シナリオクエスト

忘却と真実(1)

ゼナ
流れる涙を拭きなさい、と♪
風が私と君に触れる♪
ゼナ
……♪
ゼナ
……続きが思い出せないわ。
どんな歌だったかしら?
【プレイヤー】
いい歌ですね、ゼナ。
ゼナ
ありがとうございます。
あまり上手ではないのですが……。
エル
ゆ…幽霊様が歌っていたのですね!
なんだか聞こえて来るような気がしてたんです……ハハ。
【プレイヤー】
アハハ……。
ゼナ
私の所に来たということは…真実の炎は見つからなかったのですね。
【プレイヤー】
ええ、残念ですが。
ゼナ、他に心当たりはありませんか?
ゼナ
心当たり…あの冒険者様……。
【プレイヤー】
はい?
ゼナ
今、何かを感じていませんか?
【プレイヤー】
うーん…あ、もしかしてイリスのことですか?
ゼナ
イリス…?
あ、ここに来た時話してくださった、神になった方のことですね。
【プレイヤー】
ええ、そうです。
ですがイリスはここにはいません。いや、さっきまでいたんですけど…ええと、少し複雑で……。
ゼナ
……。
【プレイヤー】
……。
ゼナ
もしかしたら、別の神のような存在がここに……。
【プレイヤー】
(ゼナが話し終えた瞬間、寒気が走る。)
ゼナ
…あの、あなたはどなたですか?
(ゼナが質問すると周りの空気がさらに冷たくなり、エルの姿が固まって行く。)
???
…バレてしまいましたか。
話が聞きたくて近づいただけです。
(どこかで女性の声が聞こえる。)
???
【プレイヤー】……。
【プレイヤー】
(私を知っている…?この感じ、ガイア様に会った時と同じ…けど、何かが違う。少し変質したような…)
???
あなた、手ぶらで帰るつもりはないのでしょう?
ゼナ
……。
【プレイヤー】
もちろん。
そのつもりはありません。
???
ふふ、では…少し話をしましょうか?
(瞬間、ありとあらゆるものが不吉なオーラで溢れかえった場所に変わる。)

ゼナ
ここは……。
【プレイヤー】
(前、誰かに強引に連れて行かれた場所と似ている…)
【プレイヤー】
(けど、ただジスク領地が暗くなっただけのようだ。)
【プレイヤー】
……。
【プレイヤー】
出て来てください。

(暗くなったジスク領地が元の姿に変わる。)
【プレイヤー】
……。
【プレイヤー】
これは一体……。
エル
【プレイヤー】さん!ずっと探してたんですよ。
どこに行ってたのですか?
【プレイヤー】
エル、それが……。
【プレイヤー】
(エルに今体験したことを話す。)
エル
……。
エル
信じられませんが…冒険者さんが経験したことですから……。
(エルが湖をじっと見つめる。)
エル
真実を知りたいなら来て欲しいとのことですから……。
エル
私達が探しているものはあそこにあるのですね。
ゼナ
…真実を知る準備……。
エル
あなたは…!?
ゼナ
私が見えるんですか?
【プレイヤー】
きっとレーテの影響でしょう。
エルもゼナが見えるようになったということは……。
エル
よかったです。
こういう形でも見ることができて……。
エル
そういえば、ジスカド様と似ているような……。
ゼナ
ええ、妹ですから。
エル
私の目に見えても幽霊なのは間違……ヒッ、足がない。足が!
【プレイヤー】
あはは…では行ってみます。
ゼナ
はい、どうかお気を付けください。
エル
私も一緒に行きます。
【プレイヤー】
エルはここで待っててください。
レーテが待っているのは私だけですから。
エル
……。
エル
はい、わかりました。冒険者さんなら……。
【プレイヤー】
ありがとうございます。ではここでゼナを守ってください。エルを信じています。
エル
はい、では武運を祈ります。
【プレイヤー】
行ってきます……。
ゼナ
どうかお気を付けて。
ゼナ
……。
ゼナ
エル様。
エル
は、はい!
…なんだか慣れませんね。
亡くなった方とお話ができるなんて……。
ゼナ
ただ、普通の幽霊と話していると思っていただければ。
エル
(さすがジスカド様の妹だけあって、普通ではないな…)
ゼナ
真実とは一体何でしょうか?
私が知っても良いものなのでしょうか?
エル
ふむ……。
エル
こんな話があります。「嘘とはコインのようなもので、ひっくり返せば違う面が現れる。それが真実だ」…と。
ゼナ
なるほど、とてもためになるお話ですね。
エル
ええ。
エル
……。
エル
(兄が教えてくれた…)
ゼナ
ここの空気もなんだかおかしいです。
今にも敵が現れそうな……。
エル
心配は無用です。
ジスカド様と冒険者さんを邪魔する全ての敵はこの私が斬りますから。

(湖の最後の道―レーテの姿は見えない。)
【プレイヤー】
レーテはどこだ?
【プレイヤー】
あ、あそこ…誰かがいるようだけど……。

(レーテがガクッと膝を付き、両手の炎が地面に滑り落ちる。)
レーテ
…そんな……。
レーテ
私の炎が……。
レーテ
あ、熱い………!
【プレイヤー】
……。
【プレイヤー】
神だった存在も、何かを成すために取引をしたのか……。
【プレイヤー】
一体……。
【プレイヤー】
……。
(レーテは何とか炎を掌に載せようとするが、熱さのせいでうまくいかないようだ。)
【プレイヤー】
あれが真実の炎……。
【プレイヤー】
全然熱くない。
ところでこれ……。
(手を伸ばす【プレイヤー】の胸の中に真実の炎が飛び込む。)
【プレイヤー】
ハッ、これは……。
レーテ
……。
レーテ
…私が見たくなかった真実は…これだったのですね。
レーテ
私が憎み、嫌悪した彼らと同じ結末……。
【プレイヤー】
……。
レーテ
炎との再会の理由はこれだったのですね。
誤った選択をした私を叱責するため……。
レーテ
人間…、いや、【プレイヤー】……。
【プレイヤー】
…レーテ……。
レーテ
言いましたよね。
真実を知りたいなら私を倒しに来なさい、と。
レーテ
私を倒してください。
そしたらあなたは今まで知りたかった一つの真実を知ることができます。
【プレイヤー】
嫌です。
レーテ
……。
【プレイヤー】
必要なのはこの真実の炎だけ。
真実を知り、悪を止めたいだけです。
(レーテが驚いた顔で見詰める。)
レーテ
あなたは他の存在とは違いますね。
私が人間達を誤解していたのかも……。
レーテ
ああ、あなたはセレスとガイアの選んだ……。
レーテ
……。
レーテ
でしたらあなたが知りたい真実を一つだけ教えましょう。
あなたと係わる……。
【プレイヤー】
あなたの存在が気になるけど、今、一番大事なことじゃない。
私に係わる真実…私がレーテを倒す、とかじゃないですよね?
レーテ
そんなことではありません。
疑わないで、喜んで受け入れてください。
【プレイヤー】
一つだけ、ですか?
(レーテが頷く。)
【プレイヤー】
でしたら…私はどうして記憶を失ったんですか?
レーテ
あなたが記憶を失ったのは、新たな神となった子があなたを護るためです。
レーテ
だから、あの子を恨まないでください。
セレスが悲しみます。
(話終えると、レーテの姿が消えて行く。)
【プレイヤー】
レーテ……。
レーテ
特別な力を持つ者が一度だけ真実を知ることができます。
私の炎を大切にしてくださいね。
レーテ
心配しないでください。
私はまた元の場所に戻るだけです。真実なのか忘却なのか分からない場所へ……。
レーテ
……。
【プレイヤー】
……。
【プレイヤー】
レーテが消えた。
(真実の炎が【プレイヤー】の手に小さな宝石の形で残った。)
【プレイヤー】
……。
【プレイヤー】
私が知りたかったのは、本当に記憶に関することだけなのかな。
【プレイヤー】
とりあえずエルとゼナがいる場所へ戻ろう。
【プレイヤー】
……。

ゼナ
【プレイヤー】様、お怪我はありませんか?
エル
よかった。
大丈夫そうですね。
【プレイヤー】
はい…何が起きたのか説明します。
【プレイヤー】
(湖であったことを簡単に説明する。)
(エルとゼナがある程度理解したような顔をする。と同時に、エルがゼナの隣に立つ一人の男に気づく。)
エル
待って、あなたは誰ですか?
ジェリル
あなたは美しいな。
お姫様、と呼びたいくらいだ……。
ゼナ
あ、ありがとうございます。
あなたも私が見えるんですか?
ジェリル
ふふ、俺の目は特別製なんだ。
そこの【プレイヤー】、俺を覚えてるか?
【プレイヤー】
確か、名前はジェリル……。
ジェリル
俺の名前はちゃんと覚えてるんだな。本当ならカズノが来るはずだが、体の状態がな…。
で、俺が代わりに来た。
【プレイヤー】
お前は確か……。
(ジェリルが【プレイヤー】の傍まで近づく。)
ジェリル
そこまでだ。
ジェリル
俺について語るな。
もし逆らえば……。
【プレイヤー】
……。
ジェリル
それより、カズノからの伝言だ。
【プレイヤー】
なんだ?
ジェリル
何の真実が知りたいのかはわからないが、それが皆にとって最良だなんてことはない。
ジェリル
そしてそれを選ぶのは冒険者、お前だ。
【プレイヤー】
そんなことくらいは知ってると伝えてくれ。
ジェリル
カズノは引き続き蛇を追うみたいだ。俺もまあ…また他の罪人がアズラエルのためにやってることを止める方法を探していて……。
【プレイヤー】
アズラエル!?
ジェリル
ああ、アズラエル。詳しいのはその罪人に会った時に聞けばいいさ。
俺もまだ話すことはできないんだ。
ジェリル
だからまた会える終わりまで元気でな。ふふ。
ジェリル
あ、一つの真実はレーテが話したから、他に知りたいことがあれば、その持っているやつを使うといいよ。
ジェリル
領地を離れた瞬間、お前の権限は消える。
【プレイヤー】
私の権限?
また会える終わりって…。
(ジェリルは話終えるとどこかに向かって消えた。)
【プレイヤー】
……。
【プレイヤー】
バイスの話と同じだ。
終わりって一体……。
【プレイヤー】
それより、ここから出ると真実の炎が使えないだなんて…知りたいことをどうやって調べればいいんだ?
【プレイヤー】
(私に関することはレーテが教えてくれたから…)
(エルとゼナ、二人と目が合う。)
【プレイヤー】
あ……。
エル
私は大丈夫です。
真実が必要な部分もありますが、それは私が明らかにすればいいだけの話ですから。
エル
ところで、先ほど現れたのは何者ですか?
いや、今大事なのはそれではないですね。そして私よりは……。
【プレイヤー】
ふむ……。
【プレイヤー】
ゼナ…、気になっていることがありましたよね?
どうして死んだ時の記憶を持っているのか。
ゼナ
良いのでしょうか?
そんな貴重なものを私に使っても……。
【プレイヤー】
大丈夫ですよ。
【プレイヤー】
でも、どうすればいいいんだ?
(悩んでいた【プレイヤー】の前にイリスの幻影が鮮明に現れる。)
【プレイヤー】
イリス?
イリス
悩まないでください。
【プレイヤー】
イリス、大丈夫?さっき……。
イリス
私は大丈夫です。逆に慰めてもらいました。
今話したいのはそのことではありません。
イリス
初めまして。
会えて嬉しいです、ゼナ。
ゼナ
私が見えるのですか?
あなたも普通の方ではないのですね。
イリス
私はイリス。あなたのお兄様にはとてもお世話になっています。
ゼナ、私に近づいてもらえますか?
ゼナ
はい。
(ゼナがイリスに近づいた瞬間、ジスク領地の空気が変わった。)