シナリオクエスト

忘却と真実(2)

ゼナ
レーテという方が現れた時と同じ……雰囲気は少し違いますが。
ということはあなたは……。
イリス
ふふ、その通りです。
【プレイヤー】
裏側……。
イリス
【プレイヤー】、そうですよ。
存在しながらも存在しない場所。
【プレイヤー】
ゼナが知りたい真実はどうすればわかるのかな?
イリス
手の中にある真実の炎に声をかけてください。
そして真実が必要な人の名前を伝えれば、真実の炎は答えてくれるでしょう。
【プレイヤー】
わかった。
【プレイヤー】
あの…、知りたいことがあるんだ。
ゼナ、ゼナの真実が知りたいんだ。
【プレイヤー】
……。
(真実の炎に声をかけるも、反応がない。)
【プレイヤー】
………?

(闇が少しずつ消え、ゼナの悲しい顔が目に入る。)
【プレイヤー】
これは……。
ゼナ
……。
ゼナ
そうだったのですね。
もやもやしていたものが消えました……。

ゼナ
……。
ゼナ
私は死んだわけではなく、消滅していたのですね。
ゼナ
そして、こうしてここでゼナと名乗っている存在は、お兄様の深い悲しみが生み出した思念体……。
エル
…どういうことですか?
【プレイヤー】
エル、それがですね……。
【プレイヤー】
(エルに話をする。)
エル
………。
エル
…真実の炎でわかったゼナ様とジスカド様の過去。
この話については口外しません。
ゼナ
ありがとうございます。
エル様。
そして、【プレイヤー】様……。
【プレイヤー】
大丈夫ですか、ゼナ?
ゼナ
ええ、私が記憶で造られた存在だとしても。
…本物のゼナだったら、もっと素敵でしたけど。
(ゼナが笑顔を見せる。)
ゼナ
私がここにこうして存在できているのは、ずっとここを忘れていないお兄様のおかげですから…感謝しています。
ゼナ
……。
ゼナ
【プレイヤー】様、色々とありがとうございました。
【プレイヤー】
え?
ゼナ
真実の炎も手に入れて、私の真実も明らかにしてくださいました。
…もうここに用はありませんよね。
【プレイヤー】
…あの、ゼナ。
大丈夫ですか?
【プレイヤー】
イリス、イリス!
どこにいるの?聞いてる?
(【プレイヤー】の呼びかけによって、イリスの幻影が皆の前に現れる。エルには見えないのか、怪訝な顔をしている。)
イリス
はい、私はここにいます。
イリス
真実の炎が持つ力は、「真実」を見せること。
その代わり……。
ゼナ
私についての「記憶」は真実ですが、「存在」は真実ではありません。
ですから……。
エル
ハッ……。
【プレイヤー】
そんな……。
【プレイヤー】
本当に方法がないのかな?
イリス……。
イリス
……。
イリス
【プレイヤー】、先に戻ってください。
(イリスが頭を下げる。)
【プレイヤー】
イリス…あれ?
【プレイヤー】
(イリスが微笑んでいる。でも、エルとゼナは感じていないようだ。)
(顔を上げると、イリスの姿は消えていた。)
【プレイヤー】
…ふむ……。
エル
今イリス様がここにいらっしゃるのですか?
そしてゼナ様が……。
エル
……。
【プレイヤー】
私達は帰ります…。
ゼナ、あなたに会えて良かった。
ゼナ
【プレイヤー】様、エル様。
このご恩、絶対に…忘れません。
エル
ゼナ様……。
エル
……。
(ゼナは何とか笑顔で二人を見送る。彼らの姿がジスク領地から見えなくなるまで手を振りながら…。)
ゼナ
……。
ゼナ
流れる涙を拭きなさい、と♪
風が私と君に触れる♪
ゼナ
……。
…大地の女神様♪
通りすがる風を捕まえてください♪
ゼナ
……。
ゼナ
やっと続きを思いだせたわ。
これもお兄様の記憶なのね。
ゼナ
……。
体がぼやけてきてしまったわ……。
ゼナ
……。
ゼナ
……さようなら……。
(ゼナが目を閉じ、その時を待つ。)
ゼナ
………ハッ?
ゼナ
風を…感じる……。
(ゼナが前を見ると、ひとりの女性が立っていた。)
ガイア
可哀想な子……。
ゼナ
どなたですか…?
ガイア
よかった、まだ眠ってなくて。
ゼナ
ハッ、あなたは……。
ガイア
ええ。私はガイア…。
真実の炎が取り戻してくれた記憶が、皆の役に立ちました。
ガイア
手伝ってくれたあなたに、贈り物があります。
ゼナ、ここに残ってくださいませんか?
ゼナ
えっ?
(ガイアが微笑む。)
ガイア
ゼナ・ジスクの精神と記憶は一つとなった。
この者がここに留まることを許可せよ。
ガイア
これ以上、悲しい記憶で苦しまないよう……。

エル
……。
エル
あそこにジスカド様がいらっしゃいますね。
ここで少しお待ちください。
【プレイヤー】
わかりました。
(向こうの方にジスカドの後ろ姿が見える。じっと立っているように見えるが、肩が僅かに揺れている。)
ジスカド
……。
ジスカド
大丈夫だ。おかえり。
エル
ただいま戻りました、ジスカド様。
ジスカド
エル、ご苦労だった。
【プレイヤー】、君にも大変だっただろう。
【プレイヤー】
いえ。
それで、これなんですが……。
【プレイヤー】
(ジスカドに宝石の形の真実の炎を渡す。使い方は説明しなくても大丈夫そうだ。)
【プレイヤー】
……。
【プレイヤー】
(ジスカド様……あの後ゼナはどうなったんだろう?)
ジスカド
…ありがとう。
【プレイヤー】
はい?
ジスカド
ゼナについては心配無用だ。
【プレイヤー】
それって、どういう……。
ジスカド
神の計らいで消滅しないことになった。
ジスク領地にとどまることになりそうだ……。
エル
本当ですか!?
よかった……。
【プレイヤー】
ゼナ……本当に…。
エル
ジスカド様、私は先に戻ります。
お二人のお話の邪魔になりそうなので…。
ジスカド
ありがとう、エル。
また後で声をかけるよ。
エル
あ、【プレイヤー】さん。
ジスカド様はユランさんに言われて禁酒中なので、誘われても断ってくださいね。
【プレイヤー】
はい、わかりました。
ジスカド
ほお、この野郎……。
エル
では、戻ります。
(エルがホワイトコール峡谷の方に向かって歩いていく。仕事を終えてすっきりしたようだ。)
【プレイヤー】
ジスカド様…今回のことも自然とわかったのですか?
ジスカド
ああ……。
【プレイヤー】
超人は本当に……。
ジスカド
何を言おうとしてるのかはわかっている。
たとえ知りたくなくても仕方ないことなんだ。命を諦めない以上。
ジスカド
最初は到底受け入れられなかったが、神がイーストランドを愛する証拠と思えばね。
ジスカド
今日という日は特別だな。
女神様にも、君にも、エルにも、感謝しなければならない日だから……。
ジスカド
……。
ジスカド
妹を守れなかったという罪悪感が大きかったようだ。
そんな風に歪められた記憶として生きていたなんて……。
ジスカド
……。
ジスカド
デイモス教団をジスク領地に呼んだのはダフネ…あの女のせいだったか……。
ジスカド
メディアに会いに行かなければならないな。
彼女なら何か知っているだろう。
【プレイヤー】
(メディア、ダフネ…そういえばジェレニス魔法学園の学園祭の名前もダフネだったよね……。)
ジスカド
それにしても、ゼナに会って何を話せばいいんだ…?
【プレイヤー】
楽しみですね。
ジスカド
あの子が好きだった物をたくさん用意しなければならないな。
【プレイヤー】
いいですね。
ジスカド
しかし、生きているわけではないから…大丈夫だろうか?
【プレイヤー】
(…後でゼナの所に行ってみよう。)
ジスカド
妹と話ができるようになったが…もう450年も経っている……。
ジスカド
……。
(ジスカドが複雑な表情をしている。)
ジスカド
あ、【プレイヤー】…遅くなったな。
さあ、私に背中を見せてくれ。
【プレイヤー】
え、背中を?
ジスカド
いいから。
(慌ててジスカドに背中を見せる。しばらくすると、巨大な光に襲われるような感覚になった。)
ジスカド
…私が持つ力がイリスくんの役に立つといいのだが。
さあ、では本題に移ろう。
【プレイヤー】
ええ。それで、ジスカド様が知りたい真実は何ですか?
ジスカド
バイスとデイモス教団に関することだ…ではやってみよう。
ジスカド
真実の炎よ……。
(ジスカドの手の上で炎が大きくなり、揺れる。しばらくして炎が小さな宝石の形に戻ると、ジスカドは苦悶の表情を浮かべた)
ジスカド
……。
【プレイヤー】
ジスカド様?
ジスカド
……。
ジスカド
ほんの少しだったが…私が見たものを話そう。
ジスカド
バイスが今まで見せていたものは全て予行演習だったんだ。
決定的な一つのことのための……。
【プレイヤー】
決定的な一つのこと?
ジスカド
私の考えだが、「デイモス」をこの地に降臨させようとしているようだ……。
ジスカド
……。
【プレイヤー】
……。
ジスカド
私がもう少し調べてみる。その間、君は休息を取ってくれ。
ジスカド
いつも忙しい君が素直に休憩を取るとは思わないがな、ハハ。
そして、真実の炎は安全な場所に保管しよう。
(ジスカドは無理やり笑っているようだ。)
【プレイヤー】
ジスカド様……。
ジスカド
私は大丈夫。そしてもう一つだけお願いだ。
ここで起きたことは口外しないで欲しい。まあ、皆に知れ渡るのは時間の問題だと思うが。
【プレイヤー】
はい、わかりました。
ジスカド
ありがとう。
私はもう少しここにいるよ。
ジスカド
……。
【プレイヤー】
では、私は先に戻りますね。
(ジスカドがホワイトコール峡谷に向かって行く【プレイヤー】の後ろ姿を見つめる。)
ジスカド
……。
ジスカド
冒険者よ、感謝するぞ。
(ジスカドが手の中にある真実の炎をじっと見つめる。)
ジスカド
……。
ジスカド
どうかこの世界では最後まで生き残り、皆と共にすることを願おう。