シナリオクエスト

ノーネームが求めるモノ

(さっき通った場所へと戻ると、ナーシャの耳がさらに忙しく動き出す。)
ナーシャ
うーん…
(【プレイヤー】には聞こえないが、ナーシャの顔には困惑の色が見える。)
【プレイヤー】
…大丈夫ですか?
ナーシャ
ええ、ちょっと頭が混乱しているだけです。
ナーシャ
(ナーシャが顔を上げてあちこち周りを見渡し始める。)
ナーシャ
色んな方向から音が聞こえるのですが、あのあたりから私を呼んでいるようです…
【プレイヤー】
ナーシャを呼んでるんですか?
ナーシャ
はい。
ナーシャ
あの、冒険者さん。
ナーシャ
先にあの場所に行ってみてもいいでしょうか。
【プレイヤー】
でも危ないですよ?
ナーシャ
ここにいても危ないのは一緒ですから。
【プレイヤー】
(ナーシャをひとりで行かせるわけにはいかないし…)
【プレイヤー】
わかりました。一緒に行きましょう。
ナーシャ
マッドリンもいますし大丈夫ですよ。
(ナーシャの肩にいたマッドリンが返事をするように体を揺らす。)
【プレイヤー】
マッドリンが前より動くようになった気がしませんか?
ナーシャ
ですよね?
ミノス様からいただいた衣を着ると、
マッドリンの気持ちが前よりもわかるようになった気がするんです。
【プレイヤー】
ふふ…じゃあ、行きましょうか。
ナーシャ
はい!私が先に立ちますね。
(ナーシャをが動き始めて、冒険者がついて行こうとした瞬間、不吉な予感がし始める。)
【プレイヤー】
……?
【プレイヤー】
(この感じは…まるであの記録を見た時のような…)
ナーシャ
冒険者さん?どうかしましたか?
【プレイヤー】
…いえ、何でもありません。
【プレイヤー】
(落ち着いて行動しよう。早くノーネームを見つけなければ…)

ナーシャ
こんなところに扉が建てられていますね。以前は崖だったはずなのに…
【プレイヤー】
ふむ…
【プレイヤー】
(扉に精霊の翼のようなものがついてる。それに、あの中からは強い魔力を感じる。)
ナーシャ
ん?
ナーシャ
ナーシャ
どうして私を呼ぶの?私…私は…
(ナーシャが手を伸ばすと扉が揺れ始める。そして、中から強い風が吹き出してくる。)
【プレイヤー】
うっ…
【プレイヤー】
(なんて強烈な風だ…)
【プレイヤー】
…ナーシャ?
(風が収まり、冒険者が前を向くと、信じられない光景が目の前に広がった。扉の中から吹き出た風がナーシャを空へと舞い上げている。)
【プレイヤー】
ナーシャ…私の手を…
(冒険者が急いで手を伸ばしてナーシャの手を握ろうとした瞬間、風がそのままナーシャと冒険者を扉の中の世界へと吹き飛ばした。)

どん!
(瞬く間に風が消え、冒険者は地面へと落下した。)
【プレイヤー】
ううっ…
【プレイヤー】
あの風はいったい…あれ?ナーシャ?
(周りを確認してもナーシャの姿は見えない。)
【プレイヤー】
ナーシャ?ナーシャ…がいない。それにここは…
【プレイヤー】
(扉の中の世界はさっきまで明るい光で溢れていたオルカリウムとは全く異なる姿をしていた。)
(上から下へと伸びた柱は壊れ、地面には不吉な色をした壁がそびえたっている。)
【プレイヤー】
洞窟?いや…ここは…
【プレイヤー】
【プレイヤー】
……
誰かの声
二度と会いたくなかったというのに…またここが開かれてしまうとは…
【プレイヤー】
だ…誰だ?
(突然聞こえてきた声に周りを確認すると、金色の髪の青年がゆっくりと姿を現した。)
???
神自らが開かない以上、見ることすらできない場所が再び開いたということは…
ああ、私の勘違いか…期待していたというのに…
(青年の背中からは、冷たくそして鋭い翼が生えている。周囲には光球が浮かび、周りを明るく灯している。)
【プレイヤー】
精霊…?
???
本来、神の恩寵を受けた者には挨拶くらいしなければならないのだろうが、
今は必要ないだろう。
なにせ、招かれざる客まで連れて来たのだからね…
???
私はオルカの従者、エル・ラルサ。
【プレイヤー】
…エル・ラルサ?あ!エルアノール山脈であなたの声を聞いたことがあります。
エル・ラルサ
ほう、あれが未だに残っているとは驚きだ。
【プレイヤー】
何かご存じのようですね。ならば、私を助けてもらえませんか?
人を探しているんです。
エル・ラルサ
(エル・ラルサの顔が固くなり、長く大きな槍へと変化した光球が【プレイヤー】の横をかすめてゆく。)
【プレイヤー】
【プレイヤー】
な…何を…
エル・ラルサ
君の話を聞く気はない。
エル・ラルサ
だが、そのひとつだけ約束しよう。
エル・ラルサ
エル・ラルサ
この場を去れ。それが神の道具でしかない者へのせめてもの慈悲だ。
エル・ラルサ
だが、君がこの場を去らないというのならば話は変わる。
すでにオルカ様の許可は得ているのだからな…
【プレイヤー】
待ってください!私はナーシャを探さないと…
エル・ラルサ
魔女の不浄なオーラと精霊の力が混ざって生まれた者のことか…
エル・ラルサ
エル・ラルサ
封印した生命のエンテレケを侵すとは…なんと許しがたい行為…
(光球が閃光へと変わり、爆発する。)
【プレイヤー】
うっ、眩しい。
(閃光が収まると、エル・ラルサが「生命のエンテレケ」と呼んでいた場所の姿に戻った。)
【プレイヤー】
【プレイヤー】
消えた…
【プレイヤー】
混ざって生まれた者…ナーシャのことを言っていたのか…ん?
【プレイヤー】
これはノーネーム…あいつがここにいるのか?
【プレイヤー】
【プレイヤー】
ナーシャが危ない。急がないと。

(生命のエンテレケを彷徨っていると、いきなり轟音が聞こえて来る。)
ゴオオ、ゴオオオオオ!
【プレイヤー】
うっ、これは…?
ゴオオオオオ!
ノーネーム
精霊達がここだって言ってるのにどうしてないんだ?!
邪魔する悪魔達もみんな殺したというのに…
ノーネーム
リカリア!こんなもの全部壊してしまえ!
ゴオオオ!
(ノーネームの指示に従って、リカリアが目の前の柱と壁を破壊し始める。)
【プレイヤー】
ノーネーム!
ノーネーム
お前…どうやってここに入って来た?ここは精霊の力じゃないと…
ノーネーム
そうか…あの女か…
【プレイヤー】
ここにいたらナーシャもお前も危ない。早く出よう。
ノーネーム
…僕は出れない。
【プレイヤー】
ここを守る精霊が君たちを狙っているかもしれないんだ。
ノーネーム
あいつが僕を殺そうとしてるだと?…チッ。
【プレイヤー】
(エル・ラルサを知っている?)
ノーネーム
お前もあの精霊に会ったんだな…ならば仕方ない。
ノーネーム
ククッ、クククッ…
(ノーネームの目つきが冷たく変わる。)
ノーネーム
…邪魔するなよ、人間。
【プレイヤー】
待ってくれ、ナーシャが見つからないんだ。
ノーネーム
ノーネーム
目障りなんだよ…
ノーネーム
お前も…あの女も…
【プレイヤー】
ノーネーム、頼む…ナーシャを…
ノーネーム
…もういい。お前の話など聞く気はない。
ノーネーム
俺の邪魔はするな。
どん!
(巨大な音と共にリカリアが冒険者の前に立ちはだかる。)
ノーネーム
リカリア…
ノーネーム
その人間を殺せ…

(パーツと思われる破片が地面に落ち、リカリアの動きが明らかに遅くなる。)
【プレイヤー】
ハア、ハア…
【プレイヤー】
(何回かゴーレムと戦ったことはあるけど、リカリアはレベルが違う。でも、このまま倒れるわけにはいかない…)
【プレイヤー】
(ナーシャはどこにいるんだ?)
ノーネーム
しつこいやつだ。リカリア!さっさととどめを刺せ!
ノーネーム
…?
(ノーネームがよろけるリカリアを見つめる。)
【プレイヤー】
(ん?ゴーレムの動きがおかしい…)
ノーネーム
リカリア…?
ゴオオオオオオオオ!
(ノーネームがリカリアの状態を確認しようと近づいた瞬間、大きな爆発を起こしてノーネームと冒険者が吹き飛ばされる。)
【プレイヤー】
くっ…なんて爆発だ。
ノーネーム
リカリアがどうして僕を…
(目を覚ました冒険者とノーネームがリカリアを見ると、大きな柱と後ろにあった壁がリカリアの上へと積み重なった状態だった。)
ノーネーム
ノーネーム
リカ…リア?
【プレイヤー】
まさか…ノーネームを助けるために…
【プレイヤー】
(ナーシャを助けようとしたマッドリンの動きを考えると、リカリアが同じ行動をとったとしてもおかしくはないだろう。)
(倒れた瓦礫の間から、リカリアがゆっくりと浮き上がる。)
ノーネーム
チッ…今日はここまでだ。
ノーネーム
ナーシャ!!!!!
(ノーネームの叫びに合わせてリカリアが持っていた斧を遠くの壁へと投げつける。)
【プレイヤー】
ノーネーム!
【プレイヤー】
【プレイヤー】
な、なんだ?
(壁にぶつかると思ったリカリアの斧がピタリと虚空に止まる。そして、斧を止めていた存在達がゆっくりと見え始める。)
ノーネーム
あの女のせいで眠っていたゴーレムと精霊の卵が目覚める瞬間を見なければならないなんてな…
(いつの間にか現れたナーシャが【プレイヤー】の隣へと近づく。)
ナーシャ
冒険者さん、大丈夫ですか?
【プレイヤー】
私は大丈夫ですが…それよりもナーシャは今までどこにいたんですか?
いくら探しても見当たらなかったのに…
ナーシャ
この中に導いた風がこれがある場所へと私を連れて行ってくれたんです。
なんだか嫌な感じがしたのですが、なぜか私を呼んでいるようで…
ノーネーム
エンテレケの力が刻まれた破片…本来なら僕が手に入れるべきものだったのに…。
どうやらここの精霊達は僕よりお前の方を選んだらしい。
(ノーネームが諦めた顔でナーシャを見つめる。)
ナーシャ
ノーネーム。
ノーネーム
ノーネーム
だから二度とここには来るなと脅したのに…懲りずに人間を連れて来るとは…
これで全部終わりだ。
ナーシャ
ノーネーム…この力は何なの?あなたはこれを知ってるのよね?
ノーネーム
…ああ、こうなった以上話してやろう…
それはエル・ラルサの領域に残っている精霊の力。それがあれば死にかけた精霊を助けることができるんだ。
【プレイヤー】
エル・ラルサはオルカリウムを守る光の精霊です。
ナーシャ
まってください!その力を私がもらったということですか?
ノーネーム
ああ、そうだ。最高のプレゼントだろう?
今まさにその光の精霊が僕たちを必死に探してやがるのさ。殺すためにな!
ノーネーム
エル・ラルサの機嫌は最悪だろうな。
なにせ、眠っている間に魔法庁の人間達がオルカリウムをめちゃくちゃにしたんだからな。
ノーネーム
それなのに、その力を手に入れたのが魔法庁で
ゴーレムを目覚めさせたお前だと知ったらどうなるんだろうな?ハハハハ。
ノーネーム
気に入らないが…少しだけ愉快かもな…
ナーシャ
ノーネーム
…お前は知るべきだ。マッドゴーレムを目覚めさせて主になったことが、
決して祝福なんかじゃないってことをな。
(そう言ってノーネームが待機していたリカリアに乗りこむ。)
ノーネーム
お前とはもう二度と会いたくないな。
【プレイヤー】
どこに行くんだ?
ノーネーム
…プランBに移行する。
ノーネーム
ああ…その前に光の精霊様が気になっているだろう情報をひとつ教えてやろう。
ノーネーム
オルカは死んだ。古代神に殺されたのさ。
そしてその力の一部は人間達に…クハッ…
(突然巨大な光の矢が飛んできてノーネームの胸部を貫き、そのまま壁へと縫い留める。)
ナーシャ
…!
(主を失くして動きを止めたリカリアが動きを停止する。)
どん。
(その姿を見ていたかのように、生命のエンテレケを揺らすエル・ラルサの声が聞こえて来る。)
エル・ラルサの声
…なんてことだ。
(声が消えると、倒れたノーネームの前に光の精霊エル・ラルサが姿を現した。)
【プレイヤー】
エル・ラルサ…
ナーシャ
精霊達が言ってました。オルカリウムを守る光の精霊…エル・ラルサ…
【プレイヤー】
…ナーシャ、後ろに下がってください。エル・ラルサは他の精霊とは違います…
(エル・ラルサが警戒する冒険者とナーシャを虚しい顔で見つめる。)
エル・ラルサ
【プレイヤー】
(ヘイデンのように自分の力に酔ってるのか?)
エル・ラルサ
私はこの場所を守る精霊。やるべきことをやっただけ…
精霊が生まれし場所を破壊したことに対する光の審判を下しただけ。
エル・ラルサ
クリードの子よ。
ナーシャ
エル・ラルサ
お前が受け取ったその力が何なのかわかってるのか?
死にゆく精霊達に再び生命の息吹を吹き込む力だ。
ナーシャ
私はもらったわけじゃありません。ここにいる精霊達が私に任せると言ったのです。
ここは汚染されてしまったから、安全な場所にもっていってほしいと…
エル・ラルサ
不快だ…神ですらなく、たかが人間風情の言葉でこの私を謀ろうとするとは…
死にゆく精霊の生命を助けるなど容易くできることではないのだ!
【プレイヤー】
(謀るだって?どういうことだ?)
エル・ラルサ
ここが汚染されようがされまいが、その力はこの場所にこそふさわしい。
もうよい…管理者であるエル・ラルサの名の下にその力を返してもらおう。
エル・ラルサ
エル・ラルサ
神の恩寵を受ける者とエンテレケの力を奪った者をこの場所に永遠に封印してやろう。
神さえも近づけないようにしてな…
(冒険者とナーシャが何かを言う間もなく、嘲笑するエル・ラルサの姿が消えた。そしてその直後、地面が揺れて少しずつ割れ始める。)
ナーシャ
じ、地震?!
(割れた地面から黒い影が現れ、目の前にあるものをゆっくりと飲み込み始める。)
【プレイヤー】
地震じゃありません!ナーシャ、急いでここから離れましょう。
ナーシャ
ノーネームを連れて行かないと…すぐに治療をしなければ。
【プレイヤー】
急がないと永遠にここに閉じ込められてしまいます!このままでは…
(ナーシャが黒い影に飲み込まれれるノーネームとリカリアを見つめている。)
ナーシャ
【プレイヤー】
しっかりしてください、ナーシャ!
ナーシャ
…わかりました。私について来てください。精霊達があそこに行けば出口があると教えてくれたんです。
(ナーシャが【プレイヤー】の手を握る。そして飲み込むように追いかけて来る黒い影から逃げながら、微かな光が見える場所へと走って行く。)