

(巨大な木の痕跡が残る場所でエル・ラルサが冒険者を待っている。)
エル・ラルサ
よくここまでたどり着いた。
【プレイヤー】
エル・ラルサ、私の話を聞いてください。この戦いに何の意味があるというんですか?
エル・ラルサ
ここまで来て私を説得しようとするとは…
神の恩寵を受けた人間とはいえ、なんと傲慢なことか。
エル・ラルサ
全てがお前の思う通りに進むとでも思っているのか?
たとえ何かを望もうと、すべてが叶うことなどないというのに。
エル・ラルサ
私も…人間であるお前も経験があるはずだ。
求めてなどいない苦痛と破滅の記憶を…
【プレイヤー】
どういうことですか?
エル・ラルサ
まだわからないのか…
エル・ラルサ
エル・ラルサ
黄昏が終わり、魔王と呼ばれていた存在によって大陸の光が消えかけた時代…
幸運にもその光は消えなかった。
エル・ラルサ
セレス様とガイア様…そして神たちが守ったのは生命だけではなく、
光の根源も含まれていた。
【プレイヤー】
(光の根源…)
エル・ラルサ
世界を照らす原初の光の力は生命だけではなく、精霊を生みだした。
そして堕落した闇に飲み込まれないようにしたのだ。
エル・ラルサ
私はここでオルカ様を待ちながら光を守り続けた…
エル・ラルサ
この場所ではたくさんの生命達が力を貸してくれた。
みな知性があり、神の従者たちだった。
エル・ラルサ
私は長い間彼らを見守り続けた。まるでガイア様のように…
だが、彼らは争いを始めた。
エル・ラルサ
プレイオスが神達の欲によって分かたれたように、
彼らは空に混沌を溢れさせようとするかのように戦い続けた。
【プレイヤー】
(混沌の空…)
エル・ラルサ
一瞬で獣人の領域が消え、シルバリアと呼ばれる帝国の兵士が
プレイオスの全てを飲み込んだ。
【プレイヤー】
エル・ラルサ
そして生命を守るために作られたゴーレムがこの場所を破壊したのだ。
エル・ラルサ
皆殺された。光の根源があることを知っている何者かの計画だったのだろう。
エル・ラルサ
だが、彼らは失敗した。
エル・ラルサ
私が永遠に抜け出せない場所へと封じ込めたのだ。
そうして彼らは死にゆく場所の養分となった…
【プレイヤー】
ま、待ってください。それはどういう…
エル・ラルサ
精霊は人間の世界には介入しない。だが…人間が一線を越えた場合は話が違う。
エル・ラルサ
エンテレケの破片で光の根源に近づいたクリードの子…
神の恩寵を受けた者…2人で十分だ。
【プレイヤー】
まさか…
エル・ラルサ
エル・ラルサはオルカ様の意志に従ってオルカリウムを守るのが使命…
(エル・ラルサの周りにあった光球が収束し始める。)
(光が大きな槍へと変わり、冒険者を襲う。)
エル・ラルサ
女神よ…今あなたの冒険者をこの場所にて滅しよう。

エル・ラルサ
不快だ…
(エル・ラルサが疲弊した冒険者と、その冒険者によって傷つけられた翼を見つめる。)
エル・ラルサ
お前が十分強いということは認めよう。
【プレイヤー】
ハア、ハア…まだ終わってません。
エル・ラルサ
愚かな人間よ…まだ抗うというのか。たかが神の道具に過ぎぬ存在だというのに…
(ふとエル・ラルサが悲しい表情を見せる。)
【プレイヤー】
…?まさか…あなたは神を憎んでいるのですか?
エル・ラルサ
…神を憎んでいるわけではない。私は神の意志に従って行動しているだけだ。
だが…ああ、実はそれはどうでも良いのかもしれんな…
エル・ラルサ
私がここにいる理由はそれだけなのだから。
【プレイヤー】
まって…この状況は…
【プレイヤー】
(時空間ネットワークで確認したデータの内容が…)
【プレイヤー】
だ、だめだ…このままでは…
エル・ラルサ
未来を見てきたかのような言い方をするじゃないか…だが、もう終わりにしよう。
(エル・ラルサの言葉と共に、空間に散らばった全ての光が【プレイヤー】に収束する。)
【プレイヤー】
うっ、動け…な…い…
エル・ラルサ
オルカの光よ…
(慈愛に満ちたその名を呼ぶと、光は巨大な槍へと変わり【プレイヤー】に飛んでいく。)
【プレイヤー】
(このまま…死ぬのか…?)
(死への恐怖に抗えず、冒険者が目を閉じる。)
(その瞬間、閉じた目からでもその力が感じられるほどの大きな光が近づく。
そして、何かが爆発したような音が聞こえる。)
ゴオオオオオオオオ!
(ゆっくり目を開けた【プレイヤー】の視界が眩しい光で溢れる。そして空の上では、何かに防がれて弾けた光の槍が見える。)
エル・ラルサ
光を包む…闇夜の…月?なぜここに月が…
エル・ラルサ
エル・ラルサ
おお…女神よ…お許しください。
(エル・ラルサが空に弾けた光の槍を握り、【プレイヤー】の下へと疾走する。)
エル・ラルサ
死ぬがいい、神の冒険者よ!
(全ての力を込めたエル・ラルサの攻撃が【プレイヤー】に向かった瞬間、先ほどとは比べられないほどの強い光が爆発しながらオルカリウムの全てを揺らす。)
エル・ラルサ
エル・ラルサ
女神よ…
(エル・ラルサが諦めたようにその場に座り込む。そして精霊の切り株一帯を包み込むように溢れていた光が消えた。)
(そこには血を流して立ち尽くすひとりの女性がいた。)
【プレイヤー】
【プレイヤー】
イ…リス?イリスがどうしてここに…?
(無理やり笑っているが、肩を貫く光の槍のせいで痛みを隠せていない。)
イリス
…間に合ってよかった。
【プレイヤー】
イリス、イリス!大丈夫?!
イリス
私は大丈夫です…。
イリス
私の怪我は…すぐに消えますから。
【プレイヤー】
イリスはいつもそうやって…本当は大丈夫じゃないくせに!
イリス
【プレイヤー】
イリス…
イリス
何とか間に合いました…もし間に合わなかったらどうなっていたことか…
(エル・ラルサの光の槍が消失し、イリスの肩から流れていた血が止まる。)
イリス
後悔したくなくてここまで来てしまいました。
イリス
これは全て私の意志によるものです。
【プレイヤー】
…うん。
イリス
私が助けた【プレイヤー】の未来はこれからも続きます。そして…
イリス
エル・ラルサ…
(イリスが力なく座り込むエル・ラルサの名を呼びながら手を差し出す。)
イリス
ごめんなさい…
エル・ラルサ
私があなたを傷つければどうなるのかを知っていて、なおここに来たのですね。
エル・ラルサ
でなければあの人間を助けられないから…
(エル・ラルサがイリスの手を握って立ち上がる。)
イリス
私を憎んでください。
エル・ラルサ
私にあなたを憎む資格などありません。
エル・ラルサ
私はオルカ様の意志に従い、この場所と精霊達を守りたかっただけ…
エル・ラルサ
ですが、それが女神様の意志とは相反することとなったようです。
エル・ラルサ
エル・ラルサ
私の選択に後悔はありません。ですがこのまま消えるのは残念です…
エル・ラルサ
オルカ様とまた…お会いしたかった…
(エル・ラルサが寂しい顔を見せると、彼の身体が少しずつ霞み始める。)
【プレイヤー】
エル・ラルサ…?
エル・ラルサ
神の意志に背いた精霊、エル・ラルサ。
摂理に反することを犯してしまった対価、喜んで受け入れます。
イリス
エル・ラルサ
…ガイア様にもよろしくお伝えください。
(精霊から光がゆっくりと消えてゆく…まるで最初からこの世界に存在しかなったように…)
(さっきまで何かがいたような場所は、何だか周囲よりも暗く感じる。)
【プレイヤー】
エル・ラルサ…
イリス
イリス
セレス様…セレス様もこのような選択をされたのでしょう?
【プレイヤー】
イリス?イリス!
(寂しく笑っていたイリスの顔が突然真っ青になる。)
イリス
イリス
【プレイヤー】…私は…後悔していま…
(足の力が抜けたのか、イリスがそのまま座り込む。そして意識を失って倒れた。)
【プレイヤー】
イリス…まってて!すぐそっちに…
【プレイヤー】
…!
(冒険者がイリスに近づこうとした瞬間、地面が揺れて割れ始める。)
【プレイヤー】
生命のエンテレケが消えた時と同じだ…早くイリスを助けないと!
【プレイヤー】
(虚空から物凄いスピードで飛んで来た2人の精霊が【プレイヤー】を制止する。)
【プレイヤー】
ハルモニア?ガイス?
ガイス
そこまでだ。
ハルモニア
イリス様は私達がお連れします。もう時間がありません。
【プレイヤー】
時間がない?
ガイス
急いであの子がいる場所に行け。じゃないと間に合わないぞ。
ハルモニア
急いでください!
【プレイヤー】
イリスは…
ガイス
女神様は大丈夫だ。私達を信じろ。
ハルモニア
あそこから外に出ることができます。急いでください!
(ハルモニアとガイスが倒れたイリスに近づくと、謎の力が冒険者の背中を押した。そしてイリスの姿が徐々に遠くなり消えてゆく。)
【プレイヤー】
【プレイヤー】
イリス…大丈夫だよね…
【プレイヤー】
心配しないでって言われたから、きっと大丈夫さ…
【プレイヤー】
イリスは私の未来は続くと言っていた…でも、もしイリスが倒れてしまったら…
【プレイヤー】
エル・ラルサは…
【プレイヤー】
【プレイヤー】
本当にあの選択への対価だけだったのだろうか…