黒月姫
ここがどこだと思ってるん…あれ?この間の方ですね。また何かご用ですか?
黒月姫
…お父様。私もお父様のことを愛しておりますが、急に現れて抱きしめようとするのは……!
黒月姫
(姫が城主に向けて弓を放つ。よくあることなのか慣れているようだ。)
黒月姫
もう騙されません!
お父様の目薬は、私の手の中にありますから。
黒月城主
ちっ…仕方ない。
そうだ、娘よ。一緒に【プレイヤー】の話を聞こうじゃないか。
【プレイヤー】
役に立ちそうなものを持ってきました。姫様は持っているだけで大丈夫です。
黒月城主
これはなんて呼ぶものだ?原始的なオーラが溢れているようだ。
【プレイヤー】
記憶の欠片です。これを持っていれば大丈夫ですよ。
【プレイヤー】
はい、記憶を失くした人にだけ反応します。おそらく……。
黒月姫
(姫が疑るように記憶の欠片と父親を交互に見つめる。城主が頷くと記憶の欠片を手に取る。)
黒月姫
(黒月姫の手の中で記憶の欠片が溶けて消える。何かを感じた姫の顔が青ざめて行く。)
黒月姫
私…今まで何かを忘れていたみたい…でも……それがなんなのかわからないの……。
黒月姫
(黒月姫の表情が戻る。ある程度安定したようだ。)
黒月姫
ああ、そう。あなたはイリスを探すために旅に出かけた人だったわ。それで、イリスは見つかったの?
【プレイヤー】
(今までイリスにあったことを話す。)
黒月姫
そうなのね。でも、私はこれからもイリスを理解できないわ。理解したくもない。そして……。
黒月姫
はい、お父様。全部ではありませんが…誰かを忘れている気がします。
黒月姫
(少し言葉を失くした姫の目に涙が流れる。)
黒月姫
【プレイヤー】、あなた…どうして私にこんなものを持ってきたのよ!どうして急にこんな気分を味わわなければいけないの!
黒月姫
お父様、お父様。私が忘れている人が誰なのかご存知でしょう?私、覚えているのに名前が…その名前が出てこないのです……。
黒月城主
(姫の姿が見えなくなると、城主の瞳が悲しみに溢れる。)
黒月城主
やっとわかったんだ。俺の娘がどうしてあの子を忘れてしまったのか……。
あの子の契約内容はわからないが、代価が娘の記憶だなんて……。
黒月城主
酷すぎるじゃないか。どうしてここまで……。
黒月城主
とにかく、たとえ一部だとしても娘の記憶を取り戻してくれたことに感謝しよう。戻ったらイリスに、いや女神イリス様によろしくお伝えしてくれ。