シナリオクエスト

“扉”を開く『鍵』

 
(イーオーに付いて前に進むと違う感じの砂嵐が吹いて来る。他の世界の存在が彷徨っているアヴァロンに戻ったが、レンの姿が見えない。)
イーオー
他の場所に出てしまったわね。やっぱりこういうのは慣れてなくて…
フローズン
ですが、ヴァニタスがあった場所に比べたら比較的に安全な場所です。
イーオー
フローズン、ではレンと境界の彼方の方向を頼むわね。他の場所はバルドリックおじさんが解決したから、境界の彼方を守るのよ。
フローズン
では、僕はすぐにレンに向かいます。
【プレイヤー】
フローズン様、気を付けてくださいね。
フローズン
【プレイヤー】も気を付けて。幸運を祈ります、イーオー様。
イーオー
ありがとう。
 
(フローズンがレンがいる方向に急いで走るとイーオーが軽く【プレイヤー】の肩を叩く。)
イーオー
あの中で皆が待っているわ。私達も遅れてはいけないわね。
【プレイヤー】
はい。
イーオー
バイスが煉獄だと呼んでいるあの空間がどういう場所なのか私の目で見たいわ。

 
(不吉なオーラが溢れる怪しい扉の中に入ると、見える風景に視線を集める。)
 
(命とは見えない廃墟の上に眩しい光が溢れている。頭を上げて見つめた空の上は、雲の間にどこかへ繋がった白い階段が広がっている。)
【プレイヤー】
ここが煉獄…
イーオー
あの空間どこかにそれに向かうあの階段と繋がる場所があるはずよ。きっとその場所にバイスがいるのよね。
【プレイヤー】
…あ、イーオー。あそこ…
イーオー
どうしたの?あそこに何?
イーオー
イーオー
バイス…
イーオー

 
(イーオーは彼の名を呼び、冷たい笑顔を見せた。
しばらくすると、イーオーの周りを流れる冷気が、細くて鋭い氷柱へと形を変えた。)
イーオー
ようやく会えたわね。
ここで、終わりにしましょう。
バイス
■■■ ■■■■■ ■■。
イーオー
!?どういうこと…?それは一体…何……?
 
(イーオーの周りの氷柱がバイスの胸に向かう。だが、氷柱は彼を通り過ぎて遠くに建てられていた建物の壁にぶつかって落ちてしまう。)
【プレイヤー】
…?!
バイス
■■ ■■■■ ■ ■■■。
【プレイヤー】
(うっ、耳…!耳が痛い…!これはまるで、アドキーナ様が話してた時のような……!)
 
(バイスの口から“言葉”が一つこぼれる度に、流れるオーラが【プレイヤー】の耳へと入り込み、内側から突き刺すような痛みを与えてくる。)
イーオー
……
イーオー
…神の言語ではなく、人間の言語で話しなさいよ。
――デイモス。
【プレイヤー】
デ…デイモス?
【プレイヤー】
(確かにバイスとは違う気配…だけど、この束縛の力は…)
 
(デイモスと呼ばれた存在は、バイスの姿で軽く頷いた。)
デイモス?
すまない。セレスに従う子達よ。
【プレイヤー】
(間違いなくバイスの姿…でも、バイスじゃない。
…なら、本当に神が…デイモス…なのか?)
デイモス?
汝の抱く違和感は、我を囚えた魔石による影響だろう。
デイモス?
我はデイモス。
デイモスの分身
…汝らの知る“捩じれた者”…その分身なり。
デイモスの分身
汝らがバイスと呼ぶ者によって呼び起こされた。
デイモスの分身
かつての混沌の時代、デイモスもフォボスらも、他の者と同じくこの『世界』を離れた。
デイモスの分身
神と“捩じれた者”、そして魔王の戦いによって、我々は多くのものを失った。
デイモスの分身
……中には、セレスのような者もいたがな。
デイモスの分身
多くの者はこの『世界』を離れ、二度と戻るつもりはなかった。
【プレイヤー】
デイモスの分身
だが…ある時、我々を呼ぶ声がした。この『世界』で愛した命からの声だ。
フォボスは自分の分身を送った。
デイモスの分身
だが、分身は戻って来なかった。
魔石の力によって囚われたのだ。
デイモスの分身
デイモスもまた愛した命からの呼び声に応え、分身である我を送った。
デイモスの分身
バイスの魔石に囚われるなど、考えることもなく…
イーオー
仮にも“捩じれた者”なんでしょう?
バイスなんかにいいようにされちゃって…
デイモスの分身
我はデイモスのほんの一欠片に過ぎぬ…
何より、バイスの集めた命の力は我を超えている。
デイモスの分身
これからこの魔石が分身である我の力を奴に送るのだろう。
そして、他の時空間に存在するデイモスの分身を呼び出すはずだ。
デイモスの分身
デイモスの生み出した分身の数はこの世界に存在する精霊の数よりも多い。
デイモスの分身
膨大な数の分身が囚われれば、
いくらデイモスであっても、再びこの『世界』に赴かざるを得ないだろう。
【プレイヤー】
神級の存在すらも操ろうとしているなんて…
【プレイヤー】
デイモスの分身
汝はすでに知っているはずだ。
“神”と呼ばれていようと、どれだけの力を持とうと、汝らとの違いなどさしてありはしないのだ。
デイモスの分身
…我はこれより、他の分身たちが来ることを遅らせるため、デイモスとの繋がりを断つ…
デイモスの分身
…さらばだ、神に愛されし者達よ…
【プレイヤー】
…?!
デイモスの分身
…嗚呼、実に惜しい…君は…
 
(デイモスの分身の動きがだんだんと鈍くなっていき、ついには動かなくなった。
そして、バイスの姿をした魔石の塊だけが残された。)
イーオー
…確かに、本当のことを話していたみたい…
イーオー
先ほどまで感じていた“捩じれた者”の力がなくなっている…バイスのところに行ったんでしょう。
分身…魂の欠片のようなものかしら。魔石を媒介にして移されたみたい…
イーオー
確か…ベレトという悪魔でしたか?
シルバリア帝国の魔法庁という機関で、マッドゴーレムの魂を移す作業をしたと聞きました。
【プレイヤー】
【プレイヤー】
(……もしかして、傭兵団駐屯地の近くの洞窟で小さなデゴスに会えたのも…)
イーオー
今は深く考えるのはやめましょう。もう他の超人達がバイスを探しに出ています。
私達も急いで向かいましょう。
【プレイヤー】
はい!
【プレイヤー】
(そうだ、今は目の前のことだけに集中しよう。考えるのは、後に…)

 
(他の『世界』から来た存在達が、紫の火花となって煉獄へと流れ込んでいく。)
 
(続くように、その先へと進むと、超人達がバイスと対峙している。
超人達が一方的にバイスを攻撃しているが、そのすべてがバイスには届かない。)
シャイニック
はあ、はあ…
ジスカド
グッ…シャイニック、下がってくれ。
次は私がやろう…
 
(シャイニックがデスサイドを杖のようにして辛うじて立ち上がる。)
シャイニック
ぬかせ…!下がるべきはお主の方じゃ!
メディア!治療は任せたぞ!イーオーが来るまで……あのバカとワシで時間を稼ぐ!
メディア
はい!ジスカド様、こっちです!
シャイニック
バルドリック、問題ないな?
バルドリック
当然!だが、どうしてコイツは攻撃して来ねぇ…いくらでもチャンスはあったろうに。
シャイニック
……。
 
(その時、突如出現した氷柱がバイスを襲う。
バイスが手を振るい、氷柱を弾こうとしたその時…氷柱は自ら砕け、その欠片がバイスの腕に食い込む。)
バイス
煩わしい……また邪魔者が増えたか。
イーオー
ごめんなさい!遅くなりましたが…どうにか間に合いましたかね?
【プレイヤー】
みんな大丈夫ですか?
……バイス…!
【プレイヤー】
(…?どうしてバイスは何もしてこないんだ…?)
バイス
今更お前らの相手など……
【プレイヤー】
(こちらを見て、バイスの顔がわずかに歪んだ。)
【プレイヤー】
みんな、気を付けてください!
 
(バイスが槍を持ち上げると、その周りから巨大な爆発が起こる。)
【プレイヤー】
この力は…
イーオー
…これほどの力を…!
メディア
……。
メディア
今も、“捩じれた者”の力の一部がバイスの中に流れ込んでいます……。
バルドリック
問題ねぇ。コイツがその力を引き出す前…全力でぶっ潰す!
ジスカド
そう簡単には…
シャイニック
!!みんな下がれ!
ヤツの狙いは……!
バイス
■■■■■。
 
(シャイニックの言葉を聞いて、後ろへ退こうとした超人達。
しかし、バイスが口を開いた瞬間、謎の力が超人達を包み、その動きを止めた。)
ジスカド
その言葉…まさか、デイモスの……!
“神の言語”……。
バルドリック
クッ…!動けねぇ…!どうなってんだ……!
イーオー
デイモスの力によって、私達の時間を止められてしまったようですね…
シャイニック
…ということは…!
メディア
……。
メディア
【プレイヤー】、【プレイヤー】!【プレイヤー】、大丈夫ですか!?
 
(皆の動きが止まり、混乱する中で、【プレイヤー】はバイスへと攻撃を仕掛ける。)
バイス
…やはり、お前は『鍵』に相応しいな。
【プレイヤー】
…また、わけのわからないことを!
バイス
永劫の時の中に目覚めた魂…
 
(バイスの言葉と共に、遠くから巨大な扉が空から落ちる。扉は閉じられていて、その前に大きな錠前で鍵がかかっている。)
【プレイヤー】
これは……
バイス
お前こそがこの“扉”を開く『鍵』。
皆の待ち望んだ「アズラエル」はもう、この手の先に…!
ようやくだ…デイモスの君臨する、新たな『世界』が始まる!
【プレイヤー】
新しい『世界』…?なら、今いる神達はどうなる?
バイス
愚問だな…そんなもの、この『世界』には必要ない。
【プレイヤー】
そうだろうな…だから、そんなことにはさせない!
バイス
ふっ…
バイス
デイモスの力も馴染んできた…
『鍵』として完成したお前の魂……今こそいただこう…
バイス
■■■■■。
 
(バイスと【プレイヤー】の周りに謎の障壁が広がり、超人達を縛っていた力が消える。)
バイス
バイス
『鍵』にすらなれなかったお前らは、精々そこで無力感を味わうことだ…
 
(超人達がバイスを攻撃するために近づくが、障壁に阻まれて何もできない。)
バルドリック
クソ!このまま黙って見てろってことかよ!
ジスカド
私の力で障壁を斬ってみよう。皆、力を…
メディア
いえ、ジスカド様…見せるだけなら先ほどのまでの状態でもよかったはず…仮に「斬れてしまった」場合、どうなるかがわかりません…
今は彼を信じて見守るしかないでしょう。
イーオー
……そうですね。それよりも、今は私達にできることをしましょう。
 
(超人達の視線がある方向に定まる。)
メディア
デイモスの分身や、他の世界の存在達が集まってきたようです。
彼らが障壁に触れることのないよう、ここで食い止めましょう。
シャイニック
無論じゃ…
シャイニック
もう、後悔するつもりは…ない!

 
(デイモスの力で覚醒したバイスの攻撃が、【プレイヤー】を襲う。
【プレイヤー】はその攻撃を耐えながら、必死に反撃の隙を狙う。)
バイス
……足掻くじゃないか。
だが、それももう限界だろう?
【プレイヤー】
はあ…はあ…
 
(バイスが【プレイヤー】に近づき、武器の切っ先を心臓に向ける。)
バイス
お前の心臓を貫き、零れた血が『鍵』となる…
【プレイヤー】
(イリス…)
バイス
この地の神に愛される存在、その存在で作られた『鍵』…
よくここまで来たな。俺の『世界』、アズラエルの礎となれ…
 
(バイスの手から、不吉な力が【プレイヤー】に放たれる。
瞬間、風に乗って巨大な力がバイスの元へとやってきた。)
バイス
…!?
 
(バイスが驚き避けるも、その力は再びバイスへと向かう。
そしてバイスの動きを妨害する。)
バイス
ク…クアアッ。
バイス
…俺が、“束縛の力”に囚われるとは…
誰かの声?
■■■■■。
バイス
デイモス…
【プレイヤー】
デイモスの…分身…?
デイモスの分身
いかにも、我はデイモス。その分身なり。
我の力を利用しようとするアガシュラとデイモスの繋がりを断った。
バイス
…?!
デイモスの分身
我はそのような理由のためにここを訪れたくはなかった。
デイモスの分身
我々の愛した命の声に応えたいという思いで、我は最初の分身を送ったのだ。
しかし……
デイモスの分身
汝は我を欺いた。
我らを弄び、己が理想に利用しようとした。
デイモスの分身
“奴”の甘言に惑わされて……
 
(固い障壁をすり抜けるように、デイモスの分身達が集まって怪しい影を作る。)
デイモスの分身
“奴”は星の運命を軽んじている。
だからこそ汝のような存在を作りあげた。
デイモスの分身
この星は、神々が命を賭して守った場所だ。
我と異なる選択をした彼らのため……
デイモスの分身
汝と“奴”の結んだ『契約』を断ち切ろう。
デイモスの分身
 
(分身達が集まって作られた影が少しずつ割れ始める。
その度に、デイモスの力を得たバイスの体も同じく少しずつ割れて消える。)
バイス
くああああ!
デイモスの分身
汝がこの『世界』に与えた苦痛を返そう。
混沌と深淵の恐怖…感じよ。消滅のオーラを…
【プレイヤー】
(……)
デイモスの分身
……愚かなる人の子よ。バイス…汝の望んだ『世界』はもはや存在しない。
アズラエルが戻ってくることは、ない。
バイス
……。
デイモスの分身
……。
デイモスの分身
ガイアよ。セレスの選択した人間から、この星の過去と未来を見た。
デイモスの分身
我はもう消える。再び現れることはない。
少なくとも、この『世界』に訪れることは……
デイモスの分身
この者の最後は、汝らに任せよう。
 
(デイモスの分身だった影が、“扉”に触れる。
しばらくすると、“扉”は影と共に粉々に割れて、痕跡もなく消えてしまった。)
バイス
ハッ……
【プレイヤー】
…バイス…
バイス
……ただ、アズラエルを取り戻したかった。
そのために“奴”の話に乗った……。
バイス
できることがあるのならば…なんだってした…
バイス
命の力を使い、魔石を作る必要があるなら…躊躇うことはなかった…。
バイス
すべては…アズラエルのために……
【プレイヤー】
だから、そのためにこの『世界』を犠牲にすると?
そんなの…間違っている…
バイス
どうせ滅びる『世界』なら、アズラエルのために使ったほうがいいと思っただけだ…
バイス
何度生まれ変わろうと、俺の選択は変わらない……
【プレイヤー】
バイス…
シャイニック
こやつの処遇は、ワシに任せてもらえるかの?
【プレイヤー】
シャイニック様…?
どうやって…
 
(いつの間にか、障壁は消えていた。
【プレイヤー】とバイスの間に、シャイニックが割り込む。)
【プレイヤー】
ですが…
シャイニック
お主が手を汚す必要はない。
後始末は…ワシらがやろう…
シャイニック
他の超人達も同じ意見じゃ。最後にはワシに任せてくれた。
…今はもうフローズンのいる場所で待っておる。
【プレイヤー】
はい…
 
(シャイニックが晴れやかな笑顔で【プレイヤー】の肩を叩く。
そして束縛に囚われ、苦しんでいるバイスを見つめる。)
シャイニック
バイス…お別れの時間じゃ。
バイス
シャイニック
……お主はここに来るべきではなかった。
シャイニック
ワシに命を奪わせるな…ワシは……もう誰も殺したくない。
だから…こんなことはお主で最後にしよう。
シャイニック
お主は犯した罪に見合うだけ、苦しまなければならない。
シャイニック
だから……ペルセがワシに残したプレゼントをやろう。
冥界にすら辿り着けなかった魂の怨望が聞こえてくるじゃろ?
 
(シャイニックがデスサイドを持ち上げて振り回すと、時空間が切れ目から現れた数多くの黒い球体がバイスの体に触れる。)
シャイニック
……苦しみの中で、死ぬがよい。
 
(黒い球体達がそのままバイスの体を貫通して、また張り付く。)
バイス
……好きにしろ。後悔は、ない……
ただ…あの場所に戻れなかったのは、残念だがな…
シャイニック
…懐かしい記憶が幸せな時間だったと思えるのなら、
それは、後悔しているということなんじゃろ。
シャイニック
…さよなら。
シャイニック
 
(黒い球体が再び集まり、巨大な刃となってバイスの心臓を切り裂く。
すると残っていたバイスの体は紫色の閃光とともに燃え上がった。)
 
(そして…バイスの姿は、紫色の炎の中で、闇に飲み込まれ消えていった。)
【プレイヤー】
【プレイヤー】
(闇に飲み込まれた英雄…)
シャイニック
(今のは…)
シャイニック
シャイニック
さぁ、お主はもう帰れ。フローズンのところで皆待っておることじゃろう。
【プレイヤー】
シャイニック様はどうするんですか?
シャイニック
ワシは少しここに残る…ちょっと忘れものがあっての。
【プレイヤー】
…?はい、わかりました。
急いでくださいね。この空間がどうなるかわかりませんから…
シャイニック
わかっておる…
 
(【プレイヤー】の姿が消えると、ひとりになったシャイニックは周りを見回す。)
シャイニック
バイス……お主は最後まで気に食わん奴じゃったよ。
シャイニック