シナリオクエスト

宝探し(2)

アドキーナ
ふむ、お腹が空いたな。
 
(アドキーナは手…いや、前足で腹をさすった。)
アドキーナ
境界の彼方の中にいるとなんだからお腹が空いてしまうんだな。あ、イーオーか?
イーオー
アドキーナ様、ここにいらっしゃいましたね。
アドキーナ
空いている境界の彼方が気になってまた来たんだ。お、君も来たのか。この間ぶりだけど嬉しいな。
【プレイヤー】
こんにちは、アドキーナ様。私も嬉しいです。
アドキーナ
あ、君は…精霊なんだな。いや、精霊王。
ナリン
遠くから拝見しており、ご挨拶が遅れました。ナリンと言います。
アドキーナ
水と氷の精霊王と聞いた。今までイーオーを守ってくれてありがとう。これからもよろしく頼む。
ナリン
変なところがある子なので気にかけてくださってありがとうございます。
イーオー
変って…。アドキーナ様、お腹が空いているようでしたので珍味を用意しました。
アドキーナ
それは楽しみだな。
【プレイヤー】
 
(アドキーナがイーオーが差し出したミントチョコつららかき氷を見て言葉を失う。)
アドキーナ
アドキーナ
イーオー、持ってきてくれた気持ちは嬉しいが…そうだ、気持ちがあるから一口食べてみよう…
アドキーナ
うっ、ΔδφυθωωωΩΩΩ!
 
(アドキーナが頭をあげて境界の彼方の虚空に向けて咆哮を噴き出す。)
ナリン
アドキーナ様…?
アドキーナ
危なかったな。イーオー、次はバルドリックに出してるような肉を頼むよ…
ナリン
イーオー、アドキーナ様は怒っているようだ。
【プレイヤー】
…あそこまで激しいのは初めて見ました。
イーオー
あまり怒らないでください。
アドキーナ
すまない。君が用意してくれたのに。この姿をこのままずっと維持しているとは思わなかったんだ。
イーオー
理解します。私も最近おかしいんです。長い間やってきたことが消えたせいなのか退屈しています。
アドキーナ
イーオー、もしシャイニックのように退屈で死にそうなのか?
イーオー
わかりません。なんだか中が入っていない氷の箱みたいです。すぐ溶けてしまいそうな…
イーオー
ナリン
イーオー、私がその中を埋めてあげてもいいか?
イーオー
あんたのことはわかってるわよ。たくさん水を飲ませるのよね?そんなに楽しいの?
 
(ナリンがイーオーの反応に笑う。そんな中、アドキーナの腰から何かを見つける。)
ナリン
あれ、アドキーナ様。鱗が落ちた箇所が何か所かありそうですが、大丈夫でしょうか?もしかして体調が悪いとか…
アドキーナ
境界の彼方の中で力を使ってるといくつか落ちたみたいだ。木霊の泉の方面に飛んで行ったようだな。
アドキーナ
ちょうどよかった。イーオー、君が探して来てくれないか?宝探し…と考えてくれたら…
イーオー
宝探し…
イーオー
 
(イーオーが何かを考えて【プレイヤー】の手を握る。)
イーオー
アドキーナ様、行ってきます。【プレイヤー】、一緒に行こう。なんだかあんたがいたらすぐ見つかりそうなの。
【プレイヤー】
急に私ですか?あれ?
 
(その時、【プレイヤー】の頭の中にアドキーナの声が流れて来る。)
アドキーナ
「…イーオーのために行ってきてくれ。」
 
(アドキーナが静かに頷く。)
【プレイヤー】
では…イーオー、行きますか?
イーオー
ありがとう、【プレイヤー】。
アドキーナ
君たちが木霊の泉に行ってくる間、ナリンが俺の話し相手になってくれ。
ナリン
私で大丈夫でしょうか?
アドキーナ
もちろん大丈夫だ。新たに親友になる仲ならどんな話でも楽しいのだろう。
イーオー
では、アドキーナ様、ナリンをよろしくお願いします。さて、宝物を探して木霊の泉へ!
 
(イーオーが【プレイヤー】の手を握って境界の彼方の外に出ると、横を向いてナリンを見つめる。)
アドキーナ
あ、ナリン、ガイア様から君に伝言があるんだ。
ナリン
はい?女神様からですか?
アドキーナ
燃えて消えそうになった大陸の一部を凍らせ、たくさんの命を助けた君がいてよかったと話していた…そして…

 
(木霊の泉を彷徨うイーオーと【プレイヤー】の視野に氷と雪の間からキラキラ青色に輝く何かが入って来る。)
【プレイヤー】
見つけました!
イーオー
間違いなくアドキーナ様の鱗ね。まだまだ見つからないと思ったのに、早めに見つかってよかったわ。
イーオー
アドキーナ様はわざと私をここまで送ったのね。
【プレイヤー】
どういうことですか?
イーオー
いつだろう、昔、はるか昔、覚えてもいないはるか昔…
イーオー
お父さんとお母さんと雪原で遊んだことがあるの。大したことはないけど、こうやって小さなものを隠してくれたら私が探したりしていた。
イーオー
まるで宝物を探すようにね。そういうのを見つけるためにかなり遅くなったりしたこともあるけど、怒られたことはないわ。
イーオー
イーオーニス、君は何でも根性よく見つけ出す子ね。いつか難しいことがあっても絶対に諦めないで、今のように見つけ出すのよ…って。
イーオー
イーオー
まあ、アドキーナ様だったら私のお父さんやお母さんとも縁があったはずよ。宝探しってわざわざ行かせたんだから。ふふ…
イーオー
面白かった。退屈じゃなかったのよ。
【プレイヤー】
気分はどうですか?
イーオー
とてもいいわ。ふふ。軽く散策したみたい。
【プレイヤー】
よかったですね。
イーオー
ありがとう。
【プレイヤー】
私は別に何もやってなくて…
イーオー
【プレイヤー】、君の存在自体が私達にはプレゼントよ。ふふ…私だけそう考えているわけじゃないと思うけどね。
【プレイヤー】
褒めすぎです。
イーオー
ふふ、どう受け止めるかは自分次第ね。そして私はもう少し余裕を持っても良さそうね。
イーオー
もちろんやるべきことをするわ。目の前の氷が溶けてもすぐには暖かくならないから。
【プレイヤー】
そうですね。
イーオー
戻ろうか。アドキーナ様が待っているはずよ。
【プレイヤー】
はい、行きましょうか?

アドキーナ
おかえり。
【プレイヤー】
はい、ただいま!
イーオー
アドキーナ様、ただいまです!ナリンもお待たせ。
ナリン
アドキーナ様と楽しくお話していたの。
【プレイヤー】
何を話していたのですか?
アドキーナ
美しさの本質に関する話をしたんだ。
【プレイヤー】
もし可愛いと美しさを見分ける目についてですか?ベレトが話した…
アドキーナ
似てはいるが少し違うな。古代神と精霊…その時期の命に関する話だ。
ナリン
楽しかったです、アドキーナ様。私の話も楽しかったようでなによりです。
イーオー
ナリン、あなたは何を話したの?
ナリン
私は君の幼い頃の話をした。あの時は今とは違ってとても可愛くて…好きな男の子もいたよね?
イーオー
あんた、村でまた話そうね。かわいがってあげるよ。フフ。
ナリン
わかった、フフフ。
【プレイヤー】
アハハ…
イーオー
あ、宝物、いや鱗を見つけました。
アドキーナ
すぐ見つかったようでなによりだ。それを俺に渡す必要はない。
イーオー
はい?
アドキーナ
人々の間でドラゴンの鱗は幸運と健康の象徴という話を聞いた。これは俺からのプレゼントだ、イーオー。
イーオー
ありがとうございます、アドキーナ様!本当に綺麗ですね。
アドキーナ
今度機会があれば【プレイヤー】にもナリンにもプレゼントを用意しておくよ。
【プレイヤー】
大丈夫ですよ、アドキーナ様。
ナリン
アドキーナ様の存在自体がプレゼントです。
アドキーナ
そう言ってくれてありがとう。これは全てガイア様の恩…
アドキーナ
ガイア様の恩がなければ俺はグルアートのような悪い存在になったのかもしれない。
【プレイヤー】
(イリスじゃなければ他の姿になったのかもしれない私のように…)
アドキーナ
グルアートにどんな事情があるのか当時に俺は興味さえ持たなかった。彼がたくさんの人間達を自分の鱗を餌にして殺したのを、後々から知った。
アドキーナ
これは俺の過誤だ…結局背けたのは俺だから…
アドキーナ
あの時、ジスカドが彼を討伐する前に俺を訪ねて聞いたんだ。
アドキーナ
女神を従う俺がグルアートとは違うことを確認したかったようだ。同じ答えでよかった、他の答えだったら二人の中で一人は今頃いないのだろう。
アドキーナ
ジスカドを始め、超人になった子達はいつからか自分が普通の人間とは違う存在になったことを不安に思ったのだろう。一人で長い時間寂しかったはずだ…
アドキーナ
まるで俺のように…それでもよかったんだ。敵ではなく友達で一緒にいられて。
アドキーナ
こういう信頼を持てたのは全て君のおかげだ。皆を一つにして導いてくれた。
【プレイヤー】
い、いいえ。私は何もしていません。
イーオー
謙遜もすぎるとつららで心臓を刺されるのよ。認めるものは認めよう。
ナリン
フフ、【プレイヤー】様のおかげでたくさんの方が変わりました。
アドキーナ
ああ、既に君は皆の宝物だ。
 
(アドキーナの言葉にイーオーとナリンが晴れやかに笑う。)
【プレイヤー】
恥ずかしいですね、アハハ…
イーオー
そんなので恥ずかしがらなくていいわよ。アドキーナ様、私達ともう少し時間を過ごしませんか?
アドキーナ
いいじゃないか。では話を続けるのはどうだ?
ナリン
話もいいですが、これはどうでしょうか?
 
(ナリンが持っていた巻紙を開けると、その中からあらゆる物が落ちる。)
イーオー
ナリン、ちゃっかり用意して来たのね。
【プレイヤー】
カードとサイコロに盤まで…
ナリン
皆で楽しみましょう。これなら時間の流れも忘れず楽しめるのです。
アドキーナ
ルールを知らない老人も参加していいのか?
イーオー
もちろん。こういうのは皆でやるから楽しいんですよ。
 
(イーオーが吹雪を起こしてアドキーナの前足にカードを渡す。続けてナリンがカードを配ってルールを説明するとゲームが始まる。)
 
(そうやって境界の彼方の中はゲームを楽しむ人達の笑い声が溢れる。ただ、一人は違うようだ。)
【プレイヤー】
あ、また負けちゃった…