シナリオクエスト

力を求める者(6)

ウル
……。
【プレイヤー】
ウル、やっと見つけた。
……ウル?
ウル
……。
【プレイヤー】
人が話しかけているのに知らんぷりか?
一体何を考え込んでいるんだ?
ウル
…あとどの位、修練を続ければいいのかを考えていたんだ。
【プレイヤー】
ウル、君に伝えなければいけないことがあるんだ。
ウル
…どうせまた、ユランが余計な心配をしているんだろ?
【プレイヤー】
よくわかってるじゃないか。
もしかして、わざとこんなことをしているのか?
ウル
こんな話、するだけ時間の無駄だ。
結論なんてどうせ出ない。
…それよりお前。
ウル
お前の力はなんだかおかしい。
もしかしたらお前は……。
ウル
(ウルが剣を【プレイヤー】の顔の前まで振り下ろす。)
【プレイヤー】
!!
…なんだよ、急に?
ウル
(ウルが剣を構えるのをやめ、笑う。)
ウル
ハハッ…すまない、どうやら俺の早とちりだ。
ここは穢れたオーラが多すぎて、勘違いしたらしい。
【プレイヤー】
…私と対決したいのかと思った。
ウル
フッ……面白い、お前なんかが俺の相手になれるとでも思っているのか?
ウル
(ウルが軽く笑った瞬間、ウルの周囲に威圧的なオーラが一気に広がり……消えた。)
ウル
まあ、遅かれ早かれ相手してやるよ。
その時までせいぜい修練を積んでおくんだな。
【プレイヤー】
そんなのこちらからお断りだ。
ウル
俺が!戦いたいんだよ……正式に決闘を申し込んでやるよ。
ここのおしゃべりカラスもお前が倒したんだろう?
【プレイヤー】
そうだけど、その時は……。
ウル
まあ、いい。
今日のところはここまでだ。早く消えろ。俺はここで修練をする。
【プレイヤー】
ユランにはなんて言えば……。
ウル
何の心配もないと伝えてくれ。
ただの修練なんだ、何かが起きるわけなんてない。
【プレイヤー】
はあ……もう何を言っても仕方がないな。
大丈夫そうだし、もう帰るよ。
ウル
……。
ウル
(ウルは【プレイヤー】の姿が消えても剣を振り続ける。しばらくすると、ウルの動きを止めさせるような、怪しい者達の気配が現れた。)
ウル
(…怪しい気配だな。少し様子を見るか。)
(赤い髪の男女がとぼとぼとどこかから帰って来たようだ。だが、仕事が上手くいかなかったのか、険しい顔をしている。)
マーラ
兄さん、いつまで歩くの?
魔石を使ったらすぐに…
ヴァン
マーラ、何回も言っただろ?
シャイニックにバレないためには仕方ないんだ。せっかくここまで来たのに、まだそんなことを言うのか?
マーラ
ハイハイ、わかってますって。
それより、なんで悪魔が持って来る魔界の痕跡なんか必要なの?まだ魔石がたくさん残ってるんだよ?これだけあればモス王国位……。
ヴァン
(マーラが魔石袋を取り出して見せると、ヴァンがそれを奪い、床に投げつけてしまう。)
マーラ
兄さん、何をするの!?
ヴァン
マーラ、お前はこの魔石で何でもできると信じているが、俺達はもう何回も失敗したんだ。考えを変えられないのか?
ヴァン
全部……あの女神と女神の従者のせいだ。俺達の計画に首を突っ込みやがって……次会ったら絶対殺してやる。
マーラ
あの男と契約したら、大陸を一つ譲ってくれるんじゃなかったの?
なのに何なの……。
ヴァン
それはもう終わったことだ、思い出させるなよ……クソッ。
ノックス王子…あの蛇野郎は言うことを全然聞いてないし…ここまで来たら最後まで押し通すしかない。
ヴァン
モス王国が滅亡する前に、足掻いてみるんだ。
マーラ
わかったよ、兄さん。オネイロに行こう……でもあの魔石……。
ヴァン
捨てておけ。
どうせ使い物にならない不良品だ。
(ヴァンとマーラが奈落の間の入口の方に消えると、暗闇からウルがゆっくりと姿を現す。)
ウル
……。
ウル
あの気配、あいつらが元凶だったのか….
この魔石……まだ魔力が残っているようだな?
ウル
……。

ユラン
……。
ユラン
おかえりなさい。
ウルには…会えましたか?
【プレイヤー】
ええ。タルタロスの中にある「奈落の間」にいました。
ユラン
ウル…よりによって、なんで奈落の間に……。
【プレイヤー】
どうしたんですか?
ユラン
魔界から奈落の間に流れて来たマルパスのせいで、タルタロスが騒然としていた時期がありました。
ユラン
シャイニックが用意した賞金を手に入れようとして、たくさんの人がマルパスを倒そうとしましたが…誰も倒すことはできませんでした。命を落とし、魂を奪れた者もいました。
ユラン
ウルも挑戦したのですが、ランダインという者に傷を負わされ、棄権するしかありませんでした。
ユラン
その後、ウルは再びマルパスを倒そうとしたのですが、既に【プレイヤー】様に倒されていました。
ユラン
表には出さないかもしれませんが、あの子は【プレイヤー】様の存在が気になるのでしょう。
【プレイヤー】
……。
ユラン
【プレイヤー】様は、自分が倒せなかった相手を倒した存在ですから。
【プレイヤー】
…私のせいでウルが力に執着し始めたと言いたいのですか?
私は私のやるべきことをやっただけです。
ユラン
いえ、そんなつもりは……そう聞こえてしまったのなら申し訳ありません。
【プレイヤー】
ウルを子供扱いしすぎなのではありませんか?
ウルはただの修練だから本当に心配するな、と言っていましたよ。
ユラン
……。
ユラン
そうですか。
では、師匠にもそう伝えます。
【プレイヤー】
あと、こんなことは二度と私に頼まないでください。
ユラン
……承知いたしました。
【プレイヤー】
そういえば、イリスの修練の調子はどうですか?
なかなか本体に会える機会がなくて……。
ユラン
……本体、というのは?
【プレイヤー】
あ…いえ、なんでもありません。
修練に集中してるのに邪魔してはいけませんね。では、これで。
ユラン
はい、ではお気を付けて。
ユラン
……。
ユラン
(【プレイヤー】の姿が遠くに消える頃、イリスがゆっくりとユランに近づく。)
イリス
今日の修練は早く終わりました。
ビルブラトももう飽きたみたいで……。
ユラン
……「本体」がいらっしゃいましたね。
イリス
え?
イリス
……あっ…。
ユラン
イリス様、時間は守っていただかないと。
イリス様もおっしゃった通り、【プレイヤー】様に影響を及ぼす可能性があります。今さっきまでここにいらしたのですよ。
イリス
ごめんなさい、気を付けます。
ですが、その代わりに……。
ユラン
……。
イリス
それを確認するために、あの方とウルを利用するのは止めてください。
ユラン
利用ではありません。
ただ知りたかっただけなのです…。もしも、もしもです。
ユラン
もし、何か間違いが起きてしまったら、私とジニーが彼を…始末しますから。
イリス
そんなことは絶対に起きません。
あの方はそんな風にはなりません。私が望んでいませんから。
ユラン
ええ。
皆が最悪を望んでいるわけではありませんから……。
イリス
……。
イリス
(【プレイヤー】……。)