(イーオーが倒れた【プレイヤー】の顔をじっと見つめ、顔についていた雪を取り除く。)
【プレイヤー】
うう…ん。何が起こったのですか?何かに殴られた気がしたのですけど…。
【プレイヤー】
その割には、なんだかひりひりするのですが。
イーオー
不思議なことなんてこれまでたくさん経験したじゃないですか。
今回もそれと同じです。
【プレイヤー】
(イーオーもやっぱり何かを知っているようだ。)
ナリン
ごめん…知らなかったんだ。
エコーーの翼が持っていた記憶があの時の時間だったなんて。
イーオー
大丈夫よ。仕方ないわ。
あ…【プレイヤー】。あとは静かに見てればよいですよ。ただ…見ているだけ。それだけですべてがわかるはず。
イーオー
これを見終わったら、私はまたバイスを呪うのでしょうね…。
(イーオーとナリンが目を合せて、もう一度前を眺めると彼らの姿が跡形もなく消えた。)
(ただ白い雪と氷だけのデボラの風景が広がっている。そんな雪原で聞き覚えのある声が聞こえてくる。)
エコーー
私はただ外に出たかっただけ…私が望んだことはこれではない。
バイス
俺は貴様の望みを奪ってなどいない…奪ったのは別の生命だ。
バイス
貴様は世界の力を取り込んだ時から知っていた。
(エコーーがそう言うと、周囲に巨大な氷の結晶が浮かび上がる。バイスを突き刺すかのように飛んでいくが、バイスの前で溶けて消えてしまう。)
バイス
その昔…ある好奇心旺盛な精霊が時空の隙間を眺めているうちに、異世界の気に心を奪われていった。
バイス
それを憂慮した他の精霊に逆上し、つららでその目を刺すという事件が起きた。
バイス
この事件を知った水と氷の精霊王は怒り、その精霊を追放した。
だが、その精霊の心は異世界の魅力から離れることができなかった。
バイス
ある時、精霊王がこの場所を訪れた。
精霊は過ちを悔やんでいるかのようにその精霊王に近づき、束縛をかけた…。
バイス
精霊王は何とか泉の外へと出たが、そこで忽然と姿を消してしまった。
精霊は消えた精霊王を探すために、復讐に訪れた人間と雪男を利用することにした。
バイス
仮面をつけた人間はたくさんいるが、精霊は初めてだな。
復讐の女神ネメシスにでもなろうとしたのか?
バイス
束縛の力はこの世界の生命が持つ最も醜いもの…今、その力は俺とつながっている…。
(大地から湧き出た巨大な氷片が、バイスの心臓を貫かんと襲いかかるも、目の前で粉々に砕け散った。)
バイス
…精霊ふぜいに消えろと言われて消える俺ではない。
(バイスがエコーーに近づき、翼をつかんで無造作に引きちぎる。エコーーの片翼は凍ったまま霧散した。)
バイス
貴様が望んだ束縛の力によって拘束される気分はどうだ?
さあ、俺の意のままに生命の力を集めるがいい!
バイス
貴様を助けようとしたゲルダの人間と雪男を利用し、凄惨な殺し合いをさせたあの時のように!!
バイス
そして…時が来れば再び目を開き、役目が終われば再び目を閉じるのだ。
あの惰弱な女神のように…。
(苦痛を訴えていたエコーーの動きが止まる。そして目を閉じたまま、バイスがいる方に顔を向ける。)
(【プレイヤー】の視界が吹雪で覆われる。そして、バイスとエコーーの姿をゆっくりとかき消してゆく。)
【プレイヤー】
(こんなことが…なぜ超人と呼ばれる人たちは、こんな目に遭わなければならないのだろう。)