シナリオクエスト

イリスの不安(5)

黒月姫
ここがどこだと思ってるん…あれ?この間の方ですね。また何かご用ですか?
【プレイヤー】
あ、それが……。
黒月城主
娘よ、あの人は俺の客だ。
黒月姫
…お父様。私もお父様のことを愛しておりますが、急に現れて抱きしめようとするのは……!
黒月姫
(姫が城主に向けて弓を放つ。よくあることなのか慣れているようだ。)
黒月城主
しくしく…俺の娘が…俺の娘が……。
黒月姫
もう騙されません!
お父様の目薬は、私の手の中にありますから。
黒月城主
ちっ…仕方ない。
そうだ、娘よ。一緒に【プレイヤー】の話を聞こうじゃないか。
黒月姫
私が聞いても良い話なのですか?
【プレイヤー】
役に立ちそうなものを持ってきました。姫様は持っているだけで大丈夫です。
黒月城主
これはなんて呼ぶものだ?原始的なオーラが溢れているようだ。
【プレイヤー】
記憶の欠片です。これを持っていれば大丈夫ですよ。
黒月城主
ただ持っているだけで大丈夫なのか…?
【プレイヤー】
はい、記憶を失くした人にだけ反応します。おそらく……。
黒月城主
君も確信はないようだな。
黒月姫
……。
黒月姫
(姫が疑るように記憶の欠片と父親を交互に見つめる。城主が頷くと記憶の欠片を手に取る。)
黒月姫
……。
黒月姫
(黒月姫の手の中で記憶の欠片が溶けて消える。何かを感じた姫の顔が青ざめて行く。)
黒月姫
私…今まで何かを忘れていたみたい…でも……それがなんなのかわからないの……。
黒月姫
……。
黒月姫
(黒月姫の表情が戻る。ある程度安定したようだ。)
黒月姫
ああ、そう。あなたはイリスを探すために旅に出かけた人だったわ。それで、イリスは見つかったの?
黒月姫
イリスはどこにいるの?
【プレイヤー】
(今までイリスにあったことを話す。)
黒月姫
そうなのね。でも、私はこれからもイリスを理解できないわ。理解したくもない。そして……。
黒月城主
姫、もう記憶を取り戻したのか?
黒月姫
はい、お父様。全部ではありませんが…誰かを忘れている気がします。
黒月姫
……。
黒月姫
(少し言葉を失くした姫の目に涙が流れる。)
黒月姫
【プレイヤー】、あなた…どうして私にこんなものを持ってきたのよ!どうして急にこんな気分を味わわなければいけないの!
黒月姫
……。
黒月姫
お父様、お父様。私が忘れている人が誰なのかご存知でしょう?私、覚えているのに名前が…その名前が出てこないのです……。
黒月城主
……。
黒月城主
姫、今日は休んだ方が良さそうだ。
黒月姫
はい……。
黒月城主
(姫の姿が見えなくなると、城主の瞳が悲しみに溢れる。)
黒月城主
……。
黒月城主
やっとわかったんだ。俺の娘がどうしてあの子を忘れてしまったのか……。
あの子の契約内容はわからないが、代価が娘の記憶だなんて……。
黒月城主
酷すぎるじゃないか。どうしてここまで……。
黒月城主
とにかく、たとえ一部だとしても娘の記憶を取り戻してくれたことに感謝しよう。戻ったらイリスに、いや女神イリス様によろしくお伝えしてくれ。
【プレイヤー】
はい……。

イリス
おかえりなさい。
【プレイヤー】
エリアス王城と黒月城に行ってきたよ。みんな元気で、イリスによろしくって。
【プレイヤー】
竜の谷で記憶の欠片というやつを手に入れて、姫に渡したりもした……。
イリス
ありがとうございます。
イリス
私がもう少し頑張ったなら、黒月姫にもあんなことは起きなかったはずのなのに……。
イリス
……。
【プレイヤー】
それはイリスのせいじゃないよ。
イリス
…この世界の過酷な運命が全てをそうした気がします。
【プレイヤー】
運命……?
【プレイヤー】
ただ悪いことが起きただけだ。誰にでも起きそうな悪いことが……。
イリス
ごめんなさい。
【プレイヤー】
弱音を吐かないで。私がイリスを手伝うのも、私が記憶を失っているのも、運命だと?それは違うよ。
イリス
【プレイヤー】の記憶……。
【プレイヤー】
ふぅ…仕方ないのも、本体が頑張っているのも、今私に話をかけているのがイリスの弱い心なのもよくわかっているよ。
【プレイヤー】
でも弱音ばかり聞いてると凹むから。あまり気にしないで。
イリス
はい……。
【プレイヤー】
まだイリスにちゃんと会ったわけじゃないけど、もう少しで会いに行くから。
イリス
話してないことがあります…力が完璧になるまでは私自身に会うことはできなさそうです。
【プレイヤー】
どうして?
イリス
心が不安定な状態だと、崩れてしまうかもしれません。
【プレイヤー】
そうなんだ…それは仕方がないね……。
イリス
ごめんなさい。
【プレイヤー】
大丈夫だよ。じゃあまた来るよ。イリスの心だけじゃなくて、イリス自身に会うその日まで頑張るから。
イリス
はい、私も頑張ります。
イリス
(イリスの心が離れる【プレイヤー】の後ろ姿を見つめている。)
イリス
……。
イビルオーダー
フヒヒ…あんたは本当に面白いよ★あんたに会うために色々ギセイにした人間に隠すことなのか?アタシが話してあげようか?
イリス
あの方はわからなくて大丈夫なことです。それが彼のためですから。
イビルオーダー
それは、アイツが判断することじゃないのかい?
イリス
……。
イビルオーダー
フヒヒ…答えないってことは、思うことがあるんんだろ?
じゃあまたアタシの出番ってワケね★
イビルオーダー
さあ、イリスという神の内側で…誰が勝つのかやってみようじゃないか★
フヒヒヒヒッ…!
イリス
……。