(ジェレニス坂を二人の人物がゆっくりと歩いている。)
ファルミラ
カルロネ、あなたどうしてそんなに黙っているの?
カルロネ
迷子の猫を探しに、ジェレニス坂まで来るとは思いませんでした。
ファルミラ
マルテリさんの頼みだから仕方なかったの。
迷子の子猫って、なんだか放っておけなくて。
カルロネ
帝国はそうだとして、リベラでも傭兵団を金銭的に助けていると聞いていますが……。
カルロネ
あのお金は、一体どこに使われているんですか?
ファルミラ
知りたい?その前に私の方からも聞きたいことがあるんだけど。
カルロネはどうしてここに来るのが嫌なの?
カルロネ
い、いいんです。止めましょう。
ゼフィロスとクロリスに会わなければそれでいいので……あ、あそこに魔法学園ジェレニスの生徒がいますね。
カルロネ
あっ、そこの学生さん。この猫をみかけませんでしたか?薄い茶色の毛に青い瞳の……!
ま、待って!
カルロネ
(女子生徒にチラシを渡そうとしたカルロネが、その顔を見て動きを止めた。)
シエナ
ここに猫なんていませんよ。
何かの間違いではありませんか?
あれ、あなた達は……。
カルロネ
み、見間違いです。わ…私達は迷子の傭兵団を見つける猫、い、いや。いや、通りすがりの猫、いや…ええと……。
カルロネ
失礼いたしました。ご無礼をお許しください。
ところで、あなたのようなお方が、どうしてこんなところにいらっしゃるのですか?
シエナ
それは私の質問ですよ、カルロネさん。
私はここの学生ですが、あなたはどうしてここに?魔法庁に頼まれたんですか?
シエナ
では後で来ていただけますか。
今は校長先生と理事長はいません。それより一緒に来た方は……。
シエナ
(シエナがカルロネの後ろで隠れて見えてなかったファルミラを見つける。)
ファルミラ
猫を探してくれって…こういうことだったのね。
仕方がないわ。
ファルミラ
(ファルミラがカルロネの前に出て笑う。)
ファルミラ
お久しぶりね、子猫ちゃん。
シエナ・ダーン・シルバリア皇女。
カルロネのことも知っているなんて、思ったより顔が広いのね?
カルロネ
(…これ、なんか面倒くさいことが起きそうだな……)