(デボラ雪原の閑寂な場所で相応しくない服装の二人の男が服に付いた雪を掃っている。)
カズノ
この大陸に蛇の痕跡はもうないようだ。レテに会った時が最後だったなんて…
ジェリル
蛇は陰険だからどこかに隠してるのだろう。
ジェリル
あの子の最初と最後、新たなスタートを見守った君の気持がね…
ジェリル
セレス女神が作ったデル族の血が薄くなって子孫は一般的な人間として生きていた。
ジェリル
覚醒する場合はあまりなかったがそれでも我々がデルの血が混ざったやつらを追って殺したじゃないか。
ジェリル
そういえばあいつも思い出すな。へへ、と笑って神とは思わず魔法使いに従っていた…
ジェリル
とにかく、君は今も自分の否定するんだね。君がこうなったのは全て…
(カズノが咳をしながら気を失って雪の中に倒れる。)
ジェリル
あの子のためにやっていることをやめないと君は死んじゃうって言うのに。死さえ恐ろしくないぐらいなのか?あの子は君になんなんだ?
ジェリル
蛇を追おうと言ったのも、いたずらしている魔女を外に引っ張り出したのも、あの者が我々のような存在ということを明かしたのも全部…
(ジェリルがカズノを支えるうち、とある少女と目が合う。ジェリルが笑顔で見つめると少女が慌てるように一歩下がる。)
ジェリル
(違う色の瞳…甲冑…どこかで見たことがあるような…)
ジェリル
怖がる必要はないよ。誰なのかどこから来たのかだけ話してくれればいいさ。
少女
バイスにもバレないように隠れたのに、どうやって私を見つけたの?
少女
いや、私はどうしてイーストランドにいるんだ?先ほどまでグラストンにいたはずなのに…
ジェリル
バイス?罪人から逃げるなんて普通じゃないようだね。アガシュラでもなさそうだけど…
少女
私をアガシュラなんかに比べるな。頼むよ…はあ…この地の新たな神ができたら楽になると思ったのに…
少女
会いたくなかったなぁ…狼少年。いや、おじさん。
(少女が周りを警戒しながら急いで道を走っていく。)
ジェリル
軽く無視されるなんて…アガシュラの気配を出すのはあまりすきじゃないけど、仕方ない。
(ジェリルの静かな囁きが少女の耳元に届く。少女は体が動かないことを感じながらも軽く笑う。)
少女
あんたアガシュラ?関わりたくないし……バイバイ。
(少女が軽く背伸びをするとジェリルがクスッと笑う。)
ジェリル
ふっ、面白いな。軽くはなかったはずだが、それを解いて動けるとは……
ジェリル
ここは、見逃すとしよう。力ある者ならば、またいつか会う時が来るだろう。
(ジェリルが何かを言う隙もなく少女が吹雪の間に消えるとジェリルが狂ったように笑い始める。)
(カズノが気を戻してジェリルを見上げると、ジェリルが明るい笑顔で目を合わせる。)
ジェリル
カズノ、喜べ。ウロボロスの贄が見つかったぞ。