シナリオクエスト

タルタロスの終わり、奈落

シャイニック
…。
【プレイヤー】
まるで私を待っていたかのような様子ですね。
シャイニック
奈落の間に行くつもりか?行くのは構わんが、お主…本気か?
【プレイヤー】
何か隠していることがあるなら教えてくれませんか?
シャイニック
…。
【プレイヤー】
ここではあなたにできないことはないのでしょう?なのに何もしないってことは、何か理由があるんですよね?都市に危機が迫っているというのに、そのまま静観されているのですか?
シャイニック
…ワシがいるのに危機が迫っているじゃと?
【プレイヤー】
…ちょっとこれを見てもらえますか?
【プレイヤー】
(シャイニックに魔力のない魔石を見せる。)
シャイニック
ほう、珍しい魔石じゃな。ふむ…デイモス教団の物か。ん?これはアガシュラの術式…
【プレイヤー】
もしかして、ヴァンとマーラがデイモス教団と結託したのでしょうか…?
シャイニック
あの偽物のアガシュラ一族の話じゃな?あやつらはどうせ本物と偽物も区分すらもできん…気にするまでもないわ。
【プレイヤー】
本物…?偽物のアガシュラとはどういう意味ですか?
シャイニック
はぁ…面倒な質問じゃな…
【プレイヤー】
…アガシュラ一族は悪行の限りを尽くす者達だというのはご存知ですよね?彼等がもしタルタロスを狙っているとしたら?
【プレイヤー】
彼等の最終目的は女神の奪還かもしれません。ならば、なおさら私は奈落の間に行かなければなりません。
【プレイヤー】
シャイニックさんが何もしないことは関係ありません。これは…誰かがしなければならないことなのですから。
シャイニック
…そこまで言うなら止めはせん。じゃが…はたしてお主程度の実力であそこから生きて帰って来れるかの?
【プレイヤー】
みんな最初はそう言います。ですが、私はいつでも生きて戻って来ました。
シャイニック
ほう…自信満々じゃな…面白い、見せてもらおうじゃないか。
【プレイヤー】
ふふ…やっとつまらない状態から解放されたみたいですね。まぁ、期待して待っていてくださいよ。
シャイニック
良いじゃろう。ならば、奈落の間を住処としている悪魔「マルバス」を倒して来い。
シャイニック
次元の狭間から奈落の間へと流れて来たところをワシが捕まえて封じたんじゃが、冒険者達の魂を吸収してずいぶんと力をつけてしまったようじゃ。
シャイニック
どうやらワシに復讐する気のようじゃが…さて、どのくらい強くなったのかのう。
【プレイヤー】
それがあなたの本音ですか?
シャイニック
…。
【プレイヤー】
…わかりました。今度また話を聞かせてください。許可をいただき、ありがとうございます。
シャイニック
(シャイニックが奈落の間に向かう【プレイヤー】の後ろ姿をじっと見ている。)
シャイニック
…。
シャイニック
メルビックか…
メルビック
あの方は出発したのですね…あの…シャイニック様…
シャイニック
なんじゃ?
メルビック
止めなくてもよろしいのでしょうか?現在の奈落の間には…
シャイニック
まあ…なんとかなるじゃろ。
シャイニック
他のことは良いが、奴を相手にすることはできん。神にでもなればできるのかもしれんがな。
シャイニック
いくら不死の力を持っていても、この体たらく…ワシは…無力じゃ…。
メルビック
シャイニック様…
シャイニック
…。

マルバス
人間か…それもひとりでここまで来るとは愚かな。いくら奈落の間に閉じ込められている状態とは言え、ここに来た者は今まで誰ひとりとしていなかった。
【プレイヤー】
なかなか大変でしたよ。
マルバス
…お前は他の人間とは違うようだな。持っている力そのものの構成が一般的な人間とは違うようだ。
【プレイヤー】
…。
マルバス
あやつも人間ひとり止められないとはな。せっかく蘇らせてやったというのに。
マルバス
シャイニックを…倒せると思ったのに。
【プレイヤー】
シャイニックさんを?あの魔法使いが?
マルバス
知りたいか?ふふ…ならば俺を倒してみるがいい。
【プレイヤー】
私があなたを倒したら教えてもらえるってことですね?
マルバス
勝てるのならな…約束しよう、俺はルクスとは違って紳士だからな。
マルバス
だが、まずはその約束の前にひとつお前に提案だ。その力、俺のために使う気はないか?
【プレイヤー】
??
マルバス
何かの運命に導かれているようだが…そんなことよりも俺と共に来い。
マルバス
この偉大なるマルバス様と奈落の間に入って来る人間の魂を喰らい、世界を統べるのだ。
マルバス
人間の魂を喰らい続ければ、ルクスなど簡単に倒せる力を得られるだろう。俺のようにな…さあ、どうする?
マルバス
貴様のように矮小な人間にはもったいない話だ。よく考えてみるんだな。
【プレイヤー】
ふふ…バカなカラス。私が悪魔の話を受け入れるとでも思ったのか?
マルバス
やはり無知な生き物だな…人間というものは。…後悔するぞ?
【プレイヤー】
断る…人間も悪魔も…力に執着する奴は滅びるんだ。力とは、人を守るためにあるんだ!
マルバス
力は素晴らしいぞ?なぜそれを力なき者のために使おうとする?貴様が持っているその力が泣いているぞ?
マルバス
欲望に忠実になるんだ。力を持つ者が持たざる者を支配する…それが世の摂理だ。
マルバス
さあ、もう一度聞こう。俺と共に来い!
【プレイヤー】
断る!お前は私が倒してみせる!
マルバス
俺の提案を断るか…
マルバス
いいだろう、俺に勝てれば貴様の質問に答えてやろうじゃないか。だが…その可能性は無に等しい。
マルバス
さあ、貴様の魂もマルパス様の糧にしてくれよう…これが貴様の運命なのだからな。
【プレイヤー】
そんなの…やってみるなければわからない!
マルバス
さあ、かかって来い。力の存在理由すらも理解できない無知な人間よ!

マルバス
…。
マルバス
…。
マルバス
信じられん…この俺が負けた…だと?それも矮小な人間ごときに…
【プレイヤー】
まだだ…まだ私の質問に答えていない。勝ったら答える約束だろ?
マルバス
…。
マルバス
…いいだろう。
マルバス
俺の負けだ。潔く貴様の質問に答えよう。
【プレイヤー】
悪魔が敗北を認めるなんて…「悪」を自称する存在にもこんな奴がいるんだな…さあ、これを見てくれ。
【プレイヤー】
この魔石について知ってることを教えてほしい。奈落の間の入り口で見つけたんだ。
【プレイヤー】
(マルバスに魔石を見せる。)
マルバス
アガシュラの術式を持つデイモス教団の魔石か…面白い物を持ってるじゃないか。これが奈落の間の前に落ちていただと?
マルバス
俺はシャイニックがかけた束縛の呪いのせいで、奈落の間からは一歩も外に出られん。これが奈落の間の前に落ちていたとは…にわかには信じられんな。
マルバス
アガシュラ…奴らが何かを企んでいるのは間違いないだろう。悪魔でもないのに悪魔たらんとする奴らだ。不思議ではなかろう。
【プレイヤー】
そうか…そういえば、あの亡霊として現れた魔法使いは誰なんだ?
マルバス
…遥か昔、イーストランドの暗黒戦争でジュード王国を守った英雄「イクシオン」を知らんのか?
【プレイヤー】
私は外から来た人間だから知るすべもない。どこかで聞いたことはある気がするけど…ああ、ルーメンで聞いたんだ。
マルバス
イクシオンはデイモス教団から王国を守るために、手段を構わず実施した人間だ。あれは悪魔である俺から見ても狂っていた。
マルバス
自分の名誉を守るために、結局デイモス教団と同じような選択をしてしまった。
マルバス
子供達に強制的に魔力を注入し、闇の「束縛」で戦場へと駆り立てたのだ。
【プレイヤー】
子供を束縛?
マルバス
呪いの一種だ…デイモス教団でもその力には注目していたらしい。
マルバス
そして、死んだ者達の魂は悪魔に喰われてしまった。ああ、俺も結構な魂を喰ったな…その点についてだけはイクシオンに感謝している。
【プレイヤー】
そんな魔法使いがなぜ英雄と呼ばれているんだ?ジュード王国はその事実を知ってるのか?
マルバス
知らんだろうな。無知な人間共は、その事実を知ったとしても認めんだろう。悪魔であるこの俺が保証する。
【プレイヤー】
…黙れ。それでその子供達はどうなったんだ?
マルバス
ふん…気になるみたいだな。いいだろう…イクシオンが強制に注入した魔力は子供達を暴走させ、死へと導いた。
マルバス
戦争が終わっても生き残った子供達はイクシオンの手によって殺された。もう必要ない存在だからな…それがその子供達の運命だったんだ。
マルバス
だが、その中でひとりの少女だけが生き残った。彼女は赤いリボンを誰よりも愛していた…
【プレイヤー】
…。
マルバス
その子が生き残った理由は特にない。運がよかったと言えばいいのか…その子は呪いによって「死ぬことすらできなかった」のだ。
【プレイヤー】
…もういい。もう十分だ。
マルバス
…そうか?では俺の話は終わりだ。
マルバス
愉しかったぞ。この俺を倒した人間よ…さらばだ。
マルバス
(マルバスが笑いながら自ら消滅を選ぶ。)
【プレイヤー】
おい!待て!!!
【プレイヤー】
(マルバスが跡形もなくその場から消えてしまった。全て消滅したのか、邪悪なオーラは一切残ってない。)
【プレイヤー】
終わった…のか?
【プレイヤー】
ふう…もう戻ろう。シャイニックさんに聞きたいことがたくさんある。