シナリオクエスト

オルカリウムへの道

ナーシャ
だから、私じゃないんですって!
遊撃兵ハバティ
嘘つけ!その耳、手、それにマッドゴーレムまで連れてるじゃないか。
この手配書にもしっかり書いてあるぞ!
ナーシャ
その手配書にあるのは男の子でしょ?
遊撃兵ハバティ
だから何だ!獣人なんてどれも一緒だ…。
野蛮でどう猛で…人間を殺そうとする!
遊撃兵ハバティ
いいからおとなしくしろ!
ナーシャ
ちょっと!
ナーシャ
遊撃兵ハバティ
何を企んでるのかは知らんが大人しくするんだな。
俺だって殺したくはないんだ。
(ハバティの指示を受けた兵達がナーシャの元へ走って行く。)
ナーシャ
や、やめてください。あ!これ!これを見てください!
ナーシャ
皇室認証カードです。これで私の身分を保証できるはず…
(そう話すナーシャの手からハバティがカードを奪ってぐしゃぐしゃにした。)
遊撃兵ハバティ
獣人が皇室だと?カードの偽造までしたのか?
おい!さっさとこの獣人を捕まえろ!
(指示を受けた兵達がナーシャの腕を掴もうとした瞬間、肩にいたマッドリンが飛び出した。)
ナーシャ
マッド…リン?
遊撃兵ハバティ
何を…え?
(ナーシャを掴んでいた兵達が血を流しながら倒れた。)
遊撃兵ハバティ
な、なにが起きた!?
タロース
…愚かだな。帝国の兵士どもが。
遊撃兵ハバティ
タロース?獣人ごときが誇り高き帝国の兵士を愚かと言ったか?
タロース
獣人ごとき、ね。お前らも十分獣だよ。
そうだろ?帝国の“犬”共。
(バン!)
タロース
うっ…
遊撃兵ハバティ
獣人風情が…俺たちを舐めるなよ!
タロース
へえ…その小銃は形だけじゃあないらしい。
だが…俺を殺したいなら頭を狙うことだ。次があれば参考にすることだな。
(タロースが肩にめり込んだ銃弾を平然と取り出して言った。)
遊撃兵ハバティ
くっ…くるな!ぐぁああああ!
(タロースがハバティの首を絞めあげた。ハバティが苦悶の表情を見せるも、タロースは構わず嘲笑っている。)
タロース
おいおい、どうした誇り高き帝国の兵士。
……やっぱりさっきのセリフは訂正しよう。犬に失礼だからな。
【プレイヤー】
タロース、やめてください!ナーシャも怖がっています!
(タロースが【プレイヤー】の声が聞こえる方を見つめる。そこにいたナーシャの瞳と目が合うと溜息を吐く。)
タロース
ふぅ…
タロース
わかった、わかった。最初から適当に痛めつけて逃がしてやるつもりだったさ。
遊撃兵ハバティ
あ、あなたは…
(タロースが手を放すと、ハバティが苦しそうな表情で地面に横たわった。)
遊撃兵ハバティ
ゴホッゴホッ。
【プレイヤー】
ナーシャの身分は私が保証します。ですから、どうかこの場は収めてください。
遊撃兵ハバティ
…どうしてこの獣人の味方をするのですか?
タロース
…面倒だ。アレを使うか。
【プレイヤー】
タロース?
タロース
安心しろ、殺すわけじゃない。少し記憶を消すだけだ…
遊撃兵ハバティ
獣人ごときに我ら帝国人が屈するとは…
タロース
まだ言うか。お前のその根性だけは認めてやるよ。
タロース
このままじゃお前も俺も面倒なことに巻き込まれるだけだ。
帝国のやつらがすっ飛んでくるだろうからな。
【プレイヤー】
タロース
お前はどうだ?何か言いたいことでもあるか?
ナーシャ
何を言ってもどうせやるんでしょう?
タロース
ふっ…わかってるじゃねえか。じゃあ全員の同意は得たということで…
遊撃兵ハバティ
おい!お前ら…一体何を…
(タロースが杖で狼狽えるハバティの肩を叩いた。)
遊撃兵ハバティ
ひっ…
遊撃兵ハバティ
ぐぁああああ!!!
ナーシャ
ちょっと…?!
(ハバティが頭を抱えて叫び始め、それに驚いた鳥達が一斉に空へと飛び立った。)
(しばらくして、ハバティがその場に倒れた。ナーシャが急いで近づき、ハバティの状態を確認する。)
ナーシャ
ナーシャ
気を失っただけみたいです。
タロース
俺たちに関する記憶を全部忘れてもらわなきゃならなかったからな。
タロース
さてと…クノッソスの管理者としてお前たちを歓迎しよう。
今すぐ獣人王のところに向かってくれ。
元々は【プレイヤー】だけの予定だったが、一緒に行けば問題ないだろう。
タロース
…俺の仕事はここまでだ。
【プレイヤー】
あなたはなぜ私たちに力を貸してくれたのですか?
タロース
…そんなことよりも急いだほうがいいぜ。
いくらお前でも獣人王の怒りを買いたくはないだろう?
【プレイヤー】
…わかりました。一応、感謝を伝えておきます。ありがとう。
ナーシャ
…ありがとうございました。
タロース
ふっ…気にするな。
タロース
ああ…そうだ。
ナーシャ
タロース
お前の魔力が強くなればなるほど
そのマッドゴーレムをコントロールできるようになるだろう。
お前の意思をマッドゴーレムが理解してくれるようになるはずだ。
ナーシャ
あ、はい…
ナーシャ
(あの人が現れた時…私から離れようとしていたマッドリンの動きが止まったような…)
【プレイヤー】
(ナーシャも気づいたのかな?タロースが来たことでマッドリンが止まったことに…)
【プレイヤー】
…ナーシャ、行きましょう。
ナーシャ
はい…
(冒険者とナーシャが離れたのを確認したタロースが小屋を確認すると、
何やら怪しい書類が目に入った。)
タロース
これは魔族の…兵達がいつもよりも興奮していたのはこのせいか。
大公がこんなことをするはずもないと思っていたが…ふむ。
(タロースが殺気に気付いてその場を飛びのく。
まだ意識の残っているハバティが震える手に小銃を持っている。)
遊撃兵ハバティ
タ…タロース、殺して…やる…
タロース
…バカが。大人しく眠っていれば見逃してやれたってのに。
ダフネに教えてもらった方法は普通の人間には通じづらいのか?
タロース
仕方あるまい…ならば…
(その瞬間、タロースの背後から巨大な影が巻き起こり、そのままハバティを飲み込んでしまった。)

(アクロの墓に入った瞬間、ナーシャが足を止めて後ろを振り向く。)
ナーシャ
…?
【プレイヤー】
ナーシャ?どうしましたか?
ナーシャ
いえ、なんでもありません。あそこから変な音が聞こえた気がして…
何も聞こえませんでしたか?
【プレイヤー】
少し変な感じはしますが…音は聞こえませんでした。
ナーシャ
何もない…ですよね?
【プレイヤー】
【プレイヤー】
…何もないはずです。
ナーシャ
はい…
ナーシャ
あの…冒険者さん。私、聞きたいことがあるんです。
【プレイヤー】
何ですか?
ナーシャ
獣人王とはどんな方なのでしょうか?
【プレイヤー】
私もそれほど詳しくはありませんが、知っていることを簡単に説明しますね。
【プレイヤー】
彼は、シルバリア帝国が獣人の領土クリードと紛争があった時の君主だったそうです。
【プレイヤー】
正確なことはわかりませんが、その紛争でアクロの墓に閉じ込められ、
数百年もの間、眠ったままだったようです。
【プレイヤー】
そして…
【プレイヤー】
(クノッソスで起きたことを簡単にナーシャに説明する。)
ナーシャ
ナーシャ
クノッソスでそんなことがあったなんて…全然知りませんでした。
【プレイヤー】
とにかく会って話してみましょう。何か答えがわかるかもしれません。
ですが、十分気をつけてくださいね。
【プレイヤー】
獣人王のところまでの道は少し険しいですから。
ナーシャ
はい。

ミノス
お前を待っていたぞ。
【プレイヤー】
急に攻撃してくるからびっくりしました…毎回のことですが…
ミノス
すまぬ。気配が以前と変わっていたのでな。
…今日は同行者がいるようだな。よく来てくれた、一族の子よ。
ナーシャ
私のこと…ですか?
(ミノスが遠くの陰に隠れていたナーシャを呼ぶ。)
ミノス
そうだ。さあ、手を伸ばしてみろ。
ナーシャ
は、はい…
(ナーシャが手を伸ばすと、肩にいたマッドリンがゆっくりとミノスの方へと向かってゆく。)
ミノス
やはり…
ナーシャ
マッドリンはどうしてあの方のところに行くんだろう?
(ミノスに近づいていったマッドゴーレムが振り向き、じっとナーシャを見つめる。)
ミノス
このゴーレムは「マッドリン」という名なのか?
ナーシャ
はい…
ミノス
お前の声に反応するということは、このゴーレムが選んだ者だということなのだろう。
そして、それこそが我々と同じ一族であるという証拠でもある。
ナーシャ
我々と同じ一族…ですが、私はあなたたちとは少し姿が違うようですが…手とか…
ミノス
それは関係がない。命を宿したゴーレムの主として選ばれた者こそ我々と同じ一族であるただひとつの証拠なのだ。
…お前は主の元に戻るがいい。
(ミノスの言葉によって、マッドリンが再びナーシャの傍へと戻ってゆく。)
ミノス
【プレイヤー】
ミノスさん?
ミノス
…昔の記憶を…思い出していた。
ミノス
【プレイヤー】、お前がこの子を連れて来たということは、おそらく何かが起きているのだろう。
まずはその話を私に聞かせてくれ。
ミノス
そして…お前の名を教えてもらえるだろうか。
ナーシャ
ナーシャ…と言います。
ミノス
「高く飛び立つ存在(ナーシャ)」という良い意味の名だな。
ミノス
ナーシャよ、まずはお前に謝らなければならない。
私がここに閉じ込められなければ、お前はきっと今よりも豊かな人生を送ることができていただろう…
ナーシャ
そんな…そのお言葉が聞けただけでうれしいです。
私は…大丈夫です…このとおり元気ですから!
(ナーシャの表情は笑っているが、悲しそうな様子も見て取れた。)
【プレイヤー】
(ナーシャは大丈夫だろうか。)
ミノス
さあ、お前の話を聞かせてくれ。
ナーシャ
はい…実は…
(ナーシャがオルカリウムで起こったことをミノスに伝える。)
ミノス
ゴーレムを連れている子がもうひとり…まさかあの子がオルカリウムにいるとは…
【プレイヤー】
何か心当たりがあるんですね。
ミノス
ああ…
ミノス
普通、ゴーレムは魔力を付与して動くものだ。
土と機械が混ざり合って今の形になったといえばわかりやすいか。
ミノス
帝国が侵略によって我々のゴーレムを連れて行き、研究し、改良したようだが、
未だに解決できないことがあるようだ。
【プレイヤー】
それは…
ミノス
ゴーレムに自我を持たせる…
つまり、マッドリンのような存在は、手に入れられていない。
ミノス
精霊に似たオーラを宿し、それを感じることができる
我々だけが動かすことができるのだ。
【プレイヤー】
(カーリー族とクノッソスの人達が精霊と関係しているという話か…)
ミノス
それでかもしれん。帝国の魔法使い達がそこを掘り出し、
そしてゴーレムを連れた子も何かを探そうとしているということは…
【プレイヤー】
そこに何かがあるのは間違いありませんね。
ナーシャ
精霊と関係する力…ですよね?
ミノス
ああ。オルカリウムは精霊が目覚める光の場所。
ミノス
(ミノスが何かを考えた後、おもむろに持っていた杖を土に刺した。
しばらくすると、アクロの墓をはじめとするクノッソス全体が少し揺れだした。)
【プレイヤー】
これは…?
ミノス
オルカリウムまでの道は私の方で作っておいた。お前が行けばそこが道になるだろう。
ミノス
【プレイヤー】、ひとつ頼みたいことがある。この子を助けてオルカリウムに行ってきてくれないだろうか?女神様のご意思も同じなのだろう?
【プレイヤー】
もちろんです。ところで…その後ろの箱は?
ミノス
ああ、ちょうどいい。
ミノス
ナーシャ、これはお前にやろう。数日前、壊れた城跡から見つかったものだ。
ナーシャ
私に?
ミノス
はるか昔、ジェレニスが友情の証として置いていったものだ。
今の私やパーシーパエーには無用な物なのでな。お前ににやろう。
さあ、受け取るがいい。
ナーシャ
これは…
ミノス
ジェレニスの魔力が込められた衣だ。ゴーレムを扱う者に合うように作られている。
ミノス
私とパーシパエーから子が生まれたら似合うだろうと…
ミノス
ナーシャ
…こんな大事な物を私がいただいてもいいのですか?
ミノス
ああ、かまわんさ。
【プレイヤー】
(ミノスさん…なんだか悲しそうな表情だな…)
ミノス
物にはそれぞれ持つべき者がいる。この衣はお前を選んだようだ。
(ナーシャがミノスから衣を受け取る。)
ナーシャ
ナーシャ
ありがとうございます。大事に使わせてもらいますね。
ミノス
…この先は長い道のりになるだろう。ここのことは忘れるといい…
お前の話は【プレイヤー】から聞くことにしよう。
【プレイヤー】
はい、わかりました。ではミノスさん、私達はオルカリウムに向かいます。
ナーシャ
行ってきます!ミノスさん。
ミノス
ああ。
ミノス
ミノス
「行ってきます」という言葉を、こんなにも嬉しく感じられる時が来るとはな…

ナーシャ
わぁ…
(足を踏み出した瞬間、クノッソスの森はいつの間にか消え、海と川が接する神秘的な場所へと変貌した。)
ナーシャ
これならすぐにオルカリウムキャンプにつきそうですね。エルアノール山脈からすぐに大陸の西部に来ることができるなんて…
【プレイヤー】
そうですね。これならいつでも戻ることができそうですし…
ナーシャ
それにミノスさんからもらったこの服!とっても軽いんです。私にぴったり…。
【プレイヤー】
確かによく似合ってますよ。なんだか雰囲気まで変わって、まるで別人のようです。
ナーシャ
ふふっ…お世辞でも嬉しいです。
ナーシャ
あ!冒険者さん!
ナーシャ
あそこに誰かいるみたいです。
【プレイヤー】
大きな本を持った…魔法使い?あれは…
ナーシャ
…魔法庁の人ですかね?
ナーシャ
(警戒するようにナーシャが後ずさりする。)
【プレイヤー】
大丈夫ですよ。私について来てください。
ナーシャ
…はい、冒険者さん。