シナリオクエスト

歌う勇者

???
ここまで来るとは思いませんでした。
(消えた精霊がまるで待っていたかのように冒険者と目を合わせる。)
???
あ…女神様に愛される方ですね。私は人形のために存在する精霊、ヘイデンです。あ、この子はマリーと言います。マリー、挨拶して。
(ヘイデンと紹介した精霊が人形の手を動かしながら再び挨拶をする。)
ヘイデン
ということは、【プレイヤー】さんですね。すぐ気づくべきでしたが、長い間この島にいるので他の精霊たちに会っていなくて把握するのに時間がかかりました。
【プレイヤー】
ここは一体どこですか?
ヘイデン
幸せな人形達の島、アイエですよ。
(ヘイデンが笑顔でマリーの両手を上げる。)
【プレイヤー】
アイエ島?
ヘイデン
元々はもっと長い名前でしたが、簡単にアイエ…と呼ぶことにしました。
ヘイデン
プレイオス大陸が空に浮かぶ前からここは島でした。波が高くて船に乗っても近づき難い場所でした。
ヘイデン
島の主が特別な日を選んで人々が来られるように波を静まらせた日がありますが、幸いなことに竜巻の中から生き残りました。
ヘイデン
こうやって魔力の海でその姿を保っていられたのは本当に運がよかったんだと思います。
ヘイデン
島の主はお客さんが大好きなので劇場も作っています。覗いてみてくださいね。
【プレイヤー】
劇場ですか?あ、違う。もしほかの人たちが来たこともありますか?
【プレイヤー】
とある少女に会えたのですが、もし見かけましたか?あの人もヘイデンのように人形を持っていました。
(いろいろ話していたヘイデンの口が止まる。)
ヘイデン
ヘイデン
それは言えません。知りたいのならあの方を訪ねてみてください。私のような精霊が言えるものではありません。
【プレイヤー】
あの方?
【プレイヤー】
(精霊が言えないくらいの人物なら上位存在…?まるでミカエラ様を拘束したバルバトスのような…)
ヘイデン
他のことでしたらいくらでもお答えします。
【プレイヤー】
(答えが聞ける質問をしないとだな…)
【プレイヤー】
マリーはここにいる他の人形達とは違って動かないんですね。
ヘイデン
はい…?人形は元々動かない存在ですよ?
(その瞬間、ヘイデンがマリーの手をあげて自分の口を塞ぐ。)
【プレイヤー】
この島を歩き回って演技をする人が足りないと話している人形達…そういう人形達の世話をする精霊…
【プレイヤー】
精霊は生命じゃないと働かない。ということは…
【プレイヤー】
ヘイデン、「あの方」に会うためにはどこに行けばいいですか?
ヘイデン
私は…私は…
(ヘイデンが何も言えないまま座り込む。そして静かにマリーの手である場所を指差す。)
【プレイヤー】
(さっきまで気づいてなかった何かが視野に入って来る。割れた鏡が立てられている木、そしてその前にある人形の頭はなんだか不吉な感じさえする。)
(冒険者の視野がその中に集中された瞬間、割れた鏡の間に誰かの姿が見える。)
【プレイヤー】
さっきのあの女の子?どうしてあそこに?
【プレイヤー】
【プレイヤー】
ヘイデン、一つだけ教えてください。
ヘイデン
はい…
【プレイヤー】
私が鏡の中に入ることはできますか?
ヘイデン
ぬいぐるみの頭が置いてある2か所に入ることができます。「深淵の鏡」と「エウガモン劇場」…まず鏡に近づいてみてください…
【プレイヤー】
そうするとあそこが「深淵の鏡」…わかりました。でしたらヘイデンはここで待っててくださいね。
ヘイデン
はい…

(割れた鏡の前に近づくとどこかから流れて来た光が冒険者を島とは違う空間に導く。)
(キラキラ輝く硝子素材のビー玉と壁、そして柱がある神秘な空間はさっきまでいた島の存在を忘れさせてしまう。)
【プレイヤー】
想像の中にありそうな場所なんだな。深淵の鏡…
【プレイヤー】
な、なんだ?この人形達はどこから現れた?
(いつ現れたのか人形達が近づいて【プレイヤー】の周りに集まる。人形達の登場に困った【プレイヤー】の前にとある少女が近づく。)
???
みんな後ろに下がって。新しい団員になるのかもしれないから。
【プレイヤー】
(島で逃げていたあの子じゃない…)
(人形の帽子をかぶって、体の一部が人形のようになっている少女の言葉に人形達が散らかる。)
???
私の名前はスキュレー。
(片方の腕と脚が人形のようになっていて、帽子のような人形の頭をかぶっている少女が自分を紹介する。)
【プレイヤー】
スキュレー?
スキュレー
私は人形の騎士役を担当しているスキュレー。
【プレイヤー】
人形の騎士?
スキュレー
さて。あんたはどういう役が似合うんだ?
【プレイヤー】
聞きたいことがありますが、あなたはここで何をしていますか?人形を持っていた女の子が入った気がしますが…
スキュレー
あんたに似合う役は…魔女よ!ちょうどその役が決まってなかったの。
【プレイヤー】
何を言ってるんですか?
スキュレー
元々悪党は最後に現れるのよ、わかるよね?あたしが準備してる間、あんたは頑張って練習してあたしがいる場所まで付いてきてね。
スキュレー
大変だけど頑張らないとね。じゃないとこの深淵の中じゃなくて、本劇場の舞台にはあがれないのよ。
スキュレー
ではまたね。
(【プレイヤー】の話は聞くつもりがなかったスキュレーが消えると、近くにいた人形達も一気に消える。)
【プレイヤー】
なんだ?自分が言いたいことだけ言って…人形の騎士の役だからか本当に演技をしているように話して…あれ?
【プレイヤー】
うん?
【プレイヤー】
おかしいとは思ったけど…まさか私にやったのも演技?演技というにはちょっと変だったけど…あれ?
(奥にある巨大な硝子の柱の間に一人の少女の姿が写る。続いてほかの鏡とビー玉、そして柱からも少女の姿が現れる。)
(島で目が合って逃げたピンクの髪の少女のようだ。)
【プレイヤー】
逃げた子がどうしてあそこにいるんだ?
(そして【プレイヤー】と目が合った少女が悲しい顔をする。そして何かを話すように口を動かす。)
少女
【プレイヤー】
何を言ってるんだ?助けて?あれ…
(少しずつ少女の姿が消えてしまう。)
【プレイヤー】
…消えた。あ、この空間のどこかにいるのは間違いないのに…
【プレイヤー】
【プレイヤー】
もしヘイデンが言ってた「あの方」がスキュレーなら急がないと。

(攻撃するたくさんの人形達を倒して、硝子と鏡になっている空間をしばらく彷徨ってたどり着いた行き止まりの道…)
(その前にスキュレーが下を向いたまま待っている。)
【プレイヤー】
スキュレー…?
(名前が呼ばれるとスキュレーがゆっくり歩いて来る。そして空間とは相応しくない雰囲気の歌を歌い始める。)
スキュレー
待ってた、魔女よ♪
スキュレー
人々を呪って逃げ切れてる思ったのか♪
【プレイヤー】
(予想はしたけど、ここで演技をするなんて…ところで歌がうまくはないな。)
スキュレー
あんたは不幸だと勘違いした♪魔女になれない道もあったのに…
スキュレー
あんたの選択が止まっていた不幸の歯車を動かせた♪
スキュレー
あんたも後悔したのよね。いや、後悔してほしいけど♪呪いを利用してからあんたは~!!
【プレイヤー】
(これは誰の話だ…本当の魔女の話?)
スキュレー
優しかった島の主があんたを哀れに思ってここにいさせたのに…
(スキュレーの後ろにあった鏡が激しく揺れる。誰かがその中にいるかのように、黒い影が見える。)
【プレイヤー】
まって…あの後ろの鏡…まさか、あの子が入っているのか?
(演技に集中するスキュレーを退かして鏡に近づこうとするが、謎の力のせいで止められる。)
【プレイヤー】
(その時、スキュレーが【プレイヤー】の背中を掴んで歌を続ける。)
スキュレー
なのにあんたは!どうして、どうして!
スキュレー
(スキュレーが息を?んで魔女役の冒険者を見つめる。)
スキュレー
あたしは神達が捨てた地で悪魔達と戦って勝った勇士♪愛する人と共にするこの島で未来を夢見たのに…
スキュレー
人形にはなりたくなくて耐えて耐えきったのに…
(歌っていたスキュレーがいきなり座り込む。)
【プレイヤー】
…スキュレー?
スキュレー
スキュレー
スキュレー、もう歌うのはやめるのよ。
スキュレー
人形になりかけた人形の騎士がこういう歌を歌うなんて。イライラする。
【プレイヤー】
君は誰?
スキュレー
当たり前にスキュレーよ!
スキュレー
スキュレー
スキュレー、しっかりして。配役のある団員とはしっかり演技をしないとなの。
(スキュレーの瞳が焦点をなくしたように濁る。そして、手に握っていた剣を持って早いスピードで近づく。)
スキュレー
ふふ、攻撃開始☆

スキュレー
…!
(スキュレーが飛んでくる【プレイヤー】の攻撃を素手で止める。)
【プレイヤー】
…!
スキュレー
誰なのかは知らないけど、あたしは今気を取り戻したわ。この戦いをやめよう、あたしを信じて。
【プレイヤー】
どうやって信じるんですか?
(スキュレーが握っていた【プレイヤー】の武器から手を離して背中を向ける。)
スキュレー
騎士が敵に背中を見せるなんてあり得ないことよ。
【プレイヤー】
…わかりました。信じてみます。ところで、あなたを操ったのは誰ですか?
(スキュレーが誰かが入っていそうな鏡に近づく。そして人形のもののように見える腕を上げて鏡を叩く。)
がちゃん!
(鋭い音と共に鏡が割れる。欠片が落ちてその中に閉じ込められていたような人の姿が見える。)
【プレイヤー】
…そうだ、あの子だ。
(動物のぬいぐるみを持っているピンクの髪の少女が震えながら座り込んでいる。)
???
あたしを助けてくれてありがとう…
スキュレー
誰が誰を助けたって言うのよ!最後まで演技をするなんて。
(怒りに満ちたスキュレーが手を伸ばして怖がっている少女を引っ張る。)
???
助けて…
(少女が冒険者を悲しそうな眼付で見つめる。)
【プレイヤー】
???
どうして助けてくれないの?
【プレイヤー】
君、演技には向いてないね。
???
そう?
(少女の顔にさっきまでは見かけられなかった笑顔が広がる。また目つきが変わってしまったスキュレーが掴んでいた少女を下す。)
【プレイヤー】
君はなんだ?また、スキュレーはなんだ?
???
人になにって。あたしはキルケ、この島の主であり、この島にいる人形達の主よ。スキュレーもあたしの人形。
【プレイヤー】
人形の主?
(キルケと紹介した少女がヘイデンのように持っていたぬいぐるみの手を振る。)
キルケ
そうよ、人形の主。生まれた時からあたしは人形と一緒だった。もちろん、今も一緒よ。ヘヘ、あたしの言うことを聞かない人形はいない。
キルケ
なのにスキュレーがあたしを攻撃するなんて信じられなかった。だから能力を使ってみただけよ。いまだに魔女がスキュレーを操っているのかが知りたくて…
キルケ
よかった、ある瞬間から解けたの。
【プレイヤー】
【プレイヤー】
(この子、ヘイデンが言った「あの方」ではなさそうだな…一応そこまで威嚇的な子でもなさそう。)
【プレイヤー】
それならどうして森から私を見て逃げたの?
キルケ
偽装術で逃げていたのにあんたがあたしに気づいたのよ。だから驚いた。結局捕まえてここに閉じ込められてしまったわ。
【プレイヤー】
それなら魔女はどこにいるの?どうして君をここに閉じ込めた?
キルケ
それはあたしが知りたいのよ。はてなだらけのやつめ。
キルケ
キルケ
とにかくありがとう。人形達を全部奪われなかったのはあんたのおかげよ。ふぅ…
キルケ
あたしは出るけど、あんたは出ないの?
【プレイヤー】
スキュレーは…?
キルケ
ここは人形の倉庫みたいな場所で、スキュレーは人形だから気にしないで。
(キルケの話が終わるとスキュレーが地面に倒れる。それを確認したキルケが平然と笑いながら背中を向ける。)
キルケ
ではバイバーイ☆
【プレイヤー】
【プレイヤー】
(あの子、本当に人形の主なのかな?)
(スキュレーの状態を確認していると、キルケの独り言が聞こえてくる。)
キルケ
[ヴァルプルギスの夜]のせいとは言え、みんな無理しすぎなんじゃないの?
【プレイヤー】
…!
【プレイヤー】
キルケ、待って!
(もうキルケの声が聞こえて来ない。姿すら見えなくなる。)
【プレイヤー】
【プレイヤー】
どうしてキルケがそれを知ってるんだ?
【プレイヤー】
とりあえずヘイデンに向かおう。ヘイデンなら何かを知ってそうだから…あ、そうだ。スキュレー…
(冒険者がスキュレーを座らせて急いで外に出る。そして、気を取り戻したスキュレーが辛そうな声で泣き出す。)
スキュレー
…うっ…
スキュレー
うっ、女神の冒険者よ…キルケの望み通りあんたさえ舞台に上がってしまわない…ように…