シナリオクエスト

揺れるつらら監獄

(雪と氷に覆われた邸宅が遠くに見える。指で触れると今にも割れそうな薄氷だ。)
(その前で美しい雪の結晶のような清楚な女が魔法使いらしき少年と話をしている。)
???
それでは私はこれで。
イーオー
ありがとう、フェタ。助かりました。
(イーオーにフェタと呼ばれた魔法使いの少年が去っていく。)
ティティ
イーオー様、お客さんを連れて来たよ。
イーオー
ありがとう。ティティ。
ティティ
それじゃ、僕は仕事があるから雪原に戻るよ。
【プレイヤー】
気をつけて帰ってくださいね、ティティ。
ナリン
この人が…
イーオー
ええ。世界の新たな女神、イリス様の冒険者【プレイヤー】よ。
ナリン
デボラ雪原でも精霊たちがずいぶんと慌ただしい様子だったけど、それもこの人の影響だったのかしら。
イーオー
そうよ。イリス様が変わってしまったから。
【プレイヤー】
イーオー様も何かを感じたのですか?
イーオー
はい…。ああ…そうでした。
あなたに頼みがあるのです。
【プレイヤー】
頼みですか?
イーオー
…礼儀正しいのは良いのですか、私のことはイーオーと呼んでください。
私もその方が楽ですから。
ナリン
そうしてください。
イーオーは冷たそうに見えますが、わがままでそれなりに良い子ですから。
【プレイヤー】
あはは…わかりました。
ところでこの方は…精霊?人間の村に精霊がいるところは初めて見ました。
ナリン
ふふっ…みんな最初はそのように驚きます。
私は水と氷の精霊…ナリンです。
ナリン
イーオーの両親が雪原に倒れていたナリンを助けてくれたのです。それからナリンはずっとここに住んでいるのです。
ナリン
天から授かった子という意味の名前をつけて、とても大切にしてくれました。
【プレイヤー】
素敵な名前ですね。
ナリン
ありがとうございます。
ナリンのことも気軽に読んでください。
イーオー
挨拶はこの辺にしましょう。
女神がここで私を助けてほしいと言っていたのでしょう?
イーオー
もちろん、女神にとっても私の助けが必要でしょう。
イーオー
さあ、これを。これはデボラの氷です。溶けるまで持っていることで、私の力が女神に伝わるでしょう。
【プレイヤー】
ありがとうございます。
ところで、私は何をお手伝いすればよいのでしょうか?
イーオー
実は、デボラ雪原にある雪と氷が溶け始めているのです。
【プレイヤー】
ここに来る時は、雪原が溶けているようには見えませんでしたが。
イーオー
通常では見えない部分…裏側の状況なのです。
【プレイヤー】
なるほど。
イーオー
ガイア様がイーストランドを救った後、デボラ雪原が生まれました。
特別な浄化の気を持った土地…そこでは多くの生命が息づいています。
イーオー
その雪原が溶け始めているのです。
雪や氷が溶けると、暖かい古代のデボラに戻ると思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
イーオー
ここが今まで束縛の力に支配されなかったのは、デボラ雪原の雪と氷が守ってくれていたからなのです。
特に木霊の泉…
イーオー
あそこには、雪原を生み出す気がとても強く存在しています。
あそこに私の知る精霊がいるのですが、何かの力で雪や氷が溶け始めていると助けを求めてきたのです。
イーオー
ですが、その精霊の様子がある時から変わってしまったようなのです。
私を中に入れてくれない状況で…。
イーオー
ナリン
心配し過ぎは良くないよ。
きっと何か理由があるんだ。
【プレイヤー】
精霊と友達なんですね。
ナリン
人間と精霊は常に共存していますからね。
ナリンとイーオーがそうであるように…。
ナリン
エコーーはデボラ雪原にある木霊の泉に住む氷の精霊です。
ナリンは一度も会ったことがありませんが、そこには水と氷の精霊がいっぱいいるそうです。
【プレイヤー】
精霊がいる場所なら、ナリンも会うことができるんじゃないですか?
ナリン
ナリンはその場所に入れませんでした。
そして今となってはどこにあるのかもわかりません。
イーオー
なぜか私だけが入ることを許された場所なのです。
…ナリン?
ナリン
…つらら監獄が揺れている。
【プレイヤー】
あの中に何かあるのですか?
イーオー
一緒に行きましょう、【プレイヤー】。行きながら説明します。
【プレイヤー】
はい。
イーオー
ナリンはここにいて。あとはお願いね。
ナリン
心配しないで。ナリンが精霊の加護で村を守るから。
イーオー
【プレイヤー】、準備はできましたか?
【プレイヤー】
準備できました。では、行きましょう。

(ゲルダの一角…壁に高く建てられている窓格子の間に入るやいなや、強烈な寒気が感じられる。)
【プレイヤー】
この力は…
イーオー
【プレイヤー】も感じましたか。
ここは束縛にかかった狂信徒たちを閉じ込めた監獄です。デボラ雪原の気で浄化を行っています。
イーオー
それも何百年もの間…
イーオー
最初は純粋な信仰だったはずが、どこかで間違ったことに気づかなかったのでしょう。
イーオー
誰かに利用され…命を脅かし…その力を何者かに捧げようとした。
【プレイヤー】
…バイス。
イーオー
バイスの言葉にのみ反応する…みな誰かの家族であり友人なのでしょう。
イーオー
…私は父…そして母を…。
イーオー
…………
イーオー
死んだ者たちはどうしようもありませんが、死せずしてモンスターとなった者たちに小さな希望をかけているのです。
イーオー
私の傲慢かも知れませんが…彼らにいつか日の光を見せてあげたいのです。
【プレイヤー】
あなたならできますよ。
イーオー
…ありがとう。
イーオー
それもあって、新たな女神が力を得ることに協力しているのです。
私だけの力では大変なので、エコーーが助けてくれるって言ってたのですが…。
イーオー
とにかく今は調査が必要です。
泉の力を維持している雪原が溶けたことで、つらら監獄にも影響があるようです。
イーオー
最も硬い氷で建てられた場所が溶け始めるなんて…。
何かのなき声
グオォオオオオ!!
イーオー
この咆哮は…?!…そこにいるのは誰ですか?
???
イーオー様…助けてください…
イーオー
リリオープ?なんでリリオープがここに?
エコーーと木霊の泉にいたはずですが…。
リリオープ
助けてください…申し訳ありません、今はそれしか言えません。
私がそれを解放してしまいましたが、私の意志ではないのです。
どうか…お許しください。
(リリオープは水滴へと変わると、澄んだ音とともに消えた。)
【プレイヤー】
(ナリンと話し方が似ていた…いったい何が起きているのだろう。それに…私とイーオーが来るのを待っているように感じた。)
イーオー
リリオープ?助けてというのは…
イーオー
…………
イーオー
まさか、あれを解放してしまうなんて…
【プレイヤー】
あれ…とは?
イーオー
雪男アルゴス…ゲルダを地獄に陥れた罪人です。
【プレイヤー】
ゲルダを地獄に…
イーオー
すぐに倒さなければなりません。
大丈夫。あの時より私は強い…それに今なら【プレイヤー】もいますから。
イーオー
…………
イーオー
行きましょう。早くこの問題を解決しなければ。

(監獄の最も深い場所…何者かが出られないように立てられた巨大なつららが壊されている。)
イーオー
アルゴス…出てきなさい。
アルゴス
グオォオオオ…イー…オー…
イーオー
私を覚えているようですね。
アルゴス
ああ…グオォ…
イーオー
…………
イーオー
私はあなたが引き起こしたゲルダの地獄を覚えています。
アルゴス
グゥアァアアアアア…
【プレイヤー】
ゲルダの地獄っていったい…
イーオー
…お聞かせしましょう。
イーオー
…………
イーオー
デボラ雪原の片隅には、雪男たちが住んでいました。
私の父はアルゴスおじさまと友達だったのです。私とナリンのように…
イーオー
雪男たちがデイモス教団に襲われ、その時共に戦った2人は戻ってきた時に、束縛されている状態でした。
イーオー
アルゴスおじさまは共に戦った村人たちに気づかず氷の中に閉じ込めた。
そして父は…母を…
イーオー
…………
イーオー
生き残った人々が力を合わせてアルゴスおじさまを捕えました。
それが最善でした…当時は雪男を殺せるほどの力を持つ者は誰もいなかったのです。
イーオー
幼い私は力をつけ、彼が外の世界に出られないように監獄を作りました。
イーオー
私はおじさまを恨んでいました。
でも、こんな姿になることを望んでなんていない!
これじゃ、全部バイスの望みどおりじゃない!!
アルゴス
グ…ア…
【プレイヤー】
イーオー…大丈夫ですか?
イーオー
私は大丈夫です。
私がやらなければならないのです…えっ?
(イーオーの前の壁が割れ、ついていたつららが落ちる。)
イーオー
氷が解ける速度が速くなった?
まさか…ナリンに何かがあったの?
(イーオーが周囲の魔力を集め、監獄に結界を張る。)
イーオー
監獄が破壊されればゲルダが危険です。
でも…ここでアルゴスおじさまを倒さなければ…。
(アルゴスが巨大な氷の武器でイーオーを攻撃する。だが、【プレイヤー】の反撃に驚いて後ろに退く。)
【プレイヤー】
あの雪男は私のことを認識すらしていないようですね。
イーオー
(あの攻撃を正確に弾き返すなんて…。)
【プレイヤー】
こいつとは私が戦います。
だから、イーオーはつらら監獄が崩れないように防いでください!
イーオー
…わかりました。ですが、どうかお気をつけて。
アルゴスおじさまは…完全に暴走しています。
アルゴス
グオォオオオオオ!!
(アルゴスが大声で叫ぶと、イーオーの結界が揺れる。そして、つらら監獄の壁の亀裂がますます大きくなる。)
【プレイヤー】
やるぞ!

(【プレイヤー】の渾身の一撃により、力が抜けたようにアルゴスが座り込む。)
【プレイヤー】
とどめを刺さなければ…じゃないと…
アルゴス
グ…ウウウ…私はいったい…お前は何者だ?ウェバー?ここはどこだ?
【プレイヤー】
ウェバー?誰のことだろう?
アルゴス
女神と一緒ではない?なぜ私はここにいるのだ?
私は確かに…私はどうしてお前を攻撃しているのだ?
アルゴス
イナコスと私は…私は…
イーオー
アルゴス…おじさま?
アルゴス
イーオー…お前…イーオーなのか?
イーオー
束縛が…解けた?
イーオー
…………
(イーオーが信じられないという顔でアルゴスに近づく途中、驚いて転んだ。)
アルゴス
やはりイーオーのようだな。
そのドジっぷりは…さあ、こちらへ。
【プレイヤー】
あ…危ないですよ。
イーオー
大丈夫…【プレイヤー】。信じて。
イーオー
やっぱりおじさまは変わってなかった…それを束縛が…
(イーオーがアルゴスの手を握って立ち上がる。イーオーの中で長らく我慢していた様々な感情が揺れ動く。)
アルゴス
イーオー…
アルゴス
すまない…私は何も覚えていないんだ…本当にすまない。
アルゴス
だから、私が束縛された後の話をしてくれ。
すべて…受け入れるから…。
(アルゴスがすべてを理解したような目でイーオーを見つめる。)
イーオー
…………
イーオー
おじさんは後にゲルダの地獄と呼ばれる状況を作りました。
(イーオーが涙を拭いてアルゴスを見上げる。そして彼の前に座って過去の出来事を話しだす。)
【プレイヤー】
…………
【プレイヤー】
(何て恐ろしい話だ…なぜ神はこの人にこのような試練を…)
イーオー
これが全てです…
イーオー
…………
アルゴス
私は…束縛されていたとはいえ、重大な罪を犯してしまったようだな…すまない。
イーオー
おじさまと父はいつバイスに会ったのですか?
これほどの束縛ができるなんて…バイスしかいないはず。
アルゴス
私たちは雪原に現れたデイモス教団の狂信徒たちを追っているとき、ある泉と過去の記憶を失ってた精霊を発見したのだ。
アルゴス
幼いその精霊は、なぜ自分がここにいるのか思い出せないでいた。
そこでイナコスはその精霊を連れて村へと戻ったのだ。
アルゴス
そして、我々はその泉で束縛の力の一部が作られて広がっていることを発見した。
泉を調査している間、精霊は怯えて助けを求めてきた。
アルゴス
私たちはその翼が凍りついた精霊の頼みを聞いた。
なぜ泉から浄化の力と束縛の力が感じられたのだろう…。
アルゴス
精霊と話すことができたイナコスは精霊の翼を復元させることを約束した。
アルゴス
ところがある日、精霊が泉の中へと私たちを導いた。
それが誤算だったのだ。精霊の眼差しは、かつて見ていたものとは違うものに変わっていたのだから。
アルゴス
精霊の攻撃によって凍らされてしまった私たちは、その時にバイスと会った。
そして…
アルゴス
抵抗したが、その精霊は異質な力を持っていた。
イーオー
…アルゴスおじさま…その精霊はどんな顔をしていますか?
アルゴス
背が高く、凍った翼は半分しかなかった。
恐らく木霊の泉を守るエコーー…
【プレイヤー】
(確か、イーオーが友達と言っていた…)
イーオー
エコーー?エコーーが…
アルゴス
私の記憶はそこまでだ…すまない。
私は罪を償わなければならない…さあ、私を殺してくれ。
イーオー
…そうですね。それがおじさまの望みなら…そして、それがゲルダの代表である私のすべきことですから。
イーオー
どうかお覚悟を…
(イーオーの言葉の途中でどこからか大きく禍々しい力が飛んで来る。だが、イーオーが気づき、巨大な氷の盾を作ってはじき返す。)
イーオー
先に死にたい者がいるようですね。
イーオー
これは…
【プレイヤー】
先ほどの攻撃は…?
イーオー
出てきなさい。
【プレイヤー】
…………
(イーオーの言葉を聞くと、地面から氷が水玉のように跳ね、ある女の形を作りだす。)
(凍った精霊の翼はとても美しく見えるが、壊れた左の翼には不吉な力が感じられる。)
エコーー
…………
アルゴス
お前…
エコーー
…………
(アルゴスがエコーーに近づこうとした瞬間、アルゴスの全身から巨大なつららが生まれる。)
アルゴス
グアッ…
アルゴス
…………
アルゴス
(アルゴスが力なく地面に崩れ落ちる。)
イーオー
アルゴスおじさま!?
イーオー
何をしたの!?
エコーー
助けて…
(エコーーが軽く微笑みながらイーオーを見つめる。)
エコーー
お願い…助けて…
イーオー
…エコーー?
エコーー
私の話を聞いて…私は…私は…
イーオー
あなたは私に木霊の泉を出ることができないと言っていましたね?
なのに、どうしてここにいるの?
イーオー
しかも…憎き束縛の力を広げている。
それに助けてほしいですって?いったい何様なんですか?
エコーー
私を…助けて…
エコーー
木霊の泉に来て……泉への道はあなたに開かれている…
(エコーーの言葉とは異なり、イーオーに向かって巨大な氷を作り出した。)
【プレイヤー】
あの精霊の様子がおかしい。このままではイーオーも危険だ。
(その時、エコーーが作り出したつららが溶けて底に落ちた。そして精霊エコーーもそのまま水滴となって消える。)
エコーー
助けて…私を…
イーオー
…………
イーオー
いったいどういうことなの?
イーオー
息が…詰まる…息ができない。
【プレイヤー】
イーオー、大丈夫ですか?
イーオー
急いで戻らなければ…ここは束縛の力で溢れています…エコーーが広めていった…
【プレイヤー】
しっかりしてください!私につかまって!
【プレイヤー】
ナリン!ナリンはいますか?